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黎剣のゼスト  作者: 幻人
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第4話 悪しき学者 <4th 塞がれた道>



 外は風が強くなり雨が降り始めていた。

 ハヤトとクラウスがバルコニーに出ると床がほとんど無くなっていた。

 足場は瓦礫に覆われている。

 瓦礫の隙間は大きく間違って落ちてしまったら出るのは困難だ。

 幸いハヤトとクラウスがいる足場はまだ床が存在している。

 しかし、2、3メートル先には瓦礫が広がっているので

 それ以上進む事は出来なかった。

 2人が唖然としている所にセーラがやってくる。


「何これ! 何があったの?」


「分からない…… ソニアはどこにいるんだ?」


 ハヤトは無謀と思いながらも瓦礫の上を走り出した。

 その光景を見てクラウスも瓦礫の上に足を踏み入れる。

 セーラは瓦礫に入る事に戸惑っている。すぐ後ろにはミイラが迫っていた。

 彼女は後ろを振り向くと棒を身体の中心に立て

 棒に添えている両手を目の高さに合わせた。


「グラスヴァイス!」


 棒の下から冷気が飛び出してくる。

 冷気は壊れたドアを覆い透明な氷の壁を形成した。

 壁ができた事でミイラ達は立ち往生している。

 壁は頑丈でヒビさえ入る様子はない。

 壁の影響でミイラの攻撃や声は(こも)って聞こえる。


「これでよし。後はどうするかなぁ」


 セーラは後ろを振り向くとハヤト達の行動に目をやった。


「ソニア! どこだ!」


 ハヤトは瓦礫を飛び回りながら瓦礫の下に目をやった。

 クラウスもふらつきながらソニアを探している。


「見当たらないなぁ」


 クラウスが少し弱音を吐くとハヤトは声を張った。


「さっき衝撃音が聞こえたって事はここにいたはずだ。絶対どこかにいる」


 ハヤトは諦めず次の足場に飛ぶ。すると、後ろから爆音が聞こえてきた。


「なんだ?」


 ハヤトとクラウスは音が聞こえた屋敷の屋根に目をやる。

 そこには小さいが人の姿が2つ見えた。


「ソニア……」


 ソニアは生きていた。彼女は屋根の上を走っている。

 その先には空中に浮いているアルマの姿が見えた。

 ハヤトとクラウスの目線を追ってセーラは屋根を見る。

 彼女の角度からはソニアしか見えない。


「あっ、あんな所にいる」


 セーラが顔を上げているとハヤトとクラウスが戻ってきた。


「屋根の上だ、行くぞ!」


 ハヤトはよく前を見ず氷の壁に頭から突っ込んだ。


「痛っ! なんだ? コレ」


「……ごめん、私さっき壁作った所なの」


 セーラは肩を落としてハヤトに弁解した。

 ハヤトは目を閉じて頭を抑えている。

 目を開けると壁に群がっているミイラ達の姿が目に入った。


「わっ!」


 ハヤトは驚いてすかさず後ろに身を引く。クラウスは眉間に眉を寄せていた。


「これじゃ屋敷には入れないねぇ……」


「たく、何でこんな所に壁なんて作ったんだよ。

 中に入れねーじゃねーか!」


 ハヤトの一言を聞いてセーラはホッペを膨らませる。


「むーー、せっかく追手を足止めしたっていうのにその言い方は酷いんじゃないの?」


「何も壁作る事なかっただろ。入口はココしかないんだぞ?」


 ハヤトとセーラは頭を前に出して睨み合っている。

 クラウスはその間でまぁまぁと両手を上げていた。


「2人共、今は喧嘩している時ではないよ?

 入口がないのなら作ってしまえばいいんだ」


 クラウスは後ろを振り向くと壁に身体を向けて剣を抜いた。


「光一撃…… ルフトホ!」


 しかし、剣からは何も放たれない。


「しまった! つい、いつもの癖で私だけバリアが掛っていると思い込んでいた」


 クラウスは皆にバリアを施している事をすっかり忘れていた。


「やはり4人分バリアを使っていると何もできないかぁ、ふむ」


 クラウスの行動を見てハヤトは珍しく怒鳴り声を上げる。


「何ボケてんだ! 急がないとソニアのバリアが切れちまうんだろ?」


「そうだ! こうしてはおれん」


「2人共落ち着きなよ。私が責任取って屋根まで飛ばすからさぁ」


 ハヤトとクラウスは目を見開いてセーラを見つめた。


「そんな事ができるのかね?」


「うん、まぁ。でも、飛ばした後の事は知らないよ?」


 セーラは不安な面持ちで首をかしげる。

 彼女は後ろに下がり手首をそわそわさせている。

 セーラは何かをコートのポケットにしまい込んだ。


 ――これで良いかなぁ…… はぁ。


 セーラは浮かない顔をしている。彼女は棒を左手に託し左足を前に出した。


「準備はいい? 行くよ」


「えっ?」


 ハヤトが何か言おうとする前にセーラは行動に出る。

 彼女は右手で空気を握ると手を屋根に向けて振った。

 その動作に合わせハヤトとクラウスが屋根の方に飛んでいく。


「うわっ、ほんとに飛んでいるぞ!」


 飛んでいる速度は速かった。

 2人は受け身の体制も取れないまま屋根に身体をぶつける。


「強引な方法だったね」


 クラウスは顔を屋根に当てながらニヤけた顔をしている。

 2人はすかさず爪先(つまさき)を立て屋根の上に立った。


「たく、氷の天装といい今の技といい、アイツどんだけ技持ってんだ」


 今の所、セーラが見せた異能は2種類。しかし、天装を2つ以上使う者は少ない。

 大抵の者は天装を1つ扱う事ができる。

 しかし、2つ以上となると『1万に1人しか扱えない』と言われ

 力を発揮する事が困難なのだ。

 セーラはそんな希少な天装使いの1人である。だが彼女はまだ何かを隠していた。

 ハヤトはセーラの事を気にしつつ目の前の事に頭を集中させる。

 彼はクラウスを連れ急な屋根を登り始めた。



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