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黎剣のゼスト  作者: 幻人
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第4話 悪しき学者 <1st 死者の村>

 


 王都を旅立って数日。昼、ハヤト達はモトルに到着した。

 天候は風が弱く空を厚い雲が覆っている。今にも雨が降りそうな状態だ。

 牛の鳴く声が聞こえず村は閑散としている。村は明らかに数週間前と違っていた。


「むっ? 何だアレは!」


 突然、クラウスは馬車を止めた。

 馬車が止まった事に気付きハヤト達が馬車の外に出てくる。

 皆、外の光景を見て衝撃を受けた。

 道には数人の人が倒れている。隣にある牧場では鳥や家畜が倒れている。

 皆死んでいる事は明白だった。


「何だこりゃ、酷いな」


 ハヤトは羽織の内側から黒いスカーフを取り出す。


「人だけじゃない、動物も死んでいるよ。一体どういう事?」


 セーラは辺りを見渡す。周囲には死骸だけがあり生存している者は目に入らない。


 ――死臭が全然しないな。一体何が起きたんだ?


 スカーフを口元に巻くとハヤトは皆に声をかける。


「皆、念のためマスクしとけ」


 道に死体があるため馬車はこれ以上進めない。

 ハヤトは1人先行し街の中心部に向かう。

 クラウスとソニアは迷う事なくハヤトに付いてく。

 セーラは頭を下げ軽い溜息を吐く。顔を上げると走ってハヤト達を追いかけた。

 ハヤトが街の中心に近付くと人の死骸が至る所に見られた。


「コイツ等皆死んでいるな。でも何で顔色がこんなに良いんだ?」


 死体は死後間もないせいか、どれも顔色が良かった。

 ハヤトは死体から後ろの仲間に目を向ける。


「って、誰もマスクしてないし……」


 ハヤト以外は誰もマスクをしていない。

 いや、一応していると思っている人物がいた。


「えっ? 私はしてるよ」


 セーラは肩に掛けているケープをマスク代わりに使っている。


 ――お前のはケープを口に巻いただけだろ。


 ハヤトがセーラに呆れているとソニアが前に出てくる。


「大丈夫じゃ、臭いはせん」


 その言葉を信用してハヤトとセーラはマスクを外した。

 ソニアの言う通りここでも死臭は漂っていない。

 クラウスは死体の1つに近付き腰を下ろす。彼は死体を触り始めた。


「しかし、これは奇妙だ。皆死んで間もないのにほのかに温かい」


 クラウスに触発されセーラも死体に手を掛ける。

 2人共怖いもの知らずのようだ。


「でも、心臓は確かに止まっているよ」


 セーラとクラウスの行動を見てソニアは突然声を上げる。


「2人共触るでない!」


 ソニアの大声を聞いてセーラとクラウスは死体から離れた。

 ハヤトは腰を下ろした状態でソニアに問いかける。


「どうしたソニア」


「嫌な予感がする…… 皆一旦村を離れるぞ」


 それを聞いてハヤトは表情を引きつらせる。


「えっ? 何言ってんだよ。せっかく王宮から調べに来たんだろうが。

 原因究明するまでココにいんぞ」


「ハヤト君の言う通り。ここで身を引いては騎士の名折れだよ」


「何を訳の分からん事を言っておるのじゃ!

 お主等はこの状況を見て、まだ何も分からぬのか!」


 ソニアの言葉を聞いても頭の悪い男達は理解できなかった。

 セーラはこの状況を理解し震えだす。


「あのさ…… これってまさか、疫病か何かじゃない?」


 ハヤトとクラウスはハッとした顔をする。

 2人はようやくこの状況を理解した。しかし、ハヤトはすぐに現実逃避する。


「疫病? そんな話聞いてないよなークラウスー」


「確かに。私達は学者の調査に来ただけだ。疫病に感染する訳が……」


 すると突然クラウスの身体が薄く光だす。


「おいクラウス。身体が光っているぞ」


「むっ? これはいかん!」


 クラウスは心の中の疑問が消え疫病が起きていると確信した。


「皆、早く私の元に来てくれ!」


「一体どうしたの?」


「訳は後で説明する、いいから早く!」


 セーラの言葉を無視しクラウスは皆を集めた。

 彼は目を閉じ両手を開く。すると、ハヤト達の身体が薄く光りだした。


「ふー、危なかったぁ」


 クラウスは左手を額に当てホッとする。

 ハヤトは自分の身に何が起きたのか理解出来なかった。


「えっ、何? どういう事だ? つかこの光は何なの?」


「私は光の異能者でね。

 これはバリアと言って、ありとあらゆる攻撃を防ぎ、対象者を守る防衛術なんだよ」


「防衛術?」


「うむ。疫病か何かに反応した私の身体が、自動でバリアを作動させたんだよ」


 クラウスのバリアは『光の服』と呼ばれる特殊なバリアである。

 光の服は外からの攻撃だけではなく

 病原菌やウイルスなどから身体を守る左様がある。

 クラウスは疫病が蔓延している事を知りハヤト達に光の服を施したのだ。


 ――まさか、クラウスが異能者だったなんて、正直驚きだなぁ……

   そういえばセルディカで会った時、何か光っていたな。

   アレは光の異能だったんだなぁ。


 ようやくハヤトはクラウスの能力を把握した。

 クラウスは閃光と呼ばれるゼストである。

 そのため、セーラとソニアはクラウスの能力を最初から知っていた。


「じゃあ、やはり疫病なのか? 危ない所だったなぁ、恩に着るよクラウス」


 ハヤトはニヤけた顔でクラウスを賞賛した。


「便利な身体なんだね。おかげで助かったよ」


 ハヤトとセーラがクラウスに感謝をしているとソニアは1人激昂していた。


「むぅぅ…… 許さんぞ、アルマ!」


 ソニアはこの疫病の原因が学者にあると確信していた。

 ハヤトは冷静にソニアを宥める。


「これも例の学者の仕業なんだろう? だったら早くその学者の元に行こうぜ」


「……そうだのう」


 ソニアは拳に入れていた力を解きハヤト達と歩き出す。



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