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黎剣のゼスト  作者: 幻人
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第3話 吸血鬼の国 <End ドラクロ人>

 


 正午。既にハヤト達はブクレを出立しモトルを目指していた。

 4人は馬車に乗っている。馬車はセルディカのモノと違い少々質素だ。

 御者台は1人しか乗れず客室の中は前後で4人しか座れない。

 身体を寝かせる事も出来ないくらい客室の中は狭かった。

 御者はクラウスが務めている。

 客室は後ろの席にはソニアが、前の左にはセーラ、右にハヤトがいた。


 ――何だこの空気…… 気まずい。


 ハヤトは馬車の中の雰囲気が異常なのに気付いた。

 ソニアは背中に背負っていた剣を外し膝に乗せている。

 彼女は本を読んでいる。馬車の中で読むとは余程酔わない自信があると見える。

 セーラの方は顔面蒼白に近かった。

 彼女は両膝の間に棒を入れ両手で棒にしがみ付いている。

 ハヤトはただ事ではないと思いセーラに声をかける。


「どうしたセーラ、具合でも悪いのか?」


「何でもない…… 大丈夫だから……」


 セーラはやせ我慢をしている。彼女の体調が悪い原因は目の前にあった。


 ――クラウスがいないせいか静かすぎて不気味だ。


 ハヤトはこの空気に耐えられなくなった。

 彼はこの空気を打開するべく話を持ち出す。


「ソニアは何の本を読んでいるんだ?」


「小説じゃ。狼男のホラー物を読んでおる」


「狼男? どんな内容だ?」


「そうじゃなぁ……

 狼男が首を引き裂いたり腸を食っているという、まぁグロテスクな内容じゃ。

 とても未成年には見せれん」


 そうは言っているがソニアの年齢は19歳。彼女も一応未成年である。


「そうか……」


 ――腸食うのか。よくそんな物読んでいられるな。


 ハヤトも人の首を易々と斬り落とす男。人の事が言えた義理ではない。

 ハヤトはそっと隣を見た。セーラの顔は表情限界な状態に陥っている。


「今の話、そんなに怖かったのか?」


「……」


 セーラはもう言葉すら出なかった。

 彼女は目をつぶり両手で耳を抑えだす。棒は膝の間に挟んだままだ。


「どうしちゃったんだよ……」


 ハヤトは本気で心配になった。

 セーラは何に怯えているのか全く明かそうとしない。

 ソニアは本を閉じるとその原因を語り出した。


「彼女は童を恐れているのであろう」


「何で?」


 ハヤトは完全に大王の言葉を忘れている。

『ドラクロ人は吸血鬼と呼ばれている』

 ブクレに到着して竜と出会い、ブルーノと交戦し、そのまま外交を行う。

 ハヤトはすっかりドラクロ人に馴染んでしまい恐れなど抱いていなかった。


「我々は吸血鬼と呼ばれておる。恐れられるのは珍しい事ではない」


 そう言うとソニアはローブの中から小袋を取り出した。

 彼女はその中から菓子を取り出し前の2人に配る。


「これは何だ?」


「チョコじゃ。童の大好物である」


 ソニアは袋からチョコを取り出し口の中に頬張った。

 無愛想だった彼女の顔は歪み可愛らしいモノとなっている。


 ――何で吸血鬼がチョコ食えるんだよ。


 その光景を見てハヤトは昨日の晩餐を思い出した。


 晩餐が行われている宴の間には多くのドラクロ人がいる。

 彼等は何も躊躇する事なく食事を取っていた。


 ――そういえば昨日の晩餐、皆普通に物食べてたなぁ。どういう事なんだ?


 ハヤトは吸血鬼と呼ばれるドラクロ人に疑問を抱く。


「なぁ、何でドラクロ人は物を食べるんだ?

 吸血鬼って物食っても意味ないんだろう?」


 ソニアはチョコを飲み込む。


「それは簡単な話。ドラクロ人は吸血鬼じゃないという事じゃ」


「はっ?」


 ハヤトは口を半開きにして驚いている。

 彼がそっと隣に目を向けると同じ表情でセーラが驚いていた。

 ソニアは平然とした顔でチョコに手を付ける。


「我等は吸血なんて事はせん。ただ真実が曲げられて広まっていっただけじゃ」


「真実?」


「うむ。我々ドラクロ人は生まれながらの異能者。血の異能を持っておる」


「血の異能?」


 本来異能は、火・風・雷など自然に存在する現象から

 水・土・鉄など物質に関わるモノにのみ宿る力である。

 そのため、血の異能の存在は異質であった。


「この血は人を生かしもするし殺しもする。

 ドラクロ人に宿る血は特別なモノなのじゃ」


 ――だから王宮で細菌兵器なんか効かないって豪語してたんだなぁ。


 一連の疑問が消えハヤトは納得した。

 セーラも理解したようですっかり元通りの顔に戻っている。

 彼女は馬車の中で初めてソニアに言葉をかける。


「何で本当の事を皆に伝えないの?」


「この力のせいで我等の祖先は利用され、奴隷にされてきた。

 だから先祖は、吸血鬼として恐れられる方が得と判断したのじゃよ」


 ソニアはチョコを口に頬張る。


「何で俺達に本当の事を話してくれたんだ?」


 ソニアは口にチョコを含んだまま答える。


「身内に真相を話すのは当然の事じゃ。

 お主等に付いていく者として、隠し事をしないのは一族の礼儀でもある」


 チョコを飲み込むとソニアは袋をローブの内側に戻した。


「それに、中欧諸国は我々が血の異能者だという事を知っている。

 隣国の者ならまず吸血鬼と呼ばん。エーゲを除いてな」


 説明を終えるとソニアはローブの中から違う小袋を取り出した。


 ――やたら収納できるローブだな……


 ハヤトは少しローブの中が気になった。

 ソニアは袋からガムを取り出しハヤトとセーラに配る。


「お口治しのガムじゃ」


 ソニアはガムを頬張り1分もせずフーセンガムを作った。


「おっ!」


 ハヤトはそれに便乗しフーセンガムを作る。

 セーラも負けじと口にガムを入れフーセンを作ろうとする。


「あで、上手く出来ないんだけど」


 舌の上にガムが乗っているせいかセーラの口調はおかしい。

 彼女は今までフーセンガムを作った事がない。

 ハヤトは見せびらかすようにフーセンの作り方をセーラに教える。

 セーラはやっとフーセンを作る事ができた。

 しかし、勢いあまってフーセンを割ってしまう。

 彼女の顔面はピンク色のガムで覆われた。


「何コレ…… ギッタなーい」


 セーラの断末魔を聞いてハヤトとソニアは腹を痛めた。



ソニアは甘いモノが大好きです。

一体ローブの中にどれだけ隠しているんでしょうかね。

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