第3話 吸血鬼の国 <1st 辺境の村>
2週間前、ドラクロ王国。
ワラキア地方の西部にある小さな村モトル。
4人の兵士がこの地を訪れる。4人の内2人は銀髪のドラクロ人。
ドラクロ人は赤い瞳と銀色の髪を持つ。
彼等は広い地域で『吸血鬼』と呼ばれている。
残る2人は茶髪と黒髪。彼等はハーフか異人だ。
4人は馬に乗っている。先頭の男以外は赤いマントに黒い軍服を着ている。
先頭の男はドラクロ人で赤茶色のローブを羽織っている。
中には黒い鎧が見える。彼は黒騎士だ。
黒騎士はドラクロにおける騎士の上級職業。
全員で20~30名しかいない有能な戦士だ。
後ろにいる3人は騎士の部下だ。
黒騎士の名はライール。
彼は国王から、ある任務を受けこんな田舎の村に来る事になった。
ライールが村に入ると畑や牧場が目に付いた。
道には荷車や牛を引く人の姿が見える。
畑を見ると農作業を終えた農民達が休息を取っている。見るからに平和な光景だ。
村の中央に着くとライールは地図を広げた。
「屋敷の場所は…… ここだな」
目的地を確認するとライールは部下を連れ馬を走らせた。
彼の任務はこの村に住んでいる学者の調査。
学者は何やら怪しい研究をしている。それは国王が危惧する程の事だ。
「いいか? 説得に応じない場合は殺害の許可も出ている。気を抜くなよ!」
ライールは部下に言葉を放った。彼の言葉からその緊張感が伺える。
4人共顔に喜びの表情が無い。強張った目付きの強い顔をしている。
馬を走らせて数分。4人は学者の住まう屋敷に到着した。
屋敷の周りは四角に切られた樹木で囲われている。
門は開いており錆が目立つ。屋敷には植物のツタや草が生えている。
入口には段差があり横長い小さな階段が見える。
4人は馬を下りライールを先頭に屋敷のドアへと歩きだす。
彼がドアまで半分の距離に着くとドアが開きだす。ドアからは銀髪の女性が現れた。
女性は赤い瞳に銀の長髪。全身に黒い毛皮のコートを着ている。
彼女はドラクロ人だ。
女性の登場を見て4人は足を止めた。
女性は階段の所まで行くとそこに立ち止まった。
「貴方が、アルマ・シルヴェストリ博士ですね?」
女性の名はアルマ。彼女がライール達が調査に来た学者である。
アルマは軽く笑うと1回顔を下に向け笑いを止めた。
「今は博士じゃないわ。私に何の用かしら?」
「貴方に、国家反逆の容疑が掛けられている。悪いが中を調べさせてもらうぞ」
銀髪の学者は不意に右の人差し指を上げた。
「良いけど、その代わり条件がある」
「条件?」
「貴方達が私の実験体になってくれるのなら、入れてあげてもいいわ」
それを聞いてライールは右手を柄にかけた。
――やはり、説得には応じないか。
ライールは「剣を抜け」と部下に指示を出すと自らも剣を抜いた。
「博士。悪いが貴方には死んで頂く。貴方の存在は、ドラクロの脅威となり得る」
黒騎士は左手を剣に当てた。手からは血が流れ剣に血が垂れていく。
すると突然、剣が赤く染まった。
ライールは何かを呟いた後、真っ直ぐアルマに向かって走り出した。
後ろの部下もライールに続いていく。
しかし、4人は数メートル先で崩れ落ちた。
――何だ? 急に胸が苦しい……
身体の自由が効かない…… 一体どうなっているんだ。
ライールは自分の身に起きた事をアルマの仕業だと悟った。
「一体…… 何をした……?」
力を振り絞りライールはアルマに顔を向けた。アルマは平然と立っている。
「凄い効き目だわ。こうも即効力があるとは、少し改善しないといけないわね」
アルマはライール達が苦しんでいるのを何とも思っていない。
それもそのはず。彼女はライール達を殺す気でいるのだ。
人差し指を上げた時、アルマはライール達に何かをした。
しかし、それは目に見えない出来事だった。
ライールは薄々気付いていた。
――やはり、細菌兵器か……
ライールの言う通りアルマが使ったのは細菌兵器である。
ドラクロ人は特殊な身体の持ち主。
彼等は病気やウイルスに掛る事が滅多になく細菌兵器など受けるはずがない。
しかし、今ライールは細菌兵器を受け苦しんでいる。
――完成していたのか…… このままでは……
騎士は拳に力を込めようとするが力が入らない。
次第に考える力も無くなり彼は静かに命を引き取った。
他の3人も同様に何も喋れないまま死んでいった。
「外見はほぼ無傷ね。では今から内臓を調べるとしますか」
アルマはライールの身体を仰向けに起こすとコートの内側からメスを取り出した。
学者は目を見開き口元を緩める。まさにイカれた表情だ。
彼女は躊躇する事なくライールの腹部にメスを刺す。
――さーて、胃の中には何が入っているんでしょーね。
アルマは美人だが性格に難があるという人物です。
この話は4話へと繋がるお話です。




