表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎剣のゼスト  作者: 幻人
13/30

第2話 偽りの革命家 <8th 旅の目的>


 ハヤト達の活躍により街の兵士達は正気に戻った。

 拘束されていた人達も解放され総督も街に帰還した。

 革命兵はエーゲ軍に拘束され街に平和が戻る。

 

 夜。総督府では革命軍を討伐した祝いの宴が催されていた。

 総督府の中庭。ハヤトは宴を抜けて1人噴水の隅に座っている。


「星が見えないなぁ……」


 ハヤトは空を眺めていた。

 街の灯りが強いせいか見える星は1つか2つ。月が唯一の星とも言えた。

 中庭にクラウスがやってくる。彼はワインの入ったグラスを2つ持っている。

 クラウスはその1つをハヤトに渡した。

 ハヤトは「ありがとう」と言うとワインを口に含んだ。

 しかし、数秒せずにワインを地面に噴射する。


「なっ! これ酒か?」


「あれっ? もしかして口に合わなかったかね?」


「いや、俺元々酒飲めないからさ。宴とかあると、よく抜けだすんだよ」


 クラウスは「ふむ」と答えるとハヤトの隣に腰掛けた。


「ハヤト君は何の旅をしているのかね?」


「外交さ。俺はエーゲの外交官でドラクロとの国交樹立を託された」


 ハヤトは舌を鳴らす。舌には先程の苦いワインの味が残っている。

 彼はグラスを隣に置いた。


「まぁこの間外交官になったばかりだけどな」


「何でまた外交官に?」


「……ゼストになるためさ」


 ハヤトは低い声で答えた。多くの人はゼスト志願者を笑い者にする。

 だから、ハヤトはゼストを目指している事をあまり言いたくなかった。


「そういえば、何でゼストを目指しているか聞いてなかったや」


 突然、後ろにセーラが現れる。彼女は先程の話を少し聞いていた。


「ねっ? ハヤトは何でゼストになろうと思ったの?」


「……」


 ハヤトは顔を横に向ける。口は閉じたままで目線をセーラやクラウスに合わせない。

 ハヤトの状態を察しクラウスが口を開く。


「何か事情があるのかね? よければ、私達に話してもらえないだろうか?」


 ――クラウスは革命軍討伐に協力してくれた。話すべきか……


 元々、クラウスが協力をお願いした事だったが

 ハヤトはクラウスに恩義を感じていた。彼は2人に真相を話す事にした。


「俺の故郷であるヤマトは、情勢が不安定でね。

 いつ内戦が起きてもおかしくないんだ」


 ハヤトは噴水を離れ2人に身体を向けた。


「俺の師匠は『ヤマトを救ってほしい』と俺に手紙を寄こした。

 俺はヤマトを救う為、どうしてもゼストにならないといけないんだ」


 ハヤトの表情は硬かった。ルタクスを倒した時と違い彼からは余裕が感じられない。


 ――これは相当深刻な問題だ。


 ハヤトの告白を聞いてクラウスの表情が強張る。

 彼は手に持っていたグラスを噴水の隅に置く。

 真剣な2人を他所(よそ)にセーラは落ち着いていた。


「ハヤトはそんなの押し付けられて嫌じゃないの?」


「少しはな。けど、これはチャンスなんだ」


「チャンス?」


「うん。俺は訳あって国に帰る事が出来ない。だが、ゼストになれば国に帰れるんだ」


 ハヤトは左手を柄の頭に当てた。彼の表情は安らいでいる。


 ――国に帰れないって……


 セーラは口を半開きにして驚いている。彼女は申し訳ない気持ちになった。


 ――何か悪い事聞いちゃったなぁ……


「なるほど。君は祖国を救う為に、ゼストを目指しているんだね?」


「あぁ」


 ――祖国を救う為、はるばる東洋から1人で欧州に赴くとは……

   何という志の持ち主なんだ!


 クラウスは感銘を受けた。ハヤトの辿ってきた道を想像すると胸が熱くなってくる。


「君の、国を救わんとする気持ち。その為にゼストを目指す志、誠に感服した!

 よろしい! ハヤト君。私は君に力を貸す事にしたよ」


「えっ?」


 クラウスはハヤトの右手を両手で握った。


「こう見えても、私はゼストの1人だからね。お役に立てると思うよ」


「ゼスト?」


 その言葉を聞いてハヤトとセーラは驚愕した。


 ――まさか、こんなにも早くゼストに会えるなんて。

   スラングスの言っていた通りだな。


 ハヤトはクラウスを疑う事なく両手で握手を交わした。


 ――クラウスが西洋で会った最初のゼストだ。それが仲間になるなんて。


 喜びのあまりハヤトの両手は震えていた。


「よろしく頼む。貴殿の力があれば、目的が早く遂げそうだ」


 ハヤトは敬語で改めてクラウスに挨拶をした。

 クラウスは口元をニヤリとさせ「こちらこそ」と返した。

 握手を終えるとクラウスは自分の身分を明かす。


「改めて名乗り申す。私の名はクラウス・フォン・ルーデンドルフ。

 ルミノス同盟のゼストだ」


「俺はハヤト・スサノメ。ヤマトの侍だ」


 エーゲに身を置いているとはいえ

 ハヤトは『ヤマトの侍』である事を意識している。

 それは国に帰りたいという気持ちの表れだ。

 ルミノスと聞いてセーラはクラウスの正体に気付く。


「えっ? クラウスって、あの閃光のクラウスなの?」


「その通り! セーラ君、よく気が付いてくれた!」


 ――2人共、私の事を知らないのかと思って内心ショックだったけどね……


 クラウスは笑顔の状態を維持し小さなショックを誤魔化した。

 彼は呼称を持つ戦士で『閃光』と呼ばれている。

 しかし、ハヤトはそれについてあまり言及しなかった。


「せっかくの宴だし、ハヤト君の為に祝杯を上げようじゃないか」


 クラウスは通路にいる給仕からワイン入りのグラスを3つ貰う。

 彼はそれをハヤトとセーラに渡した。

 クラウスの頭はハヤトを祝う事で一杯だ。

 そのため、ハヤトが酒を飲めない事を忘れている。

 ハヤトも出された酒は断らない性分なので再びグラスを受け取った。


「では、ハヤト君のゼスト成就(じょうじゅ)を願って、カンパーイ!」


 セーラとクラウスはワインを口にして飲み込む。

 だが、ハヤトはそんな事が出来ない。彼は案の定ワインを口から噴射した。


「汚い……」


「良い飲みっぷりだ! ハッハッ」


 セーラが引いている横でクラウスはどこまでも笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ