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狂う日米の建艦計画

 連合国との戦闘に突入した大日本帝国海軍は、緒戦において各地で大勝利を収めたが、その代償も大きかった。特に基地航空隊や空母部隊の艦上機の消耗は予想以上であった。


 このため、新型機や搭乗員の養成が急がれることとなったが、その予算は莫大なものであり、煽りを食って縮小されるのは、当然ながら艦艇の建造計画であった。


 例えば戦艦は本来であれば「大和」型5番艦までの計画があったが、3番艦「信濃」で打ち止めとなった。


 空母も建造中の「大鳳」ならびに、米国の建艦計画に対抗する意味で改「飛龍」型の「雲龍」の建造と、水上機母艦などの特務艦からの改装、さらに戦艦「山城」「扶桑」の空母への転用までは予算承認されたが、それ以降の建造は中断を余儀なくされた。


 既に米国では戦時建造計画に則って、多数の新造艦建造に着手という情報は届いていたが、悲しいかな国力の劣る日本ではこれで手一杯であった。


 開戦直後に、鹵獲艦を得られていたのも大きい。特に英巡洋艦「レパルス」改め「奥羽」と空母「インドミダブル」改め「剣龍」が1943年前半に加わったのは、大きかった。これらに既存艦と再建・拡張する基地航空隊を加えて「なんとか守勢なら、米国に対抗できる」と思われたわけだ。


 一方巡洋艦以下は、フランスから接収した「ラモット・ピケ」改め「天塩」が加わったが、米国の建艦計画が伝わると、これだけでは不十分とされて改「最上」型重巡の「伊吹」が余剰の15,5cm三連装砲搭載の軽巡として、また「大淀」型2番艦の「仁淀」が潜水母艦旗艦から通常の軽巡へ改設計の上で建造が続行された。


 駆逐艦も「夕雲」型に続いて、艦体や上部構造物を簡略化した改「島風」型と改「秋月」型の建造が続けられた。


 対する米国はと言えば、米国の呆れるほどに巨大な工業力がフル回転を開始し、大は戦艦から小は魚雷艇に至る多数の艦艇が、続々と整備されつつあった。


 しかし、では同国の建艦計画も無尽蔵というわけではない。予算や造船設備の兼ね合いは当然あるし、さらに英国やソ連から求められた援助物資も造らなければならない。


 第二次世界大戦の太平洋とならぶ主戦場と言えば、ヨーロッパであることは論を持たず、日本が大戦に加わった1941年12月以降も、激しい戦闘が繰り広げられていた。


 米国が参戦したことで、英ソは米国からの莫大な援助物資を手に入れられることとなったが、その輸送ルートの1つであるインド洋ルートを、日本海軍が荒らし始めたことは、ヨーロッパ戦域にも影響が波及した。


 確かに日本の水上艦隊が撃沈した艦船の数自体は少なかったが、その後潜水艦や陸攻隊による活動は続けられたことも含めて、連合国海軍はこの方面に護衛戦力を抽出せざるを得なかった。


 インド洋の安全を守ることは英ソへの援助ルートを守るだけではなく、英国の植民地であるインドやオーストラリアの安全を守ることでもあり、被害の過小にかかわらず、戦力を投じないわけにはいかなかったのだ。


 それは結果的に大西洋や地中海などから、護衛戦力や航空戦力を抽出することを意味した。当然、その穴埋めとしてさらなる護衛艦艇や航空機を生産するしかない。


 つまり、本来は戦艦や正規空母を建造するリソースを護衛駆逐艦やフリゲート、航空機に割かなければならなかったわけだ。


 さらに米海軍の建造計画に影響を与えたのが、日本海軍の「石見」「壱岐」が実質的に巡洋艦殺しとして活躍したことや、ドイツ海軍水上艦隊の活動であった。


 ドイツ海軍はライン演習作戦の「ビスマルク」撃沈以降、その活動が一時的に消極的なものになっていたが、太平洋から自国製の「石見」「壱岐」の活躍が聞こえてくると、その自信を多少なりと取り戻した。


 皇帝の海軍、国家海軍、そして戦闘海軍と組織は変遷したとは言え、一時は英国ともタメを張った水上艦隊を有し戦った海軍の末裔であることに変わりは無い。


 さらに言うと、日本人が自国製のそれも帝政時代の戦艦で赫々たる戦果を挙げたことは、ヒトラー総統のプライドを刺激した。


「日本人が皇帝時代の古ぼけた戦艦で戦果を挙げているのに、我が戦闘海軍は何をやっているのか!多少の損害など気にせず、戦わんか!!」


 ドイツ海軍総司令官のレーダー元帥としては、いたく心外なことではあったが、損害を気にせず戦えるという言質をとったことは、それなりに大きな意味を得た。


 これにドイツ海軍が答える形になったのが、1942年の年末に発生したバレンツ海海戦で、この海戦には「讃岐」の姉妹である「グローサー・クロフェスト」も参加した。


 そしてこの海戦でドイツ海軍は駆逐艦2隻を喪いつつも、その倍の英国護衛艦艇と多数の輸送船を撃沈し、援ソ物資輸送に大打撃を与えた。


 久々のドイツ海軍水上艦隊の勝利はヒトラーをいたく喜ばせ、艦隊司令官をベルリンに召喚して叙勲しただけでなく、修理が遅れていた「クナイゼナウ」と工事がストップしていた空母「グラーフ・ツェッペリン」の建造を再開させたほとである。


 こうしたドイツ海軍水上艦隊の蠢動も、米海軍の建造計画に影響し、同海軍は多額の建造費と時間が掛かる「アイオワ」級戦艦4番艦「ミズーリ」以降の戦艦建造を凍結し、さらに装甲空母「リンカーン」級の建造も2番艦で一端打ち止め、代わりとして6隻の「アラスカ」級大型巡洋艦の建造を急がせることとなった。

 

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― 新着の感想 ―
あー「レパルス」と「インドミダブル」が~w 実際「インドミダブル」はどうなんでしょうね? 格納庫の高さとかエレベーターの大きさとか??
アラスカ級キター! いや、他に手はあるんじゃないかと思いますが……日米ともに大砲屋が勢いづいてますから仕方ないですね。 日本艦並み(より酷い?)艦内環境を堪能してもらいましょうw
建艦計画に日米とも大きな影響が出てますね。扶桑山城改造の空母の戦力化も気になるところですね。古くて遅い戦艦より高速で小型でも使いやすい鹵獲した戦艦なら改造してもお釣りがでますね。装甲空母「リンカーン」…
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