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夏の終わり

 1944年夏に太平洋で繰り広げられた戦いは、結果だけ言えばラバウルとモレスビーを守り切った日本側の戦略的勝利と言えた。もちろん、そのために払った戦術的犠牲は膨大で、特にラバウル・ニューギニア方面に展開した陸海軍の航空戦力は四割近い損失を出し、もし近いうちに連合軍側が再攻勢に出れば、防げる保証はなかった。


 しかし、これに続く連合軍の攻勢はなく、日本側は一服つくことができた。


 この時期連合軍の動きは乱れていた。と言うのも、欧州においてはロンメル総統率いるドイツ軍が戦線や国内の兵器供給体制の整理を行い、またヒトラー体制瓦解後の混乱が収まったことで、その守りを盤石なものにしつつあったからだ。


 この時期英本土から行われる戦略爆撃には、Me262やTa152、He219などが集中投入され、B29までも投入した連合軍空軍に大打撃を与えていた。


 また世界初の大陸間弾道弾であるV2ロケット(ちなみにV1は速度や高度の面から撃墜されるので早々と生産打ち切り)が英本土に襲いかかり、実態の戦果とは裏腹に、英国民の士気に影響を与えていた。


 大西洋では一時期の勢いこそないものの、新型の21型、23型Uボートが投入されて、連合軍船団に未だ無視できない損害を与え続けていた。


 南の地中海側に目を向けても、いまだにイタリアへの上陸はされておらず、かといってドイツに触発されてかイタリア軍も頑強に抵抗を続けていた。


 また東では援助物資の未着から、ソ連は一部占領地の奪回にこそ成功したが、枢軸軍の聖域に足を踏み込めずにいた。


 それに追い打ちを掛けたのは、ドイツ側の戦略爆撃であった。


 少数ではあるがようやくドイツ空軍に配備された四発爆撃機He277がウラル山脈東部に疎開した軍需工場群への爆撃を開始していた。


 これは機数の少なさから、ソ連の軍需産業に致命傷を与えられるものではなかったが、一方で有力な迎撃機を有していなかったソ連空軍が対抗策をとれず、ジワジワと生産力を削り取り、さらには前線から高射砲や戦闘機を引き揚げさせるなどの戦力分散を強いていた。


 こうした現状に、ソ連のスターリンは米英に繰り返し「さっさとヨーロッパ大陸に橋頭堡を築け!」と要求していたが、しかし如何に莫大な生産力を持つ米国でも、予算や世論を無視できない。


 1944年の大統領選挙こそ辛うじて勝利したが、ルーズベルト政権への支持率は下降気味で、国内には厭戦気分が蔓延り始めていた。


 この状況を打破するには、どこかで大がかりな勝利をするしかない。


 この結果、1944年10月に連合軍は乾坤一擲の欧州大陸上陸作戦を開始した。ノルマンディー海岸に米英自由仏などの連合軍が事前爆撃や艦砲射撃、空挺部隊の援護の下で上陸したのである。


 この作戦の結果だけ言えば、上陸とその後の橋頭堡の確保、そして内陸への進出開始までは上手く行った。


 しかし、そこから先が上手く行かなかった。戦力と資材の不足から、海岸部の完全防御を諦めていたドイツ側は内陸部に温存していた機甲部隊と、航空部隊を連合軍の進撃開始後から積極的に動かし、迎撃を開始したのだ。


 連合軍側の誤算は、想定では上陸後に設置する筈だった野戦飛行場を思うように作れなかったことだ。


 と言うのも、作ろうにも建設を開始した途端にドイツ空軍の攻撃部隊による攻撃を受けたからだ。


 これらの攻撃任務を請け負ったのは、艦上爆撃機として採用したAr236(日本の「彗星」を参考に開発された機体)を地上攻撃機に転用したAr239爆撃機であった。


 当初Ar236に関しては、そのサイズからJu87の代替機として空軍も興味を示していたが、同機の繊細な構造に、野戦飛行場での運用が無理と判断されて流れていた。


 その後日本から「彗星」の空冷改造機の情報が届くと、これらを参考にAr236の空冷エンジン化と馬力強化、一部機体設計の改修(特に爆装の増大と防弾装備の強化)を行ったAr239攻撃機が開発された。


 航続力は日本の「彗星」の半分程であったが、爆装は1,2トンもしくは胴体下に57mm機関砲を搭載可能な同機は、投入された傍から東西両戦線で猛威を振るった。


 さらに同じく日本から伝達された艦上攻撃機「流星」そのものをモデル機としたAr245が開発され、実戦投入期間こそ短かったが、東西両戦線に投入されて同じく猛威を振るうこととなる。


 とは言え、フランス沿岸部への連合軍の上陸成功は、そのフランス沿岸部から出撃していたドイツUボートの動きに大きな掣肘を加えるものであり、当然それはドイツ海軍の活動自体を萎縮させるものであった。


 大西洋からインド洋、地中海方面への進出が難しく(大回りすれば無理ではないが)なったことで、連合軍は特にインド洋ルートを強化することで、ようやく援ソ物資輸送の安定化をみたのであった。


 しかし皮肉なことに、その頃にはドイツ側のウラル山脈東側工業地帯への爆撃による効果もジワジワと出ており、それは援ソ物資到着分と相殺しかねないものとなっていった。


 そして、連合軍の盟主たる米英が息切れを迎えつつあった。

 

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― 新着の感想 ―
ヨーロッパ戦線でもかなり連合軍の停滞が深刻化してる。新型兵器の適切な投入がその原因ですからロンメル政権にはここで粘れば日本にも影響は大きそうですし。
≫地上攻撃機に転用したAr239爆撃機であった。 ルーデル閣下の感想を聞きたいw
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