1944夏の戦い ③
ラバウルとモレスビーを中心に、日本と連合軍空軍戦力がガチンコでぶつかり合うなか、空襲を避けてショートランドに避泊していた第八艦隊も、いよいよ出撃の時を迎えた。
この時点における第八艦隊の戦力は、戦艦「石見」「壱岐」を中心に、航空母艦化改装を終えた「山城」「扶桑」と軽空母「龍鳳」に加えて重巡洋艦6,軽巡洋艦3,駆逐艦12からなる戦力であった。
このうち「山城」「扶桑」は両艦合わせて艦戦72,艦攻30,艦偵6の計108機を搭載していた。予備機を加えるともう少し増えるが、正規の搭載機としてはこれだけであった。
また「龍鳳」には艦戦27機と艦攻6機を搭載したが、こちらは魚雷を搭載していないので、艦攻は実質的に対潜用と「山城」「扶桑」の予備機であった。
三隻の空母合わせて艦上機150機弱という数字は、この方面の連合軍空軍戦力から見ると、決して満足できる数字ではないが、機種構成を見てのとおり、その目的は艦隊上空の直掩と対潜哨戒に重きを置いており、その意味から見れば満足すべき数字であった。
加えて機種も、紫電改艦上機型(紫電22型)に零戦54型「天山」と、性能的にも連合軍の機体と互角以上に戦える機体を揃えていた。
唯一の懸念は、パイロットの多くが艦上機パイロットとしての実戦経験皆無であったが、それでも燃料に恵まれていたシンガポール、フィリピンなどでみっちり訓練を施し、最低でも500時間程度までの飛行経験を有する者が集められていた。
これはトラック島を根城にする空母「大鳳」を旗艦とする第三艦隊も同様で、こちらも前年11月のタラワでの戦闘以後、空母艦上機の育成に集中した結果、パイロットの平均飛行時間は700時間と、同時期の基地航空隊より遙かに恵まれていた。
ちなみに第三艦隊の艦載機は正規空母に限れば「烈風」「彗星」「流星」「彩雲」とさらに高性能な機体が集められており、米機動部隊を互角以上に戦える実力を有していた。
さて、出撃した第八艦隊に対抗するのがキンケイド提督指揮の米第七艦隊で、その戦力は旧式とは言え戦艦5、護衛空母8,重巡4,軽巡3、駆逐艦24からなり、艦艇数ならびに艦上機の数ともに優勢であったが、唯一の弱点が護衛空母の最高速力18ノットに合わせた機動力しか持ち合わせていなかったことと、艦載機はF4Fの後期版であるFM2とTBF/M[アベンジャー」雷撃機の2機種だけで、急降下爆撃機を有していないことであった。
またこのキンケイド艦隊の後方には護衛空母四隻を含む上陸艦隊が待機し、制空・制海権掌握後にポート・モレスビー上陸作戦を行う予定であった。
こうして第八艦隊と米第七艦隊は、後に第二次珊瑚海海戦と呼ばれる戦闘を展開した。
両者はほぼ同時に潜水艦と哨戒飛行艇から敵艦隊の位置を捕捉したが、第八艦隊は攻撃戦力が少なかったため、薄暮発進の夜間攻撃を決定した。対する第七艦隊は護衛戦闘機の航続力の問題から、この日の攻撃を断念した。
この結果、双方共に敵の基地航空機への防空戦闘のみが展開された。第八艦隊はオーストラリア大陸から飛来した少数のB24爆撃機の水平爆撃のみで、上空の直掩機が難なく撃退した。対する米第七艦隊もラバウルから発進した「飛龍」陸攻と「銀河」陸爆の攻撃を受けたが、レーダーで早期発見して迎撃をした結果、軽巡1隻と駆逐艦1隻がともに損傷して離脱に追い込まれたのみであった。
しかし、ここからが日本側の基地航空隊と艦上攻撃隊の本領発揮であった。
ニューギニア東部の各基地から発進した旧式化しつつあり、夜間攻撃に特化した一式陸攻が合計16機、ラバウルからも各種17機、そして第八艦隊の艦攻のうち夜間攻撃可能なパイロットによる14機が、五月雨式に米艦隊に襲いかかった。
米艦隊にとっての不幸は、護衛空母部隊に夜間戦闘機部隊を有しておらず、日本側の夜間攻撃に対空戦闘のみで対処せねばならなかったことで、結果的に日本側で攻撃に成功した45機のうち半数近い21機を撃墜したものの、旗艦である戦艦「ペンシルバニア」と巡洋艦「ニューオリンズ」が大破し、護衛空母1隻と駆逐艦1隻が撃沈される損害を受けてしまった。
もちろん、これでもまだ米第七艦隊の方が戦力的に優勢であったが、翌日となって、より距離が縮まって航空戦となると、米側は7隻の護衛空母から100機の攻撃隊を出撃させたものの、日本側が米攻撃隊を全力迎撃し、この半数を撃墜した。
逆に日本側は第八艦隊の残存攻撃戦力と、ラバウルなどの基地航空隊の波状攻撃で、さらに2隻の護衛空母と4隻の駆逐艦を撃沈し、艦載機の半数以上を喪ったことも加わって、キンケイド提督は撤退を決断した。
日本側は速度差を活かしてこの追跡を行ったが、米潜水艦により軽巡「龍田」を撃沈されて進撃速度が鈍ったため、大破し漂流中であった駆逐艦1隻を砲撃処分したに留まった。
こうして、マッカーサー軍の進撃は食い止められた。
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