8話 うちらマブダチだかんね!
「……えっと」
王女フィリアは、
少し緊張した様子で椅子に座っていた。
場所は、
アルヴェイン公爵家の一室。
つまり。
(マジで王女来てるんだが)
りなはまだ若干慣れていなかった。
数日前の社交会以降、
フィリアはやたらとりなに興味を持った。
そして今日。
ついに。
「ほ、本日はよろしくお願いします……!」
王女直々のお茶会である。
「いやそんな緊張しなくてよくね?」
「えっ」
「もっと普通でいいし」
「ふ、普通……」
フィリアが困った顔をする。
たぶん今まで、
“普通に接して”と言われたことがないのだろう。
周囲は皆、
王女として扱う。
当然だ。
でもりなには、
そんなの関係なかった。
「とりま座りなって」
「は、はい!」
「硬っ」
りなは吹き出した。
◇◇◇
「……それでね」
数十分後。
「その時、お兄様が――」
「え、ウケる」
フィリアは、
目を丸くしていた。
楽しかった。
ただ話しているだけなのに。
誰かとこんな風に笑ったのは、
いつ以来だろう。
「フィリアってさ」
「は、はい!」
「結構ノリ良くね?」
「の、ノリ……?」
「話しやすいってこと」
フィリアの頬が少し赤くなる。
その瞬間。
りなはフィリアの顔をじっと見た。
「……あ」
「ど、どうされました?」
「その髪、絶対アレンジした方が可愛い」
「へ?」
◇◇◇
「……できた!」
りなが満足そうに頷く。
フィリアは恐る恐る鏡を見て――
「…………っ!」
息を呑んだ。
髪型が変わっていた。
少し編み込まれ、
リボンでまとめられている。
それだけなのに、
雰囲気が全然違う。
「か、可愛い……!」
「っしょ?」
りながニヤリと笑う。
「フィリア、素材いいんだからもっと盛った方がいいって」
「も、盛る……」
フィリアは、
鏡を見ながら小さく笑った。
その笑顔を見て、
りなは思う。
(……あ、普通にかわい)
そしてその時だった。
コンコン、と扉がノックされる。
「失礼します」
入ってきたメイドが、
フィリアの姿を見て固まった。
「お、王女殿下……!?」
「え?」
「そ、その髪型……!」
フィリアがびくっと肩を揺らす。
だが。
「可愛いじゃんね?」
りなが当然みたいに言った。
メイドは数秒固まった後、
ゆっくり頷いた。
「……とても、お似合いです」
「っ……!」
フィリアの顔が、
ぱあっと明るくなる。
その瞬間。
りなは笑った。
「っし。今日からうちらマブダチだかんね!」
「……まぶ、だち?」
「親友ってこと」
フィリアは目を見開く。
そして。
本当に嬉しそうに、
笑った。
「……はい!」




