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『平成ギャルが公爵令嬢に転生したら、貴族社会がマジでだるすぎた件』  作者: qp46


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6話 思い出残す?そんならプリっしょ!

「……ねえ」


 りなはふと首を傾げた。


「はい?」


 エミリアが紅茶を置きながら答える。


「この世界って、写真なくね?」


「しゃしん……?」


「思い出残すやつ」


 エミリアは困った顔をした。


「ええと……肖像画ならございますが」


「いやもっと気軽なやつ!」


 りなは身を乗り出す。


「友達と撮ったり〜、変顔したり〜、ラクガキしたり〜」


「らく……?」


「え、しないの?」


「そのような文化は……」


 りなは絶句した。


(マジで人生損してるじゃん……)


 思い出。


 青春。


 友達。


 その瞬間を残す文化がない。


 これは由々しき事態だった。


「……よし」


 その瞬間。


 ――ブワッ。


「来ましたね……」


 エミリアが悟った顔になる。


 黄金の光。


 神々しい紋様。


 最近では使用人たちも、

「また新しい“盛り”だな」

くらいの認識になってきていた。


『創造神スキル起動』


『“思い出を盛りたい”という欲求を確認』


「もうなんでも盛るじゃん」


『新規創造候補を解放』


『プリクラ機』


『落書き機能』


『小顔補正』


「小顔補正まであるの!?」


 空間が歪む。


 現れたのは、

巨大な箱型の機械。


 ピカピカ光る画面。


 カーテン。


 意味不明な派手さ。


「……完成。プリ機」


「ぷり……き?」


「思い出盛る機械」


「思い出を……盛る……?」


 エミリアの理解が追いついていない。


 だがりなは気にしない。


「とりま入って」


「は、はい!?」


 半ば押し込まれるように、

エミリアがプリ機へ入る。


「え、もっと寄って」


「こ、こうですか……?」


「硬っ!」


 りなは笑った。


「もっと笑ってよ〜」


「わ、笑う……?」


「はい、ピース」


「ぴーす……?」


 パシャッ!!


「きゃっ!?」


 強烈な光。


 数秒後。


 ウィィン……と音を立て、

紙が出てくる。


「おお〜!」


 りなはテンションを上げる。


「見て見て!」


 そこには、

りなとエミリアの姿。


 しかも。


「えっ……」


 エミリアが固まった。


「私……こんな風に笑って……」


 楽しそうだった。


 本当に。


 今この瞬間が、

そのまま残っている。


「……すごい」


「っしょ?」


 さらにりなはペンを取り出す。


「ここにラクガキするんよ」


「らくがき……」


「はい、“マジアゲ〜”っと」


 写真にハートや文字を書き込んでいく。


 エミリアは、

まるで宝物を見るみたいに写真を見つめていた。


   ◇◇◇


 その日の夜。


 屋敷の一角で、

妙な行列ができていた。


「つ、次……私です……!」


「もっと右から撮った方が盛れるらしいわ!」


「“小顔補正”とは何なのです!?」


 完全にプリ機待機列だった。


   ◇◇◇


 さらに翌日。


「レティシア」


 珍しく、

公爵が自らりなの部屋を訪れた。


「お父様?」


「……その、“ぷり”とやらは」


「うん」


「家族でも……撮れるのか」


 りなは数秒固まった後、

ニヤァ……と笑った。


「え、お父様プリ撮りたいの?」


「違う」


「絶対撮りたいじゃん」


「違う」


 背後では、

執事長ベルモンドが静かに視線を逸らしていた。


 数分後。


「近っ、お父様顔硬っ!」


「これでいいだろう!」


「ベルモンドさんももっと寄って!」


「……失礼します」


 パシャ。


 写真が出てくる。


 そこには、

少しだけ困った顔をした公爵と、

無表情な執事長、

そして満面の笑みのりなが写っていた。


「……」


 公爵は無言で写真を見る。


 そして。


 本当に少しだけ。


 口元を緩めた。


「……悪くない」


「お父様、今笑った?」


「笑っていない」


「いや絶対笑ったし」


 その日の夜。


 公爵家では密かに、


『旦那様が“ぷり”を机の引き出しに保管している』


という噂が広まり始めていた。

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