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『平成ギャルが公爵令嬢に転生したら、貴族社会がマジでだるすぎた件』  作者: qp46


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5話 その爪、地味じゃね?

「……ねえ」


 りなは、ふとエミリアの手を見た。


「はい?」


「その爪さ」


 エミリアは自分の手を見る。


 綺麗に整えられている。

 傷一つない。


 公爵家のメイドとして、

常に清潔を意識している証拠だ。


 だが。


「地味すぎない?」


「……えっ」


 エミリアが固まった。


「え、でも爪ですよ……?」


「いやだから」


 りなは真顔で言う。


「爪こそ盛るんじゃん」


「つ、爪を……盛る……?」


 また理解不能な言葉が飛び出した。


 だが、りなは止まらない。


「手元って結構見られるし」


「そ、そうなのですか……?」


「あと可愛い爪見るだけでマジアゲ」


「まじあげ……」


 エミリアが遠い目をする。


 最近ようやく、

“マジアゲ”は褒め言葉らしいと理解してきた。


「……よし」


 その瞬間。


 ――ブワッ。


「来ましたね……」


 エミリアが悟った顔になる。


 黄金の光。


 神々しい紋様。


 最近では使用人たちも、

「また新しい“盛り”だ」

くらいの反応になっていた。


『創造神スキル起動』


『“指先も盛りたい”という欲求を確認』


「ほんと欲求で動くなこのスキル」


『新規創造候補を解放』


『ネイル』


『ラメ』


『ネイルパーツ』


「ラメ来た!!」


 空中に現れる小瓶。


 鮮やかな色。


 キラキラ輝く粉。


 小さな宝石。


 完全にネイルセットだった。


「……異世界に早すぎる」


「レ、レティシア様。それは一体……」


「ネイル」


「ねいる……」


「爪を盛る文化」


「文化なんですね……」


 りなはエミリアの手を掴む。


「貸して」


「は、はいっ」


 細く白い指。


 これは盛りがいがある。


「エミリアは〜……ピンク系かな」


「ぴんく……?」


「優しい顔してるし」


 りなは筆を動かす。


 塗る。


 重ねる。


 ラメを乗せる。


 そして――


「よし、完成」


 エミリアは恐る恐る指先を見る。


「…………っ」


 固まった。


 爪が、

きらきら光っていた。


 ただ色がついただけじゃない。


 指先を見るたび、

少しだけ気分が上がる。


 なんだか、

自分が少し素敵になった気がする。


「か、可愛い……」


「っしょ?」


 りながニヤリと笑う。


「これが“指先まで盛る”ってこと」


 エミリアは、

何度も自分の爪を見つめた。


 嬉しそうに。


 大切そうに。


 まるで宝物を見るみたいに。


   ◇◇◇


 その日の午後。


「……見た?」


「ええ……」


「エミリアの指先……」


 使用人たちが、

ひそひそと話し始める。


「“ねいる”って言うらしいわ」


「なにそれ……可愛い……」


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 “盛る”という文化は、

屋敷に侵食していた。


   ◇◇◇


 ――翌朝。


「レティシア様!!」


 バン!! と扉が開いた。


「うるさっ」


 飛び込んできたメイド長は、

完全に疲れ切った顔をしていた。


「使用人たちが、“仕事中でも許される範囲のネイル”について議論しています!!」


「もうルール作り始めたの!?」


「さらに、“ラメは二つまで”という派閥と、“もっと盛るべき”という派閥で対立が……!」


「なんで戦争起きてんの!?」


 りなは頭を抱えた。


 この世界、

“盛り”への適応が早すぎる。

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