64話 山登り!のつもりがなんか温泉湧いたんだけど!?
公爵家
「うわ〜……」
りなが窓の外を見る
綺麗な青空。
気持ちいい風。
「どっか行きて〜」
「急ですね」
エミリアが紅茶を置いた
◇◇◇
「レティシア様!」
フィリアが勢いよく立ち上がる
「山などどうでしょう!?」
「山?」
「自然!
景色!
空気!」
「遠足前の小学生みたいなテンションだなぁ」
◇◇◇
数日後
山道
「うわ空気うまっ」
りなが大きく伸びをする
今日は完全に山登り仕様だった
動きやすい軽装。
編み上げブーツ。
帽子。
ラフなのに妙に盛れている
「レティシア様ー!」
フィリアが先を歩く
今日は王女というより、
完全にアウトドア少女だった
「見てください!!
花です!!」
「ほんとだ」
◇◇◇
後ろでは。
公爵家の護衛騎士達が周囲を警戒している
「周辺異常ありません!」
「足元お気をつけください!」
「うわガチ登山だ」
「当然です」
エミリアが即答した
「レティシア様とフィリア様がおられるのですから」
「確かに」
◇◇◇
山道を進む。
川を越える。
岩場を登る。
「うわっ」
りなが少し滑る
「レティシア様!?」
「だいじょぶだいじょぶ」
「危険ですのでふざけないでください」
「今のはギャル回避だから」
「なんですかそれ」
◇◇◇
「でも山っていいね〜」
りなが木々を見上げる
葉の隙間から光が差し込む
風が揺れる。
鳥の声。
川の音。
王都とは全然違う空気だった
「なんか癒される」
「はい!」
フィリアも嬉しそうに頷く
「空気が綺麗です!」
◇◇◇
その時だった
「……ねえ」
りなが足を止める
「ん?」
「なんかさ」
地面を見る
「ここ掘ったら、
温泉とか出そうじゃね?」
沈黙
「おんせん?」
フィリアが首を傾げた
◇◇◇
「自然にお湯湧いてる場所!」
「しかもめっちゃ気持ちいい!」
「景色見ながら入れたりするし!」
フィリアの目が輝く
「最高では!?」
「ワンチャンありそうじゃん?」
「わんちゃん」
「可能性あるって意味」
◇◇◇
「ですが」
エミリアが周囲を見回す
「そんな都合よく――」
黄金の光。
「うわっ」
『創造神スキル起動』
「タイミング良すぎん?」
◇◇◇
『“温泉を探したい”という欲求を確認』
『新規創造候補を解放』
『温泉探知機』
「あるんだ……」
現れたのは。
妙にそれっぽい棒だった
◇◇◇
「……これで分かるの?」
『反応地点へ向かってください』
「説明ざっくりだなぁ」
りなが棒を持つ
すると。
カタッ。
「お?」
少し動いた
◇◇◇
「動きました!!」
フィリアが目を輝かせる
「いやでもこれ、
たまたまじゃ――」
カタカタカタカタッ!!
「うわっ!?」
急に激しく震え始めた
「怖っ」
◇◇◇
「こっちっぽい!」
りなが棒に引っ張られるように歩く
フィリアも続く
「探検みたいです!」
「ちょっと楽しくなってきたな」
◇◇◇
数分後。
探知機が、
ピタッと止まった
そこは。
ただの地面。
「……ここ?」
りながしゃがみ込む
地面へ触れる
「ん?」
ほんのり暖かかった
沈黙
もう一回触る
「あったかい」
◇◇◇
「……え」
フィリアも触る
「ほんとです!!」
エミリアも目を細める
「これは……」
護衛騎士達までざわつき始めた
「まさか本当に……」
◇◇◇
「ほんとにあるやん!!」
りなが爆笑する
「ノリで言っただけなんだけど!?」
◇◇◇
数時間後
「掘れぇぇぇぇ!!」
エリック王の声が山へ響いた
「来るの早っ!?」
「温泉と聞いて!!」
「フットワーク軽すぎるんすよ!!」
◇◇◇
騎士達が一斉に掘り始める
ドゴッ!!
ガン!!
ザッ!!
「いや本当に掘るんだ……」
「陛下がやる気ですので」
エミリアが真顔だった
◇◇◇
「レティシア様!」
フィリアがソワソワしている
「出るでしょうか!?」
「いやどうだろ」
その時だった
――ゴボッ。
全員止まる
「……今なんか言った?」
次の瞬間。
ブシャァァァァ!!
「うわぁぁぁぁ!?」
大量のお湯が吹き上がった
◇◇◇
湯気。
熱。
溢れるお湯。
山中へ広がる蒸気。
「「「おおおおお!!!」」」
フィリアが跳ねる
「温泉ですーーー!!」
「マジで掘り当てちゃった……」
りながちょっと引いていた
◇◇◇
数週間後
「完成早くない!?」
りなが固まった
山の麓。
そこには。
立派な温泉宿が建っていた
木造建築。
露天風呂。
休憩所。
完全に温泉街だった
◇◇◇
「レティシア」
エリック王が満足げに頷く
「この温泉の名だが――」
嫌な予感がした
「“レティシア温泉”とする!!」
沈黙
「えっ」
「第一発見者だからな!」
「いや待って恥ずっ!!」
「良い名前です!!」
フィリアが拍手する
「よくないって!!」
◇◇◇
「そして!」
エリック王が笑う
「完成記念として、
レティシア達へ最初の入浴権を与える!!」
「「「おおおおお!!!」」」
「そんな拍手されること!?」
◇◇◇
露天風呂
「うわぁぁ……」
りなが目を丸くする
夜空。
湯気。
木の香り。
広い湯船。
完全に温泉旅館だった
「なんか……
ガチで温泉だ……」
「レティシア様!」
フィリアが目を輝かせる
「入る前に“ばすぼむ”です!!」
「あ、そうだった」
◇◇◇
「創ちゃん!」
黄金の光。
『新規創造候補を解放』
『あわばすぼむ』
『温泉用へあおいる』
『保湿くりぃむ』
『ふぇいすぱっく』
「急に女子力!!」
◇◇◇
「まずこれ!」
りなが丸い玉を持ち上げる
「ばすぼむ!」
「ばすぼむ!」
フィリアが目を輝かせる
「お湯に入れるとシュワシュワするやつ!」
「必要なのですか!?」
「必要」
即答だった
◇◇◇
ぽちゃん。
シーーーン……
沈黙
「……あれ?」
フィリアが首を傾げる
「何も起きません!」
「いや温泉広すぎた」
◇◇◇
「追加ぁ!!」
ぽちゃんぽちゃんぽちゃん!!
大量投入。
次の瞬間。
シュワァァァァァ!!
「うわぁぁぁ!!」
露天風呂がめちゃくちゃ泡立った
「多い多い多い!!」
◇◇◇
「でもめっちゃいい匂いです!!」
「テンション上がるっしょ?」
「温泉ガチよりガチです!!」
「まだ言ってる」
◇◇◇
「ふぃ〜……」
りなが露天風呂で伸びをする
夜空。
湯気。
木の香り。
「温泉最高〜……」
「ガチよりガチです……」
フィリアが完全に蕩けていた
「それもう褒め言葉として定着したな」
◇◇◇
「でもなんか不思議だね」
りなが空を見る
「山来て」
「掘って」
「温泉出て」
「宿まで建ってる」
「勢いがすごいです!」
「この国ノリで進みすぎなんだよなぁ」
みんなが笑った
◇◇◇
翌日
「レティシア温泉はこちら最後尾です!!」
「温泉まんじゅう追加ー!!」
「限定へあおいる完売しました!!」
「次のお客様ご案内します!!」
沈黙
「……え」
◇◇◇
長蛇の列だった
屋台。
湯気。
観光客。
行列。
山だった場所が、
もう半分温泉街になっていた
「早くない!?」
◇◇◇
「なんで屋台もう出てんの!?」
「商人達が集まり始めまして」
エミリアが普通に答える
「適応力どうなってんの!?」
◇◇◇
りなは行列を見る
王国民達。
めちゃくちゃ楽しそうだった
「……ほんと」
りなが苦笑する
「この国の人たち、
相変わらずノリ良すぎんだろ……」




