54話 それ略しすぎじゃね?
いつもの茶会
「まじそれな!」
りなが笑う
「それな?」
フィリアが首を傾げた
「レティシア様、度々発せられるその『それな』とはなんなのですか?」
「意味は伝わるのですが」
「あー」
りなががお菓子を摘む
「略語?」
「楽だからつい出ちゃうんだよね〜」
「略語」
フィリアが真剣な顔で復唱した
「アゲ、盛るなどのギャル語とは違うのですか?」
「え? そういえば知らんわ」
りながが止まる
「まあノリっしょ!」
「ノリ」
フィリアの目が輝いた
セレスティアだけ嫌な顔をしていた
「絶対ろくなことになりません……」
◇◇◇
翌日
「それな〜」
「マ?」
「り!」
お茶会に集まった令嬢達が、
早速略語を使い始めていた
「早くない!?」
「フィリア様が広めたそうです」
エミリアがさらっと言った
「行動力どうなってんの?」
「短く話すの、
なんだか知的でおしゃれです!」
フィリアが胸を張る
「方向性終わってる」
◇◇◇
数日後
「それなですわ」
「りですわ」
「マ?ですわ」
「貴族語みたいになってんだけど!?」
りながが固まる
王都
略語だらけだった
「現在王都では」
エミリアが資料を見る
「“短く返せる女性ほど洗練されている”という風潮が形成され始めています」
「なんでだよ」
「最近では長文を嫌う若者も」
「SNS文化みたいになってきたな!?」
◇◇◇
「レティシア様!」
フィリアが勢いよく駆け寄る
「略語辞典を作りました!」
「仕事早ぇな!?」
「“り”は理解」
「“マ”は本当ですか」
「“それな”は共感です!」
「普通に学問化されてる……」
「現在、
王立図書館でも管理されています!」
「国が動くな」
◇◇◇
その頃
聖教国エルマーリ
「こちらが我が国の返答です」
教徒が紙を差し出す
隣国の使者が開いた
『り』
「短っ!?」
「“理解した”との意味です」
「分かりづらっ!!」
教王が静かに頷く
「実に合理的ですね」
「トップまで染まってる……」
セレスティアが頭を抱えた
◇◇◇
「こちら最新型です!」
「また職人来た」
「略語翻訳辞典です!」
「いらねぇぇぇ!!」
「魔石で――」
りながが先に言う
「はいはい、
どうせ光るんでしょ?」
職人が胸を張った
「燃えます」
「燃えたらダメだろ! 本だから!!」
◇◇◇
その夜
「父上、り」
「それな」
「マ?」
エリック王
レオン
ルーク
略語だけで会話していた
「終わったわこの国」
オリヴィア王妃が遠い目をした




