32話 地味子をプロデュース!
その日の午後
公爵家では、
令嬢たちを集めたケーキパーティーが開かれていた
「今日はチートデイだから!」
りなが高らかに宣言する
「どれだけ食べても大丈夫!!」
「絶対違いますよね?」
エミリアが即ツッコむ
だがりなは止まらない
「甘い物は別腹だから実質ゼロカロリー!」
「理論がめちゃくちゃです!」
◇◇◇
「ん?」
その時
りなが部屋の隅を見る
一人だけ、
縮こまるように座っている令嬢がいた
癖っ毛
そばかす
丸メガネ
そして地味な服装
ケーキにもほとんど手を付けていない
「どしたん?」
りなが近づく
「全然楽しんでなくない?
甘いもの苦手だったとか?」
「あ、レティシア様……!」
令嬢が慌てて頭を下げた
「い、いえ実は……」
◇◇◇
「見合いに何度も失敗しておりまして……」
令嬢――カリナが俯く
「私は男爵家の娘ですので、
嫁ぎ先が決まらなければ未来がなくて……」
「うわ重」
「れ、レティシア様!?」
「いやごめん正直な感想出た」
りなが苦笑する
「それで、
少しでもなんとかしようと……」
カリナが小さく笑った
「太りそうなものは控えようかと……」
沈黙
「え」
りながカリナを見る
「ダイエットってそのスタイルで?」
「はい……」
「いや逆に死ぬくね?」
「えぇっ!?」
◇◇◇
「てかさ」
りながカリナの前髪を持ち上げる
「素材めっちゃ良くない?」
「そ、素材……?」
「なんで隠してんの?」
「え……」
「ダイエットより先に、
盛ってみたらいいじゃん!」
カリナが固まった
「も、盛る……?」
「わたしがやってあげるからさ!」
りながニヤリと笑う
◇◇◇
「創ちゃん」
沈黙
次の瞬間
――ブワッ!!
金色の光が部屋を包み込んだ
「また始まった!?」
エミリアが頭を抱える
『“盛りたい”という欲求を検知』
「いや今回わたしの欲求なんだけど」
さらに光が弾ける
ヘアアイロン
ドライヤー
ヘアオイル
ネイル
肩出しニット
「これは“ドウテイヲコロスニット”!?」
「ドウテ、なんですか?」
フィリアが困惑した
「気にしなくていいやつ!」
◇◇◇
「はい完成!」
数十分後
カリナが鏡を見る
「……え」
そこにいたのは
柔らかく巻かれた髪
丸メガネを外し、
大きく見える瞳
少しだけ赤くなった唇
そして。
自信なさげだった少女とは、
まるで別人の笑顔
「か、かわいい……」
カリナが震える
「いや元からかわいかったし」
りなが笑う
「隠してただけじゃん」
カリナの目に、
じわっと涙が浮かんだ
◇◇◇
そして翌日
バァン!!
「レティシア様ぁぁぁぁぁ!!」
「うおっ!?」
カリナが勢いよく部屋へ飛び込んできた
しかも。
隣には、
爽やかな青年までいる
「え、誰」
「子爵家のエリオットです!」
青年が頭を下げる
「昨日のパーティーでカリナ様へ一目惚れしまして!」
「結婚しました!!」
「いや早くね!?」
りなが思わず叫んだ
「展開が爆速なんだけど!?」




