30話 既読スルー=駆け引きは成立しねぇから!
その日の午後
いつものように、
公爵家でお茶会をしていた
だが
「……」
フィリアの様子がおかしい
ずっと“lean”を見ている
「フィリア?」
「……はい」
「いや絶対なんかあったじゃん」
りなが覗き込む
画面には、
騎士のアイコン
『マイル』
『本日の訓練お疲れ様でした!』
既読
だが
返信は来ていない
「……え」
「既読スルーされてんの?」
フィリアがしょんぼり俯く
「昨日までは普通だったのですが……」
「何時間?」
「三時間です」
「うわ微妙に長い」
「しかも既読は付いております……」
「それはしんどい!」
りなが即答する
「ですよねぇ!?」
フィリアが半泣きになる
◇◇◇
「でも既読スルーはないわ」
りなが腕を組む
「忙しいとか?」
「本日は休暇のはずです……」
「うわ」
「うわ、じゃないです!」
「いやでも既読付いてんだよね?」
「はい……」
「なら読んでる」
「うぅ……」
「よし」
りなが立ち上がる
「直接行こ」
「え」
「え?」
◇◇◇
騎士団訓練場
「マイルー!!」
「レ、レティシア様!?」
若い騎士が飛び上がった
フィリアはその後ろで、
少し不安そうに立っている
「えっと……どうされたのでしょうか……?」
「既読スルーした?」
直球だった
「ぶっ」
マイルがむせる
「い、いやこれはですね!?」
「その…返事は遅ければ遅いほど気になるって聞いて……!」
沈黙
「……は?」
りなが真顔になる
「駆け引きのつもり?」
「は、はい……」
「マイル様……」
フィリアがしょんぼり俯いた
「うわ最悪」
「えぇっ!?」
「いい?」
りながマイルを指差す
「既読スルー=駆け引きは成立しねぇから!」
「せ、成立しない!?」
「駆け引きってのは、
相手に“見てもらうまで”に発生するもの!」
「見る前!?」
「既読付いた時点で、
相手は“待ち状態”入ってんの!」
「なるほど……!?」
マイルが衝撃を受けていた
「しかもフィリアめっちゃ不安になってたし」
「えっ」
マイルがフィリアを見る
フィリアは小さく頷いた
「嫌われたのかと……」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
マイルが頭を抱えた
◇◇◇
「も、申し訳ありません!!」
マイルが勢いよく頭を下げる
「お詫びに今後は即返信を――」
「いやそれはそれで重い」
「どっちなんですか!?」
りなが吹き出した
「普通でいいの普通で」
「むずかしすぎません!?」
「わかります」
フィリアも真顔で頷く
◇◇◇
その夜
ピコン
『本日はありがとうございました!』
ピコン
『大変ためになりました!』
ピコン
『今後は気を付けます!』
ピコン
『返信速度も改善します!』
ピコン
『駆け引きはしません!』
「待って」
「連投はマイナスだろ!」




