2話 異世界、盛れてなさすぎ問題。
「……地味」
りなはぽつりと呟いた。
「え?」
エミリアが首を傾げる。
「いや、この世界」
窓の外を見る。
広い庭。
豪華な噴水。
綺麗な花壇。
なのに。
「なんか全体的に盛れてなくない?」
「も、盛れる……?」
通じてない。
だが、りなには分かっていた。
この世界には圧倒的に足りないものがある。
“映え”だ。
「色味が弱いんだよね〜」
「い、色味……」
「あとキラキラ不足」
「き、きらきら……」
エミリアの脳が限界を迎え始めている。
だが、りなは真剣だった。
ドレスは綺麗。
建物も豪華。
なのに何か物足りない。
(あれだ)
りなは鏡を見る。
完璧美少女。
しかし。
「……まつ毛、弱っ」
「っ!?」
エミリアが息を呑む。
「お、お嬢様のお顔立ちは完璧かと……!」
「違う違う。素材はいいの」
「そ、素材……?」
「でも盛れてない」
断言した。
今のレティシアは、
素材SSRを無加工で出している状態。
それはもう、
ギャルとして見過ごせない。
「……よし」
りなは立ち上がった。
「作るか」
「え?」
「つけま」
「ツケ……マ?」
その瞬間だった。
――ブワッ。
突然、部屋に金色の光が溢れた。
「きゃっ!?」
エミリアが悲鳴を上げる。
空中に浮かび上がる謎の魔法陣。
いや、違う。
もっと神々しい何か。
『創造神スキルを確認』
『所有者:星宮りな』
『“盛りたい”という強い意志を検知しました』
「えっ」
りなが固まる。
次の瞬間。
空間が歪んだ。
キラキラした光が集まり、
りなの目の前に“何か”が形成されていく。
細く、美しく、
漆黒に輝くそれは――
「……つけまじゃん」
本当に、つけまだった。
沈黙。
「…………」
「…………」
エミリアが震える声で言う。
「お、お嬢様……今、何を……」
「え、つけま作った」
「つけ……?」
「まつ毛盛るやつ」
「まつげを……盛る……?」
理解できていない。
当然である。
ここは異世界だ。
つけま文化など存在しない。
「まあ見てて」
りなは慣れた手つきでつけまを装着した。
そして鏡を見る。
「……ッ!!」
エミリアが息を呑む。
変わった。
ほんの少し。
だが、確実に印象が違う。
目力。
華やかさ。
存在感。
レティシアの美貌が、
さらに“完成”した。
「やっば。盛れた」
「も、盛れ……」
エミリアの膝が震える。
「お、お嬢様……まるで女神のような……」
「え、わかる?」
「はい……!」
りなはニヤリと笑った。
その瞬間。
脳内に謎の声が響く。
『創造神スキル経験値獲得』
『“つけま”が異世界人に感動を与えました』
『スキルレベルが上昇します』
「……は?」
りなの頬が引きつる。
「いや、なんで?」
『次の創造候補を解放します』
『ルージュ』
『ネイル』
『プリクラ機』
「プリ機まで作れんの!?」
異世界の創造神、
だいぶギャル寄りだった。
後書き
ここまで読んでいただきありがとうございます!
異世界につけまが誕生しました。
この世界の未来が少し心配です。
本作は、
作者の“なんとなくの平成ギャル知識”と、
ノリと勢いで構成されています。
細かいことはマジアゲ精神で読んでいただけると嬉しいです。
また、作者はジャンル問わず色々な作品を書いています。
▼AI×異世界ファンタジー
『俺だけレベルが上がらないのに、補助AIの『最適行動』でいずれ世界最強に!?』
▼妄想を具現化して戦う異能バトル
『妄想具現化コロシアム』
▼学園ホラー
『学校の怪異』
▼“ひと”をテーマにした短編作品
『石を積む。』
『君を再現する。』
▼子供向け妖怪作品
『カクシ図鑑』
ほかにもメモ帳で眠っている短編など色々あります。
気になった作品があれば、
ぜひそちらも読んでみてください!
それでは次回、
異世界人たちは“盛る”という概念にさらに脳を焼かれます。




