表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『平成ギャルが公爵令嬢に転生したら、貴族社会がマジでだるすぎた件』  作者: qp46


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/26

1話 紅茶、ぬるくない?

「お嬢様、本日のご予定ですが――」


「待って」


 りなは真顔で手を上げた。


「情報量多すぎて脳みそバグる」


「……はい?」


 目の前には、昨日のメイドさん。

 名前はエミリアというらしい。


 そしてここは、アルヴェイン公爵家。


 つまり――


(いやマジで転生してんじゃん……)


 昨夜は混乱しすぎて全然寝られなかった。


 だって気づいたら金髪縦ロールだ。

 しかも公爵令嬢。


 鏡見るたびに「誰!?」ってなる。


「お嬢様、紅茶が冷めてしまいます」


「ん」


 差し出されたティーカップを受け取る。


 一口飲む。


「……うま」


 思わず声が漏れた。


 香りがすごい。

 なんかもう、高そうな味がする。


「ですが、本日は旦那様との朝食会がありますので、お急ぎください」


「旦那様?」


「お父様でございます」


「あー、パパね」


 エミリアが固まった。


「……ぱ、ぱぱ?」


「え?」


「お嬢様が旦那様をそのように呼ばれたことは、一度も……」


「あっ」


 やばい。


 りなは慌てて咳払いした。


「コホン。……お父様」


「……?」


 めちゃくちゃ怪しまれている。


(危なっ……!)


 この身体の持ち主――レティシアは、かなり冷たい性格だったらしい。


 使用人とも必要最低限しか話さないタイプ。


 つまり今のりな、

完全にキャラ崩壊している。


「……お嬢様、本当にお加減は」


「いやマジ平気! 超元気!」


「ちょうげんき……?」


 エミリアがさらに困惑した顔になる。


 しまった。

 ギャル語が通じない。


「……と、とても元気ですわ」


「そ、そうでございますか……」


 なんとか誤魔化した。


 危ない。


 このままだと“頭を強く打ったショックで性格変わった令嬢”扱いされる。


(いや実際そうなんだけど)


 りなが心の中でツッコんでいると、


 コンコン、と扉がノックされた。


「失礼いたします。レティシア様」


 入ってきたのは、執事服を着た白髪の男性。


「旦那様がお待ちです」


「……はい」


 りなは立ち上がる。


 その瞬間。


 ふわり、とドレスの裾が揺れた。


(うわ、歩きづら……!)


 慣れないヒール。

 重いスカート。


 平成ギャル、人生で一番動きにくい。


   ◇◇◇


 朝食会場は、意味が分からないくらい広かった。


(体育館??)


 長テーブルの奥には、中年の男性。


 鋭い目つき。

 威圧感すごい。


 絶対強い。

 たぶんラスボス系。


「……座りなさい、レティシア」


「はい」


 りなはおとなしく座った。


 すると、公爵――父親がじっとこちらを見る。


「身体の具合はどうだ」


「えっと……元気です」


「そうか」


 会話終了。


(気まずっ!!)


 なにこの空気。


 静かすぎる。


 沈黙に耐えられず、りなは周囲を見る。


 豪華な料理。

 磨かれた銀食器。

 高そうな花。


 全部すごい。


 でも。


(なんか……息詰まるな)


 誰も笑わない。


 使用人たちも無言。


 静かに動くだけ。


 そんな中。


 カチャ、と紅茶が置かれた。


 りなはなんとなく飲む。


「……ぬる」


 ぽつり、と漏れた。


 その瞬間。


 空気が止まった。


 使用人たちが青ざめる。


 エミリアの顔から血の気が引く。


(え?)


 りなが固まっていると、公爵が静かに口を開いた。


「……作り直せ」


「っ、申し訳ございません!」


 給仕のメイドが震えながら頭を下げる。


 その姿を見て、りなは焦った。


「え!? いや違っ、そんなつもりじゃ――」


「レティシア」


 低い声。


 父親がこちらを見る。


「お前が口にした不満は、使用人にとって“命令”だ」


「……え」


「アルヴェイン公爵家とは、そういう場所だ」


 静まり返る食堂。


 りなは、震えるメイドを見る。


 ただ“ぬるい”って言っただけ。


 日本なら、ちょっとした一言。


 でもここでは違う。


(……めんどくさ)


 思わず本音が漏れそうになる。


 だけど。


 震えるメイドを見た瞬間。


 りなは小さく息を吐いた。


「……別に、これでも飲めるし」


 全員が目を見開いた。


「お嬢様……?」


「つか、朝からそんなビビられたらこっちも気まずいんだけど」


「……は?」


「もっと普通でよくない?」


 また空気が止まる。


 公爵ですら、少しだけ目を細めていた。


 そしてりなはまだ知らない。


 この何気ない一言が、

後に“氷の公爵令嬢が変わった日”として、

屋敷中に広まることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ