27話 夏といったら祭りっしょ!
「祭りっぽくしたくなってきた」
りなの一言に、
フィリアが首を傾げる
「まつり……?」
「この国には収穫祭などはありますが……」
りなは首を横に振る
「いやいや」
「そういう真面目なやつじゃなくて!」
「真面目ではない祭り……?」
「夜に屋台いっぱい出て〜」
「屋台ですか?」
「食べ歩きして〜」
「……食事を売る店ならありますが」
「みんなで騒ぐの!」
フィリアたちは顔を見合わせた。
「……そこまで賑やかに楽しむ文化はありませんね」
りなが固まる。
「……え」
「夏祭りないとかマジサゲ↓」
エミリアが苦笑した。
「かなり気に入ったんですね」
りなが両手を広げ
「だって絶対楽しいじゃん!」
「湖!」
「はい」
「夏!」
「はい」
「屋台!」
「……並んでませんね」
「騒ぐ文化!」
「ありません」
りながニヤリと笑う
「じゃあ――」
その瞬間
――ブワッ!!
「今日は反応が早いですね……」
エミリアが遠い目をした。
黄金の光
神々しい紋様
「……無いなら作ればいいっしょ!」
『“夏祭りをしたい”という欲求を確認』
だが
いつもなら一気に広がるはずの光が、
どこか弱々しい。
「……あれ?」
ぐぐぐぐ……
しょぼしょぼ……
ぶしゅー……
光が一回消えた。
「えっ」
「創ちゃん? どしたん?」
空中に、
小さな光だけが浮かんでいる。
りなが首を傾げた
「疲れ気味?」
こくん。
フィリアたちが固まる。
「か、会話してます……!?」
「こないだの、leanの時も疲れさせちゃったし」
こくこく。
「ごめんごめん、無理しないでね?」
数秒沈黙
次の瞬間
――パァァァァァッ!!
巨大な光が湖へ広がった。
「復活した!?」
『新規創造候補を解放』
『屋台』
『かき氷』
『りんご飴』
『焼き串』
『提灯』
『神輿』
『射的』
りなが目を見開く
「射的まで来た!?」
湖の周囲へ、
一気に屋台が並んでいく。
赤い屋根
提灯
祭り囃子
見るだけでテンションが上がる景色だった。
「わぁ……!」
フィリアが目を輝かせる。
「かわいいです!」
「っしょ?」
りなはドヤ顔を浮かべ
「ありがと! 創ちゃん!」
その時
りなの“lean”が鳴る。
ピコン
『good』
「スタンプだけ!?」
◇◇◇
「……旦那様」
「なんだ」
「屋台は完成しましたが、人がおりません」
ベルモンドが静かに告げる
エドワードは並ぶ屋台を見つめた。
「……ふむ」
「やるか」
「承知しました」
◇◇◇
「祭りを成功させるぞ!!」
なぜか王家側も気合いが入っていた。
エリック王が真顔で叫ぶ
「フィリアが楽しみにしている!」
「息子たちよ! 神輿を担ぐのだ!」
「了解です! 父上!」
レオン王子が法被を羽織る。
ルーク王子も鉢巻きを締めた。
「……待って」
りなが思わず声を漏らす
「王子たち普通に似合ってるくね?」
「褒めているのか?」
「めっちゃ盛れてる」
女子たちが騒ぎ始める
「待って法被やばい!!」
「腕しんど……」
「無理、好き……」
完全に祭りアイドルだった。
◇◇◇
「いらっしゃいませ」
「焼きたてです」
「次の方どうぞ」
屋台側では。
エドワード。
ベルモンド。
「お父様なにしてんの?」
「見れば分かるだろう」
エドワードが真顔で焼き串を返した
「祭り運営だ」
そしてエリック王が普通に働いている
「かき氷はこちらだ!」
エリック王、
妙に接客が上手い
「王様もいるんだけど!?」
「てか待って王様、手際良くない!?」
「昔、城を抜け出して収穫際へ行ったことがあってな」
「そんだけで!? 理解度高すぎんだけど!」
◇◇◇
「りんご飴、おひとつどうぞ」
ベルモンドが完璧な笑顔で接客していた。
「執事長かっこよ……」
「待って普通に推せる……」
「執事長の屋台だけ列長くない!?」
本人は無表情だが満更でもなさそうだった。
◇◇◇
「むっず!」
パンッ
景品に当たったはずなのに。
ぺしっ
軽い音を立てただけだった。
「え、全然落ちない〜!」
「これ難しくない!?」
そんな中
オリヴィア王妃が微笑む。
「楽しそうね」
「わたくしもやってみようかしら」
店主が慌てて銃を渡した。
次の瞬間
――パンッ!!
景品が弾け飛んだ。
「え?」
さらに
パンッ!!
パンッ!!
次々と景品が爆ぜていく
「お、王妃様!?」
店主が青ざめる
「待って」
りなが固まった
「王妃様だけ実弾入ってる!?」
最後の景品まで木っ端微塵になる。
沈黙
オリヴィア王妃が小首を傾げた。
「……あら?」
「落とさなくてはならないの? 残念」
「王妃様ガチ勢じゃん!!」
◇◇◇
「……いいな」
フィリアがぽつりと呟いた
身分も関係なく
王も
王妃も
公爵も
執事長も
みんな同じ場所で笑っている。
そんな光景、
昔のこの国では考えられなかった。
「これが祭り!」
りなが笑う。
提灯の灯り
賑やかな声
屋台
湖に映る光
神輿を担ぐ王子たち
そして
楽しそうに働く大人たち
フィリアも少し照れながら笑った。
「……夏って、マジアゲですね」
――その瞬間
ヒュゥゥゥゥ……。
フィリアが空を見上げる。
「……え?」
夜空へ、
光が打ち上がる
次の瞬間
――パァァァン!!
大輪の花が空に咲いた。
「花火!?」
湖へ光が映り込む
赤
青
緑
歓声が上がった。
「待って、花火まで!?」
その時
ピコン “lean”が鳴る
『サプライズ』
りなが笑う
「創ちゃんのサプライズか!」
夜空へ、
次々と花火が咲き続ける。
夏祭りの夜は、
まだ終わりそうになかった。




