26話 水着回、やっとかないとダメじゃね?
「……夏ってさ」
りなは湖を見つめながら呟く。
「水着回やっとかないとだめじゃね?」
「み、みずぎかい……?」
フィリアが首を傾げた。
「なにそれ」
「夏の義務」
「義務!?」
エミリアが即ツッコむ。
王家所有の巨大な湖。
本来は王族や一部貴族のみが利用する場所だったが、
最近ではりなの提案で、
一般開放の話も進んでいた。
そして今日。
その試験運用日。
「つまり今日は視察ってこと!」
「絶対違いますよね?」
「いや、ちゃんと意味あるし」
りなは真顔で言う。
「水辺は映えスポットだから」
「映え前提なんですね……」
◇◇◇
「――ブワッ。」
黄金の光が広がる。
神々しい紋様。
『“夏を楽しみたい”という欲求を確認』
「きたきた!」
『新規創造候補を解放』
『水着』
『ビーチボール』
『浮き輪』
『サングラス』
「サングラスまで!?」
光が弾ける。
次の瞬間。
色鮮やかな水着が並んでいた。
「わぁ……!」
フィリアが目を輝かせる。
「かわいい……!」
「っしょ?」
りながニヤリと笑った。
◇◇◇
数十分後。
りなが固まる。
「ちょ、待って」
「フィリア、マジ天使!!」
白を基調にしたフリル水着。
その上から薄いパーカーを羽織ったフィリアは、
完全に“お嬢様系夏ヒロイン”だった。
「そ、そうですか……?」
「いやマジ人生損してるってそれ隠してたの」
フィリアが真っ赤になる。
一方。
「エミリアも良くね?」
「えっ!?」
エミリアはシンプルなネイビーの水着。
露出は控えめだが、
逆にスタイルの良さが目立っていた。
「似合ってますか……?」
「めちゃめちゃ!!」
即答。
エミリアが顔を赤くする。
「……レティシア様って本当にそういうの躊躇なく言いますよね」
「思ったこと言ってるだけ〜」
◇◇◇
一方その頃。
「……エドワード様」
「なんだ」
「本当にこちらでよろしいのですか」
ベルモンドが双眼鏡を構えながら聞く。
「当然だ」
少し離れた高台。
そこには。
エドワード。
ベルモンド。
そしてエリック王がいた。
「ふむ……」
エリック王も双眼鏡を覗き込み、
満足そうに頷く。
「平和で良い光景ではないか」
「ええ」
「実に良い」
その時だった。
「……あれ?」
湖側から、
りなの声が聞こえた。
「なんか視線感じね?」
沈黙。
「……旦那様」
「うむ」
次の瞬間。
エドワードとベルモンドが、
同時に踵を返した。
「待て!?」
エリック王が叫ぶ。
「王を置いていく気か!?」
「申し訳ありません陛下」
「失礼します」
二人は一切振り返らず、
綺麗に逃げようとする。
「薄情すぎん!?」
その瞬間。
ガシッ。
「逃げようとしてませんよね? お父様」
「フィ、フィリア」
「父として参加してください」
「圧が強い!?」
しかし。
娘に言われた瞬間。
「……仕方あるまい!」
エリック王、
秒で切り替えた。
◇◇◇
「湖っていいね〜」
りなが浮き輪に乗りながら空を見る。
周囲では、
子供たちが水遊びをしていた。
貴族だけではない。
平民たちも笑っている。
「こんな場所を皆で使えるなんて……」
フィリアが湖を見渡す。
「昔では考えられません」
「楽しい方がよくね?」
りなが笑う。
「せっかく綺麗なんだし」
その言葉に、
フィリアも少し笑った。
◇◇◇
周囲では。
笑い声。
水音。
はしゃぐ子供たち。
楽しそうに話す人々。
賑やかな空気が、
湖全体へ広がっていた。
「……あ」
りなが周囲を見回す。
「なんかこれさ」
「?」
「屋台あったら絶対アガるくね?」
「やたい……?」
フィリアたちが首を傾げる。
りながニヤリと笑った。
「祭りっぽくしたくなってきた」




