21話 これって脈絡アリ?
「――レティシア様」
今日もフィリア様がアルヴェイン公爵家へやってきた。
もう誰も止めない。
門番ですら。
「おかえりなさいませ、フィリア様」
って言ってた。
いや実家化してない?
◇ ◇ ◇
「で?」
私は紅茶を飲みながらフィリア様を見る。
「今日はどしたん」
フィリア様は頬を赤くしながら、
もじもじ指を絡めていた。
「……あの」
「うん」
「これって……脈アリなのでしょうか」
「来たわね」
恋愛相談あるある。
“脈アリ判定会議”。
「何されたん」
「その……」
フィリア様が顔を赤くする。
「先日、“本日はお綺麗ですね”と……」
「脈アリ」
「早くない!?」
「いや好きじゃん」
「ま、まだ分かりませんわ!」
フィリア様がぶんぶん首を振る。
「他は?」
「訓練場で目が合う回数が多くて……」
「脈アリ」
「早いですって!」
「あと?」
「わ、私が来ると姿勢を正されますわ……」
「脈アリ」
「雑ぅ!?」
フィリア様が机を叩いた。
エミリアが小さく吹き出す。
「レティシア様、ほぼ願望で喋ってません?」
「恋愛って勢いだから」
「ダメなアドバイスの典型ですね」
◇ ◇ ◇
その時だった。
「随分楽しそうだな」
声。
部屋へ入ってきたのは、
レオン・エルドラド第一王子。
「あ、お兄様……!」
フィリア様が少し慌てる。
レオン様はソファへ腰掛けながら、
こちらを見た。
「何の話だ?」
「脈アリ判定会議」
「なんだそれ」
「恋愛相談!」
「帰るか……」
「帰んな!」
私は即ツッコむ。
◇ ◇ ◇
「で?」
私はレオン様を見る。
「男子的にどうなん」
「どうと言われてもな……」
レオン様はため息をつく。
「“綺麗ですね”程度なら社交辞令でも言う」
「えっ」
フィリア様の顔が固まる。
「えっ」
「貴族なら普通だ」
「えぇぇぇぇっ!?」
フィリア様が崩れ落ちた。
私はレオン様を睨む。
「いや空気読んで!?」
「なぜだ」
「今いい感じだったじゃん!」
「事実を言っただけだが」
「モテないぞ!」
「余計なお世話だ」
エミリアが真顔で頷く。
「確かにちょっとモテなさそうです」
「エミリア!?」
◇ ◇ ◇
「ですが」
レオン様がふと続ける。
「目で追うのは、多少あるかもしれんな」
「っ!」
フィリア様が顔を上げる。
「あと……」
レオン様は少し考える。
「好きな相手の前では、男は多少格好つける」
「格好つける……?」
「姿勢を正すのも、その類だろう」
「〜〜〜っ!!」
フィリア様の顔が一気に赤くなる。
私はガッツポーズした。
「っしゃ脈アリ!」
「まだ分からん」
「いや今のは強いって!」
「期待しすぎるなと言ってる」
「男子ってめんど」
「お前らが騒ぎすぎなんだ」
◇ ◇ ◇
「じゃあ逆に聞くけど」
私は身を乗り出す。
「男子ってどんな時好きになるん?」
「なんだ急に」
「参考にしたいじゃん」
レオン様は露骨に嫌そうな顔をした。
「……安心できる相手、とかじゃないか」
「おー」
「あと自然に笑ってくれるとか」
「ほうほう」
「無理に着飾るより、普通にしてる方がいい」
「…………」
その瞬間。
フィリア様と私の視線が、
同時に昨日の“盛りすぎ事件”を思い出した。
「「あっ」」
エミリアが静かに吹き出す。
「だから怖がられたんですね」
「やめてぇぇぇぇ!!」
フィリア様が机へ突っ伏した。
◇ ◇ ◇
「つまり!」
私は指を立てる。
「大事なのは“自然体”ってこと!」
「そ、そうですわね……!」
「盛るのも大事!」
「はい!」
「でも盛りすぎるな!」
「難しいですわ!?」
フィリア様が半泣きになる。
私は笑いながら紅茶を飲んだ。
恋愛って、
結局みんな手探りなんだなぁ。




