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『平成ギャルが公爵令嬢に転生したら、貴族社会がマジでだるすぎた件』  作者: qp46


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20話 恋のキューピットなら任せろっしょ!

「――む、無理ですわぁぁぁ!!」


 今日もアルヴェイン公爵家に、

フィリア様の悲鳴が響いた。


「声でっか」


 私は紅茶を飲みながらため息をつく。


 最近、

フィリア・エルドラド王女が普通に公爵家へ入り浸っていた。


 最初こそ、


『王女様が!?』


 と屋敷中が大騒ぎだったのだが。


 今では。


「あ、フィリア様いらっしゃってたんですね」


「本日もお泊まりでしょうか?」


 使用人達も完全に慣れている。


 いや順応早くない?


 


◇ ◇ ◇


「話しかけるだけで心臓が爆発しそうですわ……!」


 フィリア様が顔を真っ赤にして震える。


「いや昨日ちゃんと喋れてたやん」


「れ、レティシア様がいたからです!」


 後ろでエミリアがため息をつく。


「完全に恋する乙女ですね」


「〜〜〜っ!!」


 フィリア様が顔を覆った。


 うん。


 めちゃくちゃ分かりやすい。


 


◇ ◇ ◇


 昨日。


 騎士様と少し話せただけで、

フィリア様は一晩眠れなかったらしい。


「青春かよ」


「笑い事ではありませんわ……!」


「で?」


 私はニヤニヤしながら身を乗り出す。


「もっと仲良くなりたい?」


「っ……!」


 フィリア様の顔がさらに赤くなる。


「な、なりたい……ですわ……」


 声ちっさ。


 かわい。


「よし」


 私は立ち上がった。


「恋のキューピットなら任せろっしょ!」


「きゅーぴっと……?」


「恋を応援する人って意味!」


「お、おお……!」


 フィリア様が少し目を輝かせる。


 私はニヤッと笑った。


「恋に必要なのは、“視線を奪う力”!」


「視線を……奪う……」


「つまり盛る」


「急に怖いですわ!?」


「大丈夫大丈夫」


 私は手を突き出した。


「作るか」


「え?」


「恋愛用最終兵器」


 その瞬間。


 ――ブワッ。


「また始まった……」


 エミリアが遠い目をする。


 黄金の光。


 空中へ浮かび上がる神々しい紋様。


 部屋全体が震え始めた。


「きゃっ!?」


 フィリア様が目を見開く。


『創造神スキル起動』


『所有者:星宮りな』


『“好きな人にかわいく見られたい”という強い意志を確認』


「えっ」


 フィリア様が固まる。


『新規創造候補を解放』


『グロス』


『チーク』


『アイシャドウ』


『ラメ』


「恋愛特化だぁ……」


 思わずちょっと引いた。


『メイク道具一式を創造します』


 次の瞬間。


 光が一気に収束する。


 キラキラした粒子が集まり、

私の目の前へ“何か”が形成されていく。


 小さな瓶。


 細い筆。


 キラキラした箱。


 そして――


「……メイク道具じゃん」


 机の上へ、

見たこともない道具達が並んでいた。


「こ、これが創造神の力……」


 フィリア様が呆然と呟く。


 私はドヤ顔で笑った。


「恋愛用最終兵器ね」


 


◇ ◇ ◇


「いい? フィリア様」


 私はグロスを手に取る。


「恋ってのは“見惚れさせたモン勝ち”なの」


「み、見惚れ……」


「つまり盛れ」


「やっぱり雑ですわ!?」


「大丈夫だって。ウチがやるから」


 私はフィリア様へメイクを始めた。


 薄くチーク。


 自然なラメ。


 目元に少しだけ煌めき。


 盛る。


 でも盛りすぎない。


「……うん」


 私は満足げに頷いた。


「はい完成」


 フィリア様が恐る恐る鏡を見る。


 そして固まった。


「……え?」


 頬がほんのり色づき、

唇には自然な艶。


 元々の上品さを残したまま、

圧倒的にかわいくなっていた。


「わ、私ではないみたいですわ……!」


「いや元がいいんよ」


 すると。


「フィリア様」


 声。


 例の騎士だった。


 フィリア様の身体がビクッと跳ねる。


 騎士は一瞬、

言葉を失ったように目を見開いた。


「……っ」


 お。


 見惚れてる見惚れてる。


「その……本日は、いつも以上にお綺麗です」


「〜〜〜っ!!」


 フィリア様、限界化。


 顔真っ赤にしてしゃがみ込んだ。


 私はガッツポーズ。


「っしゃ!!」


「レティシア様うるさいです」


 


◇ ◇ ◇


 翌日。


「――レティシア様ぁぁぁぁぁっ!!」


 またフィリア様が公爵家へ飛び込んできた。


「いや来るの早っ」


 私は紅茶を吹きそうになる。


 そしてフィリア様の顔を見て固まった。


「誰!?」


 ラメ盛りすぎ。


 チーク濃すぎ。


 涙袋バキバキ。


 唇テカテカ。


 昨日の儚げ美少女どこいった。


「れ、レティシア様を参考に自分でやってみましたの……!」


「なんでそうなった!?」


 エミリアが真顔で呟く。


「強いですね」


「強いとかじゃないって!」


 フィリア様は涙目だった。


「だ、だってレティシア様みたいに盛れば……!」


「いや“盛ればいい”じゃないの!」


 私は立ち上がる。


「大事なのは“似合う盛り”!」


「に、似合う……」


「あと引き算!」


「引き算……!?」


 フィリア様が完全に混乱していた。


 そこへ。


「フィリア様、おはよ――」


 例の騎士が現れる。


 そして止まった。


「…………」


 空気が凍る。


 フィリア様が期待の目を向ける。


 騎士、後ずさる。


「えっ」


「ほ、本日は……」


 騎士がめちゃくちゃ困っていた。


「すごく……その……」


「はい……!」


「眩しいです」


「眩しい!?」


「あとちょっと怖いです」


「怖いぃぃぃぃ!!」


 フィリア様が崩れ落ちた。


 私は腹抱えて笑う。


「だから言ったじゃん! 盛ればいいってモンじゃないって!」


「レティシア様は完璧でしたのにぃぃぃ!!」


「それはウチがギャルだから!」


 エミリアが静かに頷く。


「結局、レティシア様しか勝たんということですね」


「せやね」


「認めたくありませんわぁぁぁ!!」


 アルヴェイン公爵家に、

今日も悲鳴が響いていた。

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