15話 推される側にも責任ってあるくね?
「……いや待って」
りなは腕を組んだ。
「なんでしょう」
レオン王子が首を傾げる。
今日は王城。
なぜか王子たちと普通にお茶している。
最初は周囲も止めようとしていたが、
今さら誰も止めない。
“レティシア様だから”
で押し切られている。
「王子たちさ」
「はい」
「推される側にも責任ってあるくね?」
沈黙。
王子たちが固まった。
「……責任?」
「そう」
りなは真顔で頷く。
「せっかく推してくれてんのに、塩対応はマジサゲじゃん」
「しお……?」
「愛想悪いってこと」
レオン王子が少し考え込む。
「だが我々は王族だ」
「うん」
「軽々しく民へ愛想を振りまくのは――」
「いやでも女子たちめっちゃ頑張って盛ってたし」
「……」
王子たちの動きが止まる。
りなは続けた。
「ネイルして〜、髪巻いて〜、“今日王子来る!”って朝から気合い入れてた」
「……」
「ならちょっとくらいサービスした方がよくね?」
レオン王子は、
しばらく黙っていた。
やがて。
「……具体的には?」
「ファンサ」
「ふぁんさ……」
新しい文化が、
また生まれようとしていた。
◇◇◇
「まず笑顔」
「笑顔……」
「あと手振る」
王子たちがぎこちなく手を振る。
「硬っ」
「難しいな……」
「もっとこう、“いつも応援ありがと〜!”感」
「応援……」
ルーク王子が困った顔をする。
「我々は戦場へ出るわけではないのだが」
「いや存在が推されてんの」
「存在……?」
理解が追いついていない。
だがりなは止まらない。
「あと目線」
「目線?」
「ちゃんと相手見る」
りなは立ち上がる。
「例えば〜……」
ニコッ。
軽く手を振る。
「いつもありがと〜」
王子たちが固まった。
「……なるほど」
「え、理解早」
「確かに、相手を認識しているという安心感は重要だ」
「そうそう!」
レオン王子、
意外と飲み込みが早かった。
◇◇◇
数日後。
「きゃああああ!!」
王都が揺れていた。
「今、レオン王子が手振ってくださった!?」
「待って無理死ぬ!!」
「目合ったんだけど!?」
街の女子たちが大混乱している。
以前とは明らかに違った。
王子たちは、
* 笑う
* 手を振る
* 会話する
* ちゃんと相手を見る
ようになっていた。
その結果。
「最近、街の盛り率上がってなくね?」
「わかる〜!」
「推しに認知されたいし!」
さらに女子たちが盛り始めた。
◇◇◇
「……レティシア」
「ん?」
王城の廊下。
レオン王子が小さく笑う。
「最近、民たちが以前より楽しそうだ」
「いいことじゃん」
「……そうだな」
少し前まで。
王族とは、
ただ敬われる存在だった。
でも今は違う。
応援され。
想いを向けられ。
それに応える。
そんな新しい関係が、
少しずつ生まれ始めていた。
「……推される側にも責任、か」
レオン王子は小さく笑う。
「悪くない文化だな」




