12話 盛りたいなら身分なんて関係なくね?
「え、外出!?」
りなは目を輝かせた。
「はい。本日は街へ買い物に」
エミリアが頷く。
「うわ、異世界ショッピングじゃん!」
「しょっぴんぐ……」
最近エミリアは、
知らない言葉を一旦受け入れるようになっていた。
◇◇◇
「うわ〜!」
街へ降りた瞬間、
りなのテンションは爆上がりだった。
石畳。
露店。
パンの香り。
人の声。
「異世界って感じ〜!」
「レティシア様、はしゃぎすぎです……!」
エミリアが慌てて後を追う。
だが。
しばらく歩いたところで、
りなはふと足を止めた。
「……ん?」
「どうされました?」
りなは街を見回す。
人は多い。
賑わっている。
でも。
「……盛れてなくね?」
「え?」
全員、
地味だった。
髪も。
服も。
装飾も。
もちろん、
貴族ほど金はない。
だけど。
(いや絶対もっと可愛くできるじゃん……!)
りなの視線が、
花屋の少女で止まる。
髪は綺麗な茶色。
顔立ちも整ってる。
なのに。
前髪ボサボサ。
リボンもなし。
「……もったいな」
「え?」
エミリアが首を傾げる。
「この街、素材いい人多いのに全然盛ってない」
「そ、素材……」
「なんか下げなんだよね〜」
そんな時だった。
「お姉ちゃん、公爵様の人?」
小さな女の子が、
りなへ話しかけてきた。
「ん?」
「その爪、キラキラ!」
ネイルを見て、
目を輝かせている。
「え、気になる?」
「うん!」
りなはニヤリと笑った。
「……よし」
その瞬間。
――ブワッ。
「街中で始まったぁ!?」
エミリアが叫ぶ。
黄金の光。
神々しい紋様。
通行人たちがざわつき始める。
『創造神スキル起動』
『“誰でも盛れる世界にしたい”という欲求を確認』
りなが固まった。
「……え」
今までと少し違う。
“自分が盛りたい”じゃない。
でも。
胸の奥が、
少し熱かった。
『新規創造候補を解放』
『お手軽リボン』
『キラキラアクセ』
『ワンポイントネイル』
「お手軽って大事なんよ!」
現れたのは、
シンプルなアクセサリーたち。
高価じゃない。
でも。
ちょっとだけ気分が上がる。
「ほら」
りなは少女の髪へ、
小さなリボンをつけた。
「……っ!」
少女の目が、
ぱあっと輝く。
「かわいい……!」
「っしょ?」
さらにりなは、
少女の爪へ小さなラメを乗せる。
「うわぁ……!」
周囲の女の子たちも集まってくる。
「ずるい!」
「わたしも!」
「キラキラしたい!」
気づけば。
小さな人だかりができていた。
◇◇◇
「……見てくださいよ旦那」
露店の店主が呟く。
「最近の嬢ちゃんたち、
みんなリボン欲しがるようになってる」
「ネイル? とかいうのも流行ってるらしいぜ」
「“盛る”ってやつか?」
少しずつ。
本当に少しずつ。
“盛る文化”は、
貴族社会から街へ広がり始めていた。
◇◇◇
「……レティシア様」
帰り道。
エミリアが小さく言う。
「今日のレティシア様、
なんだか少しだけ……」
「ん?」
「楽しそうでした」
りなは少しだけ目を丸くして。
そして笑った。
「……まあ、みんな盛れてた方がマジアゲじゃん?」




