11話 王子なんて推すしかなくね?
「……ねえフィリア」
「はい!」
最近、
フィリアの返事が良すぎる。
王女なのに。
「この国、顔いい男多くね?」
「……へ?」
フィリアがぽかんとする。
りなはスマホを見ながら頷いた。
「いや普通にレベル高いんだが」
この世界、
素材が強い。
女性だけじゃない。
男性陣も普通に顔が良い。
特に王族。
社交会でちらっと見た王子たちは、
完全に少女漫画だった。
「お兄様方のことですか……?」
「そうそう」
「えぇと……」
フィリアが困ったように笑う。
「昔から人気はありますが……」
「いや違う違う」
りなはニヤリと笑った。
「“推し”にすんの」
「推し……?」
その瞬間。
フィリアの背筋に嫌な予感が走った。
◇◇◇
「――というわけで」
「どういうわけですか!?」
「王子たちの写真ほしい」
フィリアは固まった。
「しゃ、写真ですか!?」
「推し活には必要じゃん」
「お、おし……かつ……」
「好きな人を全力で応援する文化」
フィリアは少し考え込み――
「……それは、素敵ですね」
「理解早っ」
完全に染まっていた。
◇◇◇
数日後。
「……おお」
りなは机いっぱいに並べられた写真を見る。
「マジで顔面国宝なんだが」
王子たちの写真。
読書中。
剣術中。
笑った瞬間。
完全にオフショットだった。
「フィリア、有能すぎん?」
「えへへ……」
王女、
ちょろかった。
「よし」
りなはスマホを構える。
「ここにデコ入れて〜」
「でこ……」
「“尊い”っと」
「とうとい……」
「“今日も顔が良い”っと」
フィリアが目を輝かせる。
「すごいです……!」
「っしょ?」
さらにりなは、
写真を小さなカード状に加工する。
「これ持ち歩く用」
「持ち歩くのですか!?」
「推しは常に摂取したいじゃん」
「摂取……」
フィリアの価値観が、
また壊れた。
◇◇◇
その頃。
「……旦那様」
「なんだ」
「最近、お屋敷の女性使用人たちが“推し”という単語を頻繁に使用しております」
「……ふむ」
公爵は静かに頷いた。
「さらに、“王子派”と“レティシア様派”で分かれているようで」
「…………は?」
公爵の動きが止まる。
「ちなみに現在は、レティシア様派が優勢かと」
沈黙。
数秒後。
公爵は静かに口を開いた。
「……当然だな」
「ですよね」
執事長ベルモンドも真顔で頷く。
そして。
二人は無言で視線を動かした。
部屋の奥。
そこには。
『本日のレティシア様』
『笑顔コレクション』
『マジアゲ写真集』
などと書かれた、
謎の棚が存在していた。
「……ベルモンド」
「はい」
「新しい写真はまだか」
「本日分を現像中です」
「急がせろ」
完全に推し活部屋だった。




