10話 どこでも盛りたいならあれしかないっしょ!
「……ねえフィリア」
「はい!」
最近、
フィリアの返事が良すぎる。
王女なのに。
「その“ぷり”さ」
りなは机に置かれたプリを指差す。
『うちらマブダチ!!』
ラクガキだらけの写真。
フィリアはそれを大事そうに抱きしめた。
「はい。宝物です!」
「いや重っ」
「っ!?」
「でもまあ分かる」
りなは笑った。
プリ機は革命だった。
今や屋敷だけじゃない。
社交界の令嬢たちまで、
* 「次のお茶会で撮りません?」
* 「盛れる角度はこちららしいですわ」
* 「小顔補正とは一体……」
とか言い始めてる。
(……いや広まりすぎでは?)
そんな時だった。
りなはふと思う。
「……でもプリってさ」
「はい?」
「持ち運べなくね?」
「……?」
「もっとどこでも撮れた方が良くね?」
その瞬間。
――ブワッ。
「来ました……!」
フィリアが若干テンション高めに言った。
黄金の光。
神々しい紋様。
もう誰も驚かない。
『創造神スキル起動』
『“どこでも盛りたい”という欲求を確認』
「このスキル、マジでギャル寄りなんだが?」
『新規創造候補を解放』
『スマートフォン』
『カメラ機能』
『写真加工』
「加工まであんの!?」
空間が歪む。
現れたのは、
薄く四角い黒い板。
「……スマホじゃん」
「す、すまほ……?」
フィリアが不思議そうに覗き込む。
「これでどこでも写真撮れる」
「どこでも!?」
「しかも盛れる」
「盛れるのですか!?」
フィリアが食いついた。
完全に染まっている。
「ただ〜……」
りなはスマホを操作する。
圏外。
「電波ないからほぼ使えん」
「で、でんぱ……?」
「まあ気にしない気にしない」
りなはカメラを起動する。
「ほら、フィリア」
「は、はい!」
「もっと寄って」
「こ、こうですか……?」
「硬っ」
カシャ。
「おお〜」
すぐに写真が表示される。
「えっ!?」
フィリアが目を見開いた。
「もう映っております!?」
「しかもほら」
りなが画面を操作する。
キラキラ。
肌補正。
ほんのりラメ。
「……っ!!」
「盛れすぎでは!?」
「スマホってマジ革命なんよ」
フィリアは、
目を輝かせながら画面を見る。
「ぷりとは違うのですね……」
「プリは“特別感”あるじゃん?」
「はい!」
「スマホは日常って感じ」
どこでも撮れる。
何気ない瞬間も残せる。
それはこの世界には、
まだなかった文化だった。
◇◇◇
「レティシア様!!」
翌朝。
恒例となったメイド長突撃。
「今度はなに!?」
「令嬢方が“自撮り”を始めました!!」
「もう広まった!?」
「さらに、“盛れる角度”の研究会が開かれております!!」
「研究会!?」
「あと王女殿下が廊下で突然“ぴーす”を始めたと王城から苦情が……」
りなは静かに天を仰いだ。
「……革命、起きてんなぁ」




