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空白の英雄譚  作者: りゅりょ(仮)
第1章 未熟
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第1章 7話 宛もなく

〜少女目線〜

「はぁ⋯はぁ⋯はぁ⋯うぅ」

少女は日頃から運動をする性格ではなかった為、セフィルを追い掛けているとすぐにバテてしまった。


― さっきの子、こっちに行ったよね⋯?


少女は森の方向を向いてそう思い、息を切らしながらも歩き出す。


― でも⋯こっちは⋯⋯


森に入る数歩手前で歩みを止めた。

不安。少女の心はそれで満たされていた。

自分の知らない、未知の領域に踏み入る。そこまでして追い掛ける道理は無い。

少女は手に持った物に目線をやる。

メモ帳だ。

それも、何かから切り取って作ったような不格好なものだった。

自分で作ったのかな。という考えが少女の頭の中に浮かぶ。


― 落とし物⋯⋯届けなくちゃ。


落とし物を届けるという考えと、入ってはいけないという考えが頭の中で交じり合う。

覚悟を決めていざ一歩、虫にびっくりする。

少し道を変え、森へと踏み入る。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


一歩、また一歩、周囲を見渡しながら恐る恐る歩いていく。

しかし、見渡すには身長は不十分で、周りに見えるのはほとんどが背の高い草だけだ。

「どこに行ったんだろう⋯⋯」

歩いて、歩いて

まだ明るい空に見下されているような緊張感と歩いていく。

普段あまり外に出ない所為か、歩く度に疲れと怠さが少女の体の内を蝕む。

木漏れ日に照らされ、暑さで汗が頬を伝う。

足下も悪く、道も分からないまま、ひたすらにこの森のどこかに居る筈のセフィルを探して歩く。

苦しい。息を切らしながら肺を痛ませる。

「はぁ⋯はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯⋯」

少し落ち着くため、歩みを止め、メモ帳を持った手をそのままに両手で膝に手をつく。

数秒後、生唾を飲み込み、再び足を前に出す。

本当に見つけられるのだろうか。そんな思いを抱きながら。

歩く。歩く

時の流れが遅く感じる中、歩き続ける。

鳥の羽ばたく音、葉を踏む音がいつもより大きく聞こえる。



少し休めそうな所に出た。

横に大人三人は寝られそうな狭さだが、今は一人なので丁度いい。

少女は木陰に座り込み、目線を斜め上へ、空を見返しながら息を落ち着かせる。


― 喉渇いたなぁ⋯⋯


森に入る前に水分を取ってきていないため、激しい喉の渇きに襲われる。

水が欲しい。水、水、みず


― 本当に居るのかな⋯この森のどこかに⋯⋯


帰りたい。帰って休みたい。という気持ちをぶつける宛もなく、森の中ただ一人不安に暮れる。

と、その時奥の方からガサガサと音が鳴り、少女は目線をやる。

同時に鳥たちが、一斉に飛び立つ音がする。

奥の音は着実に、ゆっくりと近づいてくる。

背の高い草を掻き分ける音。


― さっきの子かな⋯⋯


少女はゆっくりと立ち上がり、音の鳴る方向へ一歩踏み出す。

こちらから声をかけようにも、緊張で声が出ない。

なにせ、初対面で逃げられたのだ。

心臓の鼓動が大きくなる。

「⋯⋯ぁ⋯⋯ぁぁ⋯ぁあの⋯⋯」

緊張で声を震わせる。

応えたのは風だ。

身震いしてしまう程の風。

その風は草を除け、風の主の正体を見せる。

出てきたのは獣だ。体長は2mを超える程の獣。魔獣というやつだ。

魔獣は身に風を纏い、周りの草葉を巻き上げる。

「⋯ぁあ⋯⋯⋯」

少女は再び声を震わせる。

今度は緊張という生半可な感情故では無く、恐怖そのものである。

「⋯―⋯」

少女の立った姿勢は後ろに崩れ、悲鳴を上げようとするも、声にならない声となり、空気だけが口から漏れ出す。

「※※※※※※※―※※※―――※」

魔獣が轟音と呼ぶに相応しい程の咆哮を上げる。

咆哮は、耳にするのには不快感が強すぎる。

頭に直接響く高音と低音の混じるような音が少女の恐怖心を掻き立てる。


― 怖い、怖い、怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


少女はうずくまり、俯き耳を塞ぐが、高音は未だに少女の頭の中を駆け巡る。

耳鳴りだ。

先程聞いたはずの高い音は、轟音故のものだろう。

少女が恐怖で目を瞑るとともに涙が溢れる。


― 嫌だ。死にたくない⋯⋯まだ⋯⋯⋯⋯まだ死にたく⋯⋯⋯


その時、左側からまた違う音がした。

獣ではない。

小さな音。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


〜セフィル目線〜

声?

ん、声か?

うん、きっと声だ。

声とは思えないくらいの音だったけどきっと声だ。

「何⋯?今の」

「さぁ⋯⋯」

そんなの僕に聞かれたってわからない。まあ、僕は声だと思うが。

それにしても何の声だろう。

⋯⋯気になるなら行こう。

うん。迷ったら行く。それが僕なのだ。

「行ってみよう」

「え?」

え?って⋯⋯え?

逆に行かないの?

気になるじゃん。行かないの?じゃあ僕だけで行くよ?

「気になるじゃん。行かないの?」

「⋯⋯⋯⋯行くけどさぁ⋯」

良かった。じゃあ行こうか



音のした方へ歩いてちょっとした。

たしかこっちから聞こえたよな⋯

ここらへんは僕も来たことがない。

あぁ、どうりでこんなとこ見たことない訳だ。

草高すぎ。なんだこれまじ、ありえん

帰ろうかな。

いや、ここで帰ったら何の音だったのか気になって夜しか寝られなくなる!

僕は背の高い草を掻き分ける。

お、出たぞ!多分ここ⋯だ⋯⋯

僕の前には、うずくまっている女の子となんか凄い奴が居た。

ん、なんだこれ?

というかあの女の子さっきの村長の家の時の!

⋯⋯あ、あれ僕のメモ。いつの間に!?

いやいや、それよりこの状況は⋯⋯

もしかして結構ピンチ?

待て待て、状況を理解しよう。

えーっと?目の前の⋯⋯動物?あ、これ多分魔獣だ。うん。そうだとして、それを目の前にうずくまっている女の子。

そして僕たちを交互に見てご丁寧に待ってくれている魔獣(仮)と⋯⋯⋯

あれ?

これ僕とジークもまずいのでは?

初 他人目線タイトルに初 他人目線です!


追記 咆哮は表現できないものとして使うので、そう見てください。別に魔獣やら何やらの声としての表現だけに使うわけではありません。


それはそうと、気になるところで切ってしまってすみません!

続けて書くと投稿が遅れそうだったので一旦切らせていただきました!

頑張って早く投稿します!

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