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空白の英雄譚  作者: りゅりょ(仮)
第1章 未熟
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第1章 8話 ちっぽけな一撃

やばい。どうしよう。時間が過ぎていくほどピンチを実感する。どうしよう

もう魔獣にも見つかってるし、こうなってしまった以上自分だけ逃げる、という訳にもいかない。

ジークは凄く強張った顔をしている。

だったら選択肢は一つ、助けるしか無い!

「ジーク、助けよう」

「ぼくもそうしたいけど⋯どうやって?」

確かに⋯⋯どうする?

こんな時、どうすれば⋯?

そうだ!

⋯でも、そうしたらジークは、どうするんだ?

いや、迷ってる暇は無い!

「ジーク、それ貸して」

「え、え?あぁうん」

僕はジークから剣を借りる。

くそぅ、僕はこんな時に武者震いなんて

「僕が時間を稼ぐよ。ジークはその子をお願い」

「え、でも⋯」

「いいから!」

ジークから見た僕は酷く震えていただろう。

僕自身も、正直格好悪いと思う。

言葉も震えているはずだ。

でも、旅に憧れた人間はこんな所で止まれない!

僕は飛び出して魔獣の前に立つ。

ジークも速足で少女のもとに駆け寄る。

魔獣を間近で見るとものすごく迫力がある。

手が震えて力が出ない⋯

あ、泣きそう。いやいや、男にはやらんねばならない時もある!

せめて、二人が逃げるまで時間稼ぎを⋯⋯

そして二人が逃げたら僕も逃げる!

くそぅ、やってやるぜこんちくしょう!

僕は剣を持った右手を左手で握るように覆った。

足は肩幅に開き、準備万端だ。いつでも来い!

「※※※※※―※※」

魔獣が咆哮をあげた。待って無理

やっぱ無理

あぁ、無理ですぅ

そういうの、やってなーい。

⋯て、言ってる場合では無いんだよぉぉぉ!

でも、別にbbbbbビビってる訳じゃないし?

や、やってやる。

相手は武器を持ってないし、こっちが有利なはず。

勇気を⋯振り⋯絞れぇぇぇぇい!!!!

僕は震える足で地面を蹴る。

剣を持った手は右上へ振りかぶる。

きっといけると信じて⋯⋯剣を振る!

僕が剣を振ると、切れたのは魔獣ではなく、剣だった。

魔獣の身に触れる前に、纏った風のようなもので刀身は半分から上が折られる。

あぁ、これ⋯⋯⋯⋯終わったなぁ

その瞬間、僕の動きが止まる。

「すぅぅぅぅぅぅぅ⋯⋯⋯⋯⋯意外と話し合えたり、しないですかね?」

「※※―――※※※※※※※」

意外と話し合える訳もなく、帰ってきたのは咆哮だけ。

うん、知ってた。

やばい。冷や汗だらだらだ。

なんか、右手⋯右前足か?右手か。

なんか握り拳作ってるんだけど、これってやば――⋯

次の瞬間、僕は全身を打ち砕くような一撃を受け、なにか砕ける音とともに飛ばされる。

――い⋯っ!

飛ばされたあと、すぐに何かにぶつかる。

あ、これ⋯⋯―ばい⋯や⋯―


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


〜ジーク目線〜

「ジーク、それ貸して」

唐突にそんな事を言われたジークは少し戸惑って言う。

「え、え?あぁうん」

ジークは動揺しながら咄嗟に返し、持っていた剣を渡す。

「僕が時間を稼ぐよ。ジークはその子をお願い」

「え、でも⋯」

「いいから!」

ジークから見たセフィルは、酷く震えていた。

だがそれを見て、自分の命を捨てるような真似をしてまで人助けをしようとする姿に、応えようと思った。

飛び出したセフィルを追うようにジークも飛び出し、少女のもとへ駆け寄る。

「立てる?」

「⋯ぅぁ⋯はい⋯⋯」

「時間を稼いでくれている間に逃げよう」

少女は泣いていて、不安でいっぱいの顔だった。

少女の背中を押してセフィルを背に歩く。

少女に無理をさせないよう、一歩ずつ

「※※※※※―※※」

後ろで魔獣が叫ぶ。

少女がそれに反応し、体をビクつかせる。

少しずつ、少女に合わせて一歩ずつ歩く。

セフィルの無事を願いながら少女に気を使う。


― ここまで来たら⋯⋯


「―――――――――」

「※※―――※※※※※※※」

セフィルの声と思われるものの後に、魔獣の咆哮が聞こえる。

その声に少女はまたしてもビクついて涙を溢れさせる。

「だ、大丈夫だ!きっと⋯⋯とりあえず、ここで待ってて」

ジークは振り返り、セフィルのいる所に駆けつける。


― 無事でいてくれ⋯!


すぐに駆けつけたジークの目に映っていたのは、顔をセフィルの方に向け佇んでいる魔獣と、突き飛ばされたように木のもとで倒れているセフィルだった。

「⋯ぁ――」

魔獣はジークに気づきこちらを向く。

その迫力に思わず身構える。

「嫌だ、来るな⋯⋯」

ジークにはセフィルのような勇気なんてない。人の為に命を掛けるなんてもっての外だ。

「く、来るなぁぁ!!!」

ジークが叫び声を上げた時、後ろから手を置かれる。

ジークはそれに気づき、振り向く。

同時に、手を置いた人物が横切っていく。

ジークは顔を見ようとするが、ボロボロのローブにフードを被り、顔は見えない。

その人物が魔獣の前に立つと、魔獣は右足を後ろに一歩下がり構える。

右手で握り拳を作り、フードの人物に殴りかかる。

赤。振り下ろした手は、肩から下が一色に染まっていた。

血だ。

やがて魔獣の血は弾け、辺りを点々と染めていく。

弾けた血はジークにも飛び散る。

それと同時にジークは腰を抜かす。

「※※――※⋯⋯!」

魔獣は突如として弾けた右腕を抑え、足をふらつかせる。


― なんだ⋯⋯これは⋯⋯⋯


フードの人物は、魔獣に右手を開いて向ける。

その瞬間、魔獣の体は変形していく。

やがて変形した体は血潮となり辺りを鮮血で染める。

ローブの人物が、前に出した右手を閉じる。

すると、その人物の何かが強まる。

ローブの人物は、右手をそのままにセフィルの方を見て、歩いていく。


― まずい⋯今度は何を⋯⋯!


ジークは口を開くが、声が出ない。

何かすれば何かされる。

そんな思いがジークの頭を瞬時によぎる。

セフィルに近づいたその人物は、セフィルに向け、閉じた手を広げる。


― こっちに来る⋯!


次はジークの方に寄ってくる。

一歩一歩、着実に

ローブの人物はジークの目の前に来ると、屈んで言う。

「次はこんな所に来たら駄目だよ」

そう言うと、再び立ち上がり、来たであろう道を戻っていく。


― あいつは⋯⋯なんだ⋯?⋯⋯あ、それより⋯!


ジークはセフィルに駆け寄り、セフィルを背中で抱き上げる。


― 重⋯!


ジークはよろつきながら少女の居る方へ歩いていく。

ちょっとずつ、踏みしめて歩く。

「⋯⋯大⋯丈夫⋯?」

「あぁ、うん」

少女が顔を出して言った。

その言葉に、ジークが安心させるため応える。

「⋯⋯帰ろう」

ジークが少女の目を見て言うと、少女は小さく頷く。

帰路に着く背中は皆、静かだった。

三人称を書いてたのでセフィルくん忘れかけです。ちょっと変かも⋯

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