第1章 3話 ついに⋯
あれから1ヶ月が経った。
ジークとは、相変わらず微妙な関係である。
そして僕も、相変わらず本が読みたい。
そんな事より、今日は僕の誕生日だ。
ふふふふっ、やったね!
今から夜が楽しみだぜ。
またしても森に来た。
夜まで暇なんだよなぁ。
誕生日だからといって1日特別な日という訳では無いのだ。
さてさて、いつもの草原で時間でも潰しますか。
僕は昼寝に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夕暮れ時、僕は早めに帰路についた。
今日は父さんも早めに帰ってくるらしい。
そういえば、文字を読みたいとしか言ってないけど、どうするのだろうか。
直接教えてくれるのか、教材でも買ってくれるのか。
教材はお高いらしいし、やっぱり直接教えてくれるのかな?
どっちでも嬉しいけど。
そんなことを考えていると、森を抜けた。
辺りを見渡すが、ジークはいなかった。いつもはでかい木の近くに居るのだが。
「誕生日くらい祝ってくれよ⋯」
僕は少し落胆したが、よく考えると誕生日を教えてないことに気がついた。
「ただいま〜」
家に帰ると、灯りが灯っていなかった。
父さんはまだ帰ってきてないのだろうか?
早めに帰るって言ってたのに⋯
そう思いながら、僕は居間に足を運んだ。
「誕生日おめでとう。セフィ――⋯!」
「うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!⋯あれ、父さん?」
すごくびっくりした。
暗闇から急に飛び出してきたのだ。
そんなの誰でも驚くに決まってる。
そして、父さんも少し驚いた様な表情をしている。
驚かしてきたのそっちでしょうが!
あ、いや⋯サプライズしようとしただけか?なんかごめんなさい。
「き⋯急にでかい声をあげるな、驚いたぞ」
「えっと、ごめんなさい」
こっちだって心臓バックバクだ。
誕生日なのに死ぬかと思った。
「俺もすまないな。驚かせる気は無かったんだがな。別の意味で」
少々やかましいが、僕はスルーする事にした。
今日の夜ご飯は、いつもと何ら変わらない。強いて言えば、豪華なチキンがある。僕にとってはそれだけで満足なのだが、このあと本命がある、楽しみだ。
とりあえず食べよう。
「いただきます!」
「改めて、誕生日おめでとう。セフィル!」
夕飯を食べ終わったあと、僕はずっと待ち侘びていた物を目にした。
そう、教材だ。
これでやっと、あの本を読めるのだ。
「ありがとう。父さん!」
嬉しい。ようやく文字が読めるようになるのだ。
「そういえば、セフィル。この間言ってた本ってなんだ?」
「えっと、ちょっと待ってて」
父さんが本の事を聞くと、僕は部屋に行き、本を持ってくる。
「これだよ」
赤い本、薄暗い部屋に置いてあった物だ。
「⋯!」
父さんは驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで言った。
「懐かしい本だな。こんなのどこから見つけてきたんだ?」
「えっと、あそこ」
僕は薄暗い部屋を指さして言った。
「そんなとこ入ったのか?」
「うん」
父さんの問いに、僕は答えた。
「これなぁ、俺が若かった頃、買ったんだよ〜。でも結局文字も読めないし、昔は買って後悔したな」
なるほど、自業自得というやつだ。と言っても、父さんが本を買っていなければ僕は文字を知りたいとも、本を読みたいとも思わなかったのだ。そこら辺は若い頃の父さんに感謝しなくては。
ありがたや〜
僕は部屋で早速教材を開く。
教材の種類がいくつかあり、重かったので運ぶのに疲れた。
まとめて運ぶには力をつけないといけないな⋯う~んめんどくさい。
いや、今はそんなことどうでもいい。
さて、始めますか!
飽きた⋯
初日でもう飽きたぞおい、どうする。
でも続けるって決めたし、頑張るか。
僕は再び教材に手をつけた、頑張るとする。
布団の中からこんばんは!僕は今ぬくぬくしている。
え、文字?諦めようと思うよ。
あんなの無理無理、できない。
正直僕には向いてない。
ダト字?ドト字?どっちか1つでいいだろ!
あ、ちなみに、一文字ずつ意味と発音は同じらしい。
⋯はぁぁ?尚更1つでいいじゃん!
でもまあ、せっかく買ってもらったし⋯
明日から頑張ろう!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
おはよう世界、僕が目覚めたぞ!
さーてと、起きて勉強を⋯する前に、やる気を出さなければ。
まずは身の回りの片付けだ。片付けるほど物はないが、気にしない気にしない。
僕は大して散らかってもいないが、適当に片付けた。
「よし、始めよう」
⋯その前に、軽く運動してもっとやる気を出そう。
さてやるか。えーっと?まずはダト字からだね。
ダト字は基本的に丸っこく、どれも点がついているらしい。
形が似ているものもあるので、少し覚えづらい、こまった。でもやるしかない、やると決めたからにはやるのだ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
多分30分くらい経った。
ダト字をそれぞれ10回ずつ書いて、だいたい覚えた。とは言っても、それは手本を見ながらである。
まだ手本を見ずに全て書ける自信は正直無い。
とりあえず一旦見ずに書いてみよう。
僕は教材を閉じ、端に寄せ一つ一つダト字を書いていった。
「えーっと、なんだっけ」
10個目でつまずいた。わからないところは、後回しでいいや。次だ次
僕はわからないところを後回しにして書いていった。
51個中24個が分からなかった。
半分、半分だ。半分がわからない。先遠くないか?
逆に考えると、あと半分覚えればいいのか。そう考えると、案外もう少しなのかもしれない。うん、そう考えたほうがいい、そう考える事にしよう。
「あと半分頑張って覚えよっと」
その前に、一度本を読んでみよう。
1ページくらいなら読めるかもしれない!
さあ、それじゃあ早速、表紙は読めない。多分ファラ字と言うやつだ。
僕はまだ知らない、つまり読めない。当たり前だ。
僕は表紙をめくり、1ページ目を読み始めた。
❑❒❑❒❑❒❑❒❑❒
むかし、あるところに、⋯⋯の⋯がいました。
⋯は、⋯⋯に⋯ばれて、⋯⋯に⋯きました。
❑❒❑❒❑❒❑❒❑❒
僕は読むのを中断し、ページを見つめたまま、ため息をついた。
うん⋯読めないな。いや、一応読めてはいる。ダト字だけは分かる。
それ以外はさっぱり分からない。
これじゃあ、なんて書いてあるのかわからない。
早く読めるようになりたい。
先にファラ字からやろうかな。
いや駄目だ。一度ダト字からやると決めたからにはやらなければ!
本当はそんな事決めてないが、まあ気にしないでおく。
僕は端に置いてある教材を目の前に持ってきて開いた。
さて、ダト字全部覚えるぞ!
僕はもう一度本に目をやった。
絶対に、読めるようになる。




