第1章 2話 本読みたい!
夜、僕は眠れなかった。
なぜなら、今日見つけた本がとても読みたいからだ!
ねぇ読ーみーたーい〜。気ーにーなーる〜!
僕はベッドの横に置いた本に目をやった。気になる気持ちをぐっとこらえて目を閉じた。
結局5分くらい耐えたけど駄目だった。
今の僕は誰にも止められない!
暗い部屋の中、本を手に取り表紙をめくってみた。
もしかしたら中に書いてある文字は読めるかもしれないと思った。
1ページ目には、表紙と同じ文字が書いてあった。これは読めない⋯
そしてページをめくると、文字が読める⋯わけがなく、何が書いてあるかさっぱりわからない。
希望を捨てきれず、ページをめくり続けた。
すると、ページ片面に絵があった。
これが俗に言う挿絵か⋯⋯
絵には、剣を背負った男が街から外に出る絵が描かれていた。きっと冒険の始まりだ。ワクワクするね。
そこから僕は、挿絵のあるページを探してページをめくり続けた。
次の挿絵では、男が剣を空に突き出している絵が描かれてあった。
次々にページをめくっていると、だんだんと眠気が襲って来た。あぁ⋯意識が遠退いていく⋯
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝起きると、本を読みたいという気持ちは、薄れていた。
人は一晩寝ると意外と冷静になれるものだ。
「⋯⋯」
やばい。本のことを思い出すとだんだんと読みたくなってきた。
何か気を紛らわせたいところだが。
「う~ん⋯」
よし、外に行こう。
そういえば、父さんはもう村の外に狩りに行ってしまっただろうか。となればやることは1つ。森に行こう!
道中、昨日川で見つけた結界石が綺麗だったので拾ってみた。
結界石には、何かの印が描かれていて、光り輝いていた。持って帰りたいくらいだが、名前に結界って付いてるし、たぶん駄目だ。元あった場所に戻そう。そんな事より森に行こう。
森に入って少しすると、大きめの木の枝と小さめの木の枝が落ちていた。なんだろう⋯すごく振り回したい気分だ。木の棒を持つと振り回したくなるのが僕だ。
僕は大きめの木の枝を持つと、昨日見た本の挿絵と同じく、剣を空に突き出すポーズをとった。
「重⋯!」
僕には少し重すぎた。とりあえずせっかく拾ったので、振ってみる事にした。
「よいしょっと⋯」
木の枝を振り回すと、1振り目で転んでしまった。棒を振るつもりが、棒に振られてしまった。そして手が痛くなった。
僕は大きめの木の枝を地面に置き、おとなしく小さめの木の枝を手に取った。
枝で木をカンカンと叩きながら歩いていると、昨日の草原に着いた。
さて、何をしよう。
とりあえず森のルートを把握するために戻るか。
僕は再び森に入った。
木をカンカンと叩きながら、森の中を往復し始めてしばらく経った。
ある程度道は把握したし、草原に戻るか。
草原に戻ると、さっきと同じ景色が広がっていた。
風が草を揺らして、音を立てる。
空は高くて、雲がゆっくり流れていた。
「⋯⋯やっぱりいい場所だな」
森の中なのに、ここだけぽっかり開けている。
誰にも見つからないし、静かだ。
僕はその場に座り込んだ。
しばらく空を見上げていると、ふと昨日見た本の挿絵を思い出した。
街を出ていく剣を背負った男。
「⋯⋯旅か」
僕はなんとなく、その言葉を口にしてみる。
村の外には、どんな場所があるのだろうか。
森の向こう。
もっと遠くの街。
まだ見たこともない景色。
空の色も違うかもしれない。
「⋯⋯いつか行ってみたいな」
僕は手に持っていた枝を地面に突き立てた。
「よし」
今はまだ無理だけど。
大人になったら僕も旅に出よう。
そう決めると、なんだか少しだけワクワクしてきた。
アガるぜ。フッ
さて、今日は早めに帰ろう。
帰り道 村の真ん中にあるそこそこ大きな木を、木の枝でカンカンと叩いている少年がいた。
ちょっとあんた分かってるじゃないのよぉ~
すると、少年がこっちを向いてきた。
やべ、目合った⋯っ!
僕は咄嗟に目を逸らした。
少年はこっちをじっと見ている。
⋯⋯なに?なんでこっち見てくるの?怖い怖い怖い。なになに?本当になに!?
賭けに出てみるか⋯?よし、やろう。
「えっと、こんにちは」
「あ、こんにちは」
僕らは、なんだかぎこちない挨拶を交わした。
「えっと、僕はセフィル。よろしく。君は?」
「僕は、ジークだ。よろしく」
おぅ、かっこいい名前だ。すごい!
ジークは少々戸惑いながらも、自己紹介をした。
相手がいきなり自己紹介をして「君は?」とか言われたらそりゃ戸惑いますわな。すんません。
「えっと、何してるの?」
「別に、何も」
なんだか避けられているような気もするが、初対面ならこんな感じだろう。決して避けられてない。うん。絶対に避けられてない。
⋯⋯避けられてないよね!?
それから僕は、気まずい空気だったので、雑な言い訳ですぐに撤退した。
嫌われてないといいけど、まあ大丈夫だろう。
また次に会った時、謝ればいいのだ。
うん。きっと大丈夫。そう大丈夫。
さて、暇だな。何しようかな。
夜までまだまだ時間はあるし⋯
せっかく帰ってきたけど、もう1回外にでも行くか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
暗くなってきたので、帰ってきた。
ジーク君はもうあそこに居なかった。
若干の安心感と罪悪感があるが、人間関係は時間が解決してくれるのだ。
さ、ご飯食べて寝よ。
うーん⋯なぜか夜になると本が読みたくなってくるぅぅぅ。
この現象に名前をつけようか。
そうだな。どうしよっかな。
僕は少し考えた。脳みそをフル回転させて考えた。それはもう考えに考えた。
はっ!思いついた。思いついたぞ!
本ヨミタクナールと名付けておこう。これは僕の数少ない知識を絞り出した結果である。センスどうこうは考えないでおこう。
「⋯⋯はぁ」
名前をつけたところで、読めないものは読めないままだ。
僕は枕に顔を埋めた。
誕生日まであと1ヶ月か。長いなぁ。
僕はそんな事を考えながら、ゆっくりと眠りに落ちた。
「はっっっ!」
僕、起きました。
いい朝だ。別に普段と変わらないけど。
それはそうとして、今日で誕生日までちょうど1ヶ月になった。やったぜ。
ちょうど1ヶ月となると、急に短く感じるのはなぜだろうか。
そういうものだと思って考えないでおこう。僕は難しいことを考えると逆に何も考えられなくなるのだ。
多少なら難しくても考えられるけども、すごい難しいものとなるとやっぱり無理よね。昇進あるのみであるのう。
さて、そろそろ起きなくては。
外に来ましてよ。
昨日なんか避けられた気がしたし、会ったら謝って⋯
「あ」「あ」
まずい。早速会ってしまった。
謝ろうにも、いざ謝るとなるとめちゃくちゃ緊張する!
だいたい何をどう謝ればいいんだ!
そもそも僕謝るようなことしたっけ!?
そーーーだぁ。いったん冷静になろう。
冷静になって考えれば、何か思い浮かぶはずだ。
⋯⋯⋯。
何も思いつかない⋯!
いや待て。こういうのは何でもいいからなんか言うんだ!できる!できる!できる!
「昨日の僕、怪しかったよね!ごめん!」
僕は何を謝っているだろう。
「あ、いや、全然怪しくなんか⋯うん⋯⋯」
なんでだんまりするのぉぉ!?
何?やっぱり怪しかった?だんまりするくらい怪しかった!?僕そんなに怪しくないよね!?ね!?
「ぜ、全然怪しくないよ」
嘘だよね?嘘だよね!だってさっきだんまりしてたもんね!!!!!!
そーーだよねーーー!
昨日僕あんなだったもんねぇぇ!!
ま、まあいい落ち着け。落ち着け。
ふうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ...
よし落ち着いた。
それよりどうしよう。めっちゃ微妙な空気感になってるんですけどぉ。どーすんのこれぇ。
とりあえず、何も言わないと始まらないよね。
「えっと、今から森に行くんだけど、一緒に行かない?」
言えた!そう、僕は言いたいことはちゃんと言える人間なのだ。
「え、でもみんな行ったら駄目って――⋯」
「いいのいいの」
僕はジークの言葉を遮って言った。
別に帰れるからいいのだ。
結果よければすべてよしってね。
森に来た。
ジークは、なんだか不安そうにしているが、僕は余裕である。頼ってくれても良いのだよ?ジーク君。フハハハハハハハ
お、着いた着いた。
草原に着くと僕は、大きく深呼吸をする。
遠くに獣の影が見えた。
この間の猪ではないことを祈りたい。そして絶対にこっちに来ないでほしい。
僕がそんな事を考えていると、獣は森の向こうに去っていった。ふぅ、良かった良かった。
僕は草原の中心に行き、座り込んだ。
「こっち来なよ」
僕がそう言うと、ジークは隣に座った。
「やっぱりいい場所だよね。ここ」
「え、うん」
あ、ジークははじめてここ来たのか。
気まずっ、どう会話繋げようかな。
喋ること無いな。
僕は考えた。それはもう脳みそをフル回転させた。
⋯あ、本!
「ジークって、その、本って持ってる?」
「持ってない」
終わった。もう何も思いつかない。
僕とジークは、終始無言に終わった。
そして僕は本が読みたくなった。
⋯⋯今日はもう帰ろう。
第2話目です。個人的に早めに完成できたと思ってます。何も考えず書き始めたので、1話目を完成させるまで数週間掛かってましたから、倍以上早いです。
誤字脱字があれば直します。




