第二章12 探し物はまだ見つからない
そうして、クリーオンに向けて俺は突き刺した。
もちろん、壊れていない甲殻に向けてやったとしても勝率は低い、なら、星華さんが削いでくれた場所にやれば?
多分、勝てるような気がした。
本当にそれだけだった。
その攻撃の、結果は。
「やったの?透さん?」
やめて、その言葉をやめてくれないですか?星華さん!?
その言葉は王道なんだよ、負けたりとか死亡したりするフラグとしてかなり有名なんだよ。
この世界にもそういうフラグみたいなやつがあるのかは俺の知るところではないが、こういうのはどんな世界でも共通のものだと思うんだよね。
だけど、だ。
どうやらそんなフラグがあったとしてももう起こってしまったことはかわらない。
俺の目の前にいたクリーオンは本当にピクリとも動かなくなっていた。
そして、それはつまり俺の勝利、クリーオンが倒されたことを証明していた。
「はい、やりました。星華さん」
そう言っている透の表情は少し、苦笑いのような雰囲気も出ていたが、それ以上にスッキリとした雰囲気が出ていた。
「いやー、私の魔法で決め切れなかった時はどうなるかと思ったよー。あれは完全に決めたと思ったから驚いたよ。だから本当に君が決め切ってくれて良かった。」
「あはは、偶然ですよ。」
そう、本当に偶然なのである。
あの時、たまたま今までの戦いを思い出して、その中でも今使えた戦い方を思い出したから、それでやっと倒せた。
それに
「星華さんの魔法があったからこその結果ですよ。俺一人だったら、絶対あんな状況を生み出すことができなかったわけですし。だから、星華さんのおかげですよ。」
まあ、とにかく今はこの勝利を喜ぶべきだろう。
少なくとも、星華さんは。
ん?俺はどうするのかって?
そりゃもちろん、こいつを倒さなければならない理由のものを探すためである。
「どこだ?どこにあるんだ!?砂水晶石?」
そう!こいつと戦う時、いやこいつと遭遇する時の原因は支配者にお願いされていた砂水晶石を探して、見つけて、持って帰るためなのである。
こいつには水晶みたいな部位があったわけで、地図にも鉱石を手に入れることができそうな場所はなかったから、こいつが持っていなければ、こいつのドロップアイテムでなければ俺はどうやって探せばいいのかわからない。
まあ一応支配者が提供してくれた情報が誤情報という可能性も無きにしも非ずだが、俺はその可能性を捨てている。
だから、俺は必死にクリーオンを倒した場所の周辺を探し回っていた。
「ええ?透さんどうしたの?急にクリーオンを倒した場所の周辺を荒らしだして?え、もしかして目を失った八つ当たり?そういう、人なんだ。」
最後の一言は透には聞こえなかったらしい。
都合の良い耳である。
「あー、いや別に八つ当たりとかじゃないんですけど。まずまず、俺がクリーオンと戦うようになった理由はクリーオンのドロップアイテムだと思われる砂水晶石を手に入れるためなので。その、なんていうか同じ日に何度も戦いたい相手ではないので、できれば1匹で落ちてくれたらいいなって。」
「あはは、確かにねー。そんなに何度も戦ってたら透さん今度こそ両方の目を失っちゃうかもだしねー。」
「そんなことを気軽に言わないでくださいよ。」
「ごめんごめん。で、どうなの?砂水晶石見つかった?」
「いえ、まだ見つかってないだけです!」
そうだ、まだちょっとしか探してないんだ。あるはずなんだ、絶対に、あるはずなんだー!
それからどれくらいが経っただろうか?
10秒?それとも1分?それとも10分?わからないがそこそこ探したのだが。
「見つからないです……」
「そっかー、残念だね。それじゃあまた戦おうか?そうすればいつかは出てくると思うけど。」
うーん、正直なところクリーオンから出てくる確信はないんだよな。
それに星華さんを付き合わせるというのはあまりよろしくない気がする。
だとしたら、今日はそこそこ長い間冒険したわけだからそろそろお開きにするというのもありかもしれない。
「星華さん、そろそろいい時間になってきたので今日はもう終わりにしませんか?」
「うーん、それもいいと思うけど。本当に君はそれでいいの?なるべく早く砂水晶石を手に入れたいんじゃなかったっけ?」
「急いでいないといえば嘘にはなりますが、わざわざ無理してまで急ぐようなものではないと思うので。それに、支配者にも俺が安全に何事もなく帰ってきたことを見せて安心してもらいたいという気持ちもあるので。」
「確かに、君の主はかなり君のことを心配していたからね。安心して欲しい気持ちがわかるかも。」
「ということです。今日はもう終わりましょう。」
「わかったよー。」
この会話の後に、透と星華の連合を組んでから初めての冒険は終わりを告げるのだった。
帰り道でも軽い会話をしながら透達はギルドに戻って行った。
ギルドに戻ってきた透はなぜか奇妙な安心感のような脱力感のようなものを感じていた。
初めて自分以外の人と冒険を普通の流れですることになって、その同行している人とともに無事に帰ってくることができたおかげだろう。
そして、ステータスを測ってもらう時に、「それじゃここからは別行動にしようか」という星華さんの問いに頷き、「わかりました」と言って星華さんとは別れた。
というか俺にしては珍しくレベル上昇条件を達成したのにそのことを今の今まで忘れていた。
もしかしたらそれこそいいスキル、できればデメリットのないような武器スキルが手に入るかもしれない。
そんな淡い可能性に希望を感じながら、透はギルドの職員にステータスを測ってもらった。
幾星 透
ステータス
レベル8
レベル上昇条件クリーオンのソロ討伐
HP268→308
MP248→288
STR300→340
DEF250→290
AGI285→325
???171→211
武器スキル
《コネクトスラッシュ》
《会心刺突》
《投剣》
能力上昇スキル
《筋力増加》
《ディフェンスレートアップ》
常時発動スキル
《アラガウモノ》
追加効果=消失
《魔力感知》
魔法
《火素作成》
《付与》
どうやら新しいスキルの追加はなかったようだがやはりステータスがかなり上がっているようである。
自分自身でもまだ何かはっきりと身体を動かしたわけではないが何か成長したという奇妙な実感があるほどである。
やはりレベルアップの時に上がるステータスは普通に上がるときとは比べ物にならないなと思う。
だが、今回のレベルアップでは今までにないことがあった。
それは、レベル上昇条件が指定されていることである。
その条件が指定されていること自体はなんら不思議なことではないし自然なことだと思っている。
基本それはレベルアップしてからの冒険のあとで決まるものなのである。
だが、今回はレベルが上がった直後に条件が追加されていたのである。
それも、前回のレベル7からレベル8になる時の条件を厳しくしたようなものとなっていた。
俺が《アラガウモノ》の干渉を疑いたくなるのも仕方ないというものだろう。
ていうか、ソロで討伐しろってなんかの!?せっかく一緒に戦ってくれる仲間ができたっていうのにさ、それも俺のスキルは許してくれないわけ!?
だが、この条件だとクリアするのはかなり難しいものとなってしまうだろう。
俺は星華さんと連合を組んでいるわけでソロで戦うようなことはないと思うし、基本的に星華さんを待たせたままというのもしたくないから、まずソロで戦う状況があまりないからだ。
でも星華さんとは午後から冒険をすることになっている。
なら、午前にやればいいか。
そんなことを考えながら俺は家に帰るのだった。
「帰りましたー。支配者!今日はめっちゃ無事で帰ってきましたよー。」
「そうかい!それは良かったよ。でもこれからは今日はなんていう言葉がつかないようになることを期待しているよー。」
もっと信頼されるようになれるまでいつまでもかかるかはわからないけどね。
「それじゃあ、これからご飯にしようかな。」
「お願いします!」
「それで、どうだったんだい?誰かと一緒に冒険をした感想は?」
「そうですね……かなり安全ですし、一人の時と比べてかなり戦いやすかったです。それと、自分以外に誰かいるので無理をするのを少し自重しようと思うようになりました。」
「それはいい傾向じゃないか!本当に焦って進もうとする必要ないんだよ。ゆっくり、少しずつ進んでいけばいいからね。君のことは信頼しているから。」
「そうですね。でも、なるべく早く進みますよ。無理のない範囲で、ですけどね。」
「うん、それでいいんだよ。」
と言ったりしてるものの明日には無理をしようと考えたいるわけだけど。
だが、今の俺なら無理ではないかもしれないとすら思える。
それに、今まで律儀に正面から戦っていたが、少し捻くれた戦い方を思い付いてはいるのだが。
それに、このやり方が成功すればレベルアップもできるし、それこそ砂水晶石もこのやり方が通用するならどんどん手に入ることになるだろう。
「そういえば…。支配者、今日も持って帰れなかったです。」
「ん?なんのこ、と。あー、砂水晶石のことかい?いいんだよ。さっき言ったばかりだろう?無理して焦らなくていいと。だから、本当にできたらでいいんだ。そこまで気負う必要は君にはないんだよ。」
「はい、わかりました。でもできるだけ早く見つけますからね。」
「うん、それには私も期待しているとも。」
「はい!」
その言葉に彼女は頷いて自分の部屋にゆっくりとした足取りで戻っていく、その姿を透はなぜかじっくり見ていた。
「え、どうしたの?そんなにまじまじと見つめられていると落ち着かないんだけど。」
そう言われて、透は少し気の抜けたような顔で
「え、そんなに自分。支配者のかと見てました?あんまり自覚ないんですけど。」
と言った。
「え、うん。結構見てたよ。それも見られてるっている実感を背後から感じるくらいには。」
「ほんとですか……」
「うん。」
今までそんなことがなかったのにどうしたそんなことを俺はしてしまったのだろうか。
今日のご飯の時だっていつも通り昼の冒険の話をしただけで、いつもとなんら変わりない日常の一環だというのに。
透は少し首を傾げながらそんなことを考えていた。
そして、ハッと顔を上げると。
「うわっ。急にどうしたんだい?今日の君は少し変だよ。どうしたんだい?どこかに頭をぶつけて記憶でも無くしたのかい?」
と、縁起でもないことを少し焦った表情の支配者に言われた。
いやまあ急に顔を上げられて驚くのはわかるけど。
そうして透は一呼吸を置いたあと
「記憶なくしてないですよ!?バリバリ今までの自分ですよ。その、なんていうか。いつもと違って安心したような感じの支配者を見て、少し珍しいなと思ってて。だからずっと支配者の方を見ていたんじゃないかなと。」
支配者は少し驚いたような表情をして、さらに表情を変えていったが少し俺にはその表情が表している感情を理解することができなかった。
それほど、複雑な感情を胸中で渦巻かせらながら。
そして、その感情を整理したのかしきれなかったのかどちらなのかわからないが。
「―――」
と、一言だけいって部屋に戻っていった。
そしてそのあと、その支配者の反応を疑問に思いながら透もまた、自分の部屋に戻っていった。
――◇◇◇――
さっきのあの支配者の反応、あれってなんだったんだろうな。
あんな一言は今までの支配者らしくない、少し投げやりな言葉だった。
だからといって、自分がした発言の中に支配者に対して馬鹿にするようなことは何もいっていないはずだからどうすればいいのかわからない。
しかし、あの反応から一つだけ感じたことがある。
今まで、俺は支配者の言動、行動、そのような様々な点で底を見ることができなかった。
だが、あのとき、あの一言を発した瞬間。
なぜか支配者のそこのようなものが見えた気がしたのだった。
とりあえず、今は明日のクリーオン戦のことだけを考えていこう。
あのとき勝てたのは、あくまで星華さんの援助があったからだ。
実際、透はクリーオンのスピードには対応しきれない。
それに、透は自分がクリーオンの注意を引き付け切っているなんて思っているが、実際のところクリーオンの注意は五分であった。
ただ、透の方が距離が近かった、ただそれだけのことだった。
どうすれば一人で俺は勝てるだろうか?
もっともこの戦いの中で大きい勝因は星華さんの魔法によりクリーオンの足を削いだことであろう。
確かに、俺の攻撃により鋏を抉ったこともあるだろうが片方の右鋏を落としたところで結局のところクリーオンの攻撃手段に大きな痛手とはいえないものであった。
つまり、この戦いの貢献度で言えば7割以上は星華さんのものと言えるだろう。
その7割を埋めれるほど、俺のステータスは高いものだろうか?
やはり、少し現実味にかけるだろうか?明日すぐにソロ討伐を実行しにいくというのは。
少しレベルアップしていたことで気が上がってしまっていたかもしれない。
だが、今後新たなスキルの発現を期待するのは無駄だろう。
それ以外の、もっと現実味のあるほぼ勝てる方策を見つけなければならないだろうな。
それこそ、今日やっと支配者の安心した姿を見つけることができた……いや、あの反応的にはなんとなくそう言い切れる自信がなくなってくるのだけど。
それも、支配者との約束の都合上あまり一人だけで冒険しにいくことはしたくない。
約束を破るというのはあまりいいことではないだろう。
たった1日だけ安心させてその次の日にはまたボロボロになって帰ってきました〜スミマセ〜ン、だったら流石に呆れられるどころか嫌われてしまっても全然おかしくないと思うしね。
今は一度機を待ってみることにしよう。
そう思いながら俺は今日という日を終わりにした。
そして、朝になった。
星華さんと冒険をしにいくのは午後からなので本当に午前は暇なのである。
ちなみに冒険の時間が減ってしまったからといって収入が減ったりすることはない。
正確に言えば昨日は減ってしまったが、それは単純にクリーオン戦にかなり時間をかけてしまったからであって、たとえばあのままずっとサボテン討伐祭を続けていたとしたらドロップアイテムを相当数手に入れることができているだろう。
もちろん、そのドロップアイテムは例外を除けば基本的には半分半分で持って帰るものとしている。
ちなみに例外とは、こちら側で言えば防具に使われるドロップアイテムだった場合は俺に、その逆で言えば薬に使われるようなドロップアイテムだった場合は星華さんにドロップアイテムを全部与えるというものである。
このようなお互いが双方に有利なようにこういうふうなルールを作っている。
もしドロップアイテムをどちらが手に入れるかどうかで揉め事を起こして、それで連合解消なんて馬鹿みたいなことはしたくないし、もったいない。
だが、その分半分にしたにもかかわらず想像していたよりもずっと収入の下がり幅は狭かった。
その点、本当に俺にはメリットのある話である。
「つっても、流石に暇だなー」
今までは、午前からずっと混沌の核で戦い続けていたからここまでゆっくりとした朝は少し物足りなく感じてしまう。
いやまあ、戦闘狂になったわけではないし、血とか溢れたり互いの限界を確かめ合うみたいなそんな熱い戦いを望んでいるわけではない。
できることなら余裕を持って勝ちたいし、あまり勝率の低い戦いはしたくないのである。
うーん、暇だし久しぶりに出かけてみようかな。
もしかしたらなんか興味のあるものが見つかるかもしれないし、そろそろ武器を変えてみるのもありかもしれない。
正確に言えば、黒金剛石重長両手剣は威力的には申し分ないのだがいかんせん一撃必殺系の武器だから、連撃だったり、攻撃してからすぐに防御とかそういう小技を使いにくいのがこの剣のデメリットととなっている。
その点片手剣の方が小回りは効くし威力も武器によるが低すぎるわけではないのでいいのである。
とりま武器屋に行くことにしよう。
幸いサボテンのドロップアイテムを売ったりしたおかげで今の俺の所持金は全て合わせて3500エンカにもなる。
最近はお金を使う機会に恵まれなかったというのもあるし、手に入れれるドロップアイテムの値段も上がってきた影響もあり、お金がたまっていた。
いちおう黒金剛石重長両手剣は2500エンカ程度(いちおうクリスト?全人類代表最高皇帝か誰かのおかげで半額だったが)だったので全額突っ込めば、より良い武器を手にすることができるだろう。
そう言えば半額で思い出したがあのときからもう20日くらいたった気がしなくもないのだが、あの、混沌怪物軍団侵攻とかいう変なのは今の所来る気配もなさそうである。
やっぱり何かのイベントっていうだけであって、俺が冒険に行っている間に終わってしまったのかもしれない。
いや、まて。
もう終わってしまっていたらもう武器とかが半額になってないかもしれないじゃん!?頼む!まだ終わっていないでくれ混沌怪物軍団侵攻ッ!
そうして、武器屋に俺はきた。
そして、どうやら【宵闇の明星】はいまだに売れてはいないようである。
「ええー、なんでだよ。俺これ買うのを目標にしようと思ってたのに。」
そして、その剣が置かれている場所には、はっきりと10000エンカと書かれていたのだった。
半額になっていたのなら5000エンカなのでどうやら半額にされる武器の範囲外だったようである。
もしくは普通に半額になっている期間が終わってしまったことも全然考えられる可能性の一つである。
「まあ、普通に考えてあのときから20日くらいは絶対に経っているわけだからね。半額になってる期間が終わっていたとしても不思議じゃないか。」
と、少し諦めのようなものを感じながらも、透はさらに奥の方に向かっていく。
だが、そんな透のマイナスな期待を裏切るように少し奥に行ってみるだけで半額になっている武器がたくさん置いてあった。
ということは、である。
「【宵闇の明星】は半額キャンペーンの対象外ってことかよ。なんていうか、運に見放されたな」
目的のものはキャンペーンの対象外、それ以外は対象というのはなんとも悲しいものである。
現状、俺の所持金3500エンカなので、10000エンカに到達するには今の2、3倍くらい稼がなければならないのである。
半額の5000エンカならば10000エンカに比べればはるかに手が届きそうな額となっていたが、そこまでうまくいくものではなさそうである。
というか、上級の冒険者達は【宵闇の明星】を買ったりしないのだろうか?
俺的にはかなり、いやとても魅力的な武器なのだが、なぜ皆はこの剣を購入しないのだろうか?
そう思って、少し様子を観察してみることにしたのだが。
なんでなのかはわからないのだが、どうやら他の冒険者達は【宵闇の明星】を避けて通っているようである。
通ってゆく冒険者達の表情は、何か醜いものを見るような、そのような感じのもので覆われていた。
なんでだろうか?
まあ、考えても仕方ないな。
もしかしたら俺は、他の人と感性が違う少しズレた人間、マイノリティの方の人間なのかもしれないと、俺は少しセンチになった。
その後、少しこの店にある剣を物色してみたのだが、なんていうかパッとしない……というわけじゃないけどなんかピンと来るものがないんだよなー。
あまりこういう時に無理に買い物をしても仕方がないような気がする。
だから、今日のところはこれくらいにしておこうかな。
それに、そろそろ時間が来たから準備をしなければならないだろう。
そう言えば、支配者がどうにかしてくれているからあまり気にしことはなかったけど、支配者の運営している防具のお店以外の防具屋には一度も行ったことがなかったよな。
もしかしたら少し様子を見てみるというのもありかもしれないな。
それこそ今後俺が、正確に言えば支配者が目指すものだが。
その支配者が目指そうとしている景色、それを共に共有できる、そちらの方がお互いのためになるだろう。
――◇◇◇――
「あ、来た来たー!」
「すみませーん!待たせてしまいましたか?」
俺がギルドに行くと、そこには星華さんがそばにあるベンチに座って待っていた。
「ううん。大丈夫!今来たところ!」
いやデートかよ。
なんかこういう感じの会話って、デートに行く時に待ち合わせ場所で交わされるやつなのではないか?
もっと具体的に言えば、待ち合わせ場所に時間より早く来た彼氏が、待ち合わせの時間、または少し遅れてきた彼女に対してする反応な気がする。
悲しいことに、待っていたのは男の俺ではなく、女性の星華さんの方だったようだけど。
「あははは!」
「何かおかしいんですか?」
意味がわからない、今の会話の中のどこに笑うような要素があったのだろうか?
星華が笑った理由がわからないでいた俺を見て
「いや、だってさ!なんか今の会話ってなんかカップルみたいだなーって!別に狙っていってるわけではないんだけどね!」
「さいですか」
ずるい。
言われた側じゃなくて、言った側がそういうことをいうのはなんというかずるいような気がするのである。
「それに、透さん。少し顔赤いよ?」
「え!?そんな!わかるくらい顔赤いですか!?」
「うん、今そうなってるよ?」
「〜〜〜!」
なんなんだこの人は。
どういうこと?誘ってるの?いやもう意味がわからない。
距離の詰め方バグってるだろ。
これがあれか?年上の余裕ってヤツなのか!?
それも無駄に、いやまあ無駄ではないと思うのだが美少女、なだけに中2の俺は心臓が持たないというものである。
透はなんとなく星華の顔を見たくなくなったのと、これ以上星華に顔を見られたくないから、そっぽをむいていた。
それを見ている星華の目は少しもこの場の雰囲気にあっていない温度をしていたというのに。
やはり、彼はそれには気づいていないまま。
「なんなんですか?からかってるんですか?」
「――――」
帰ってきたのは沈黙だけだった。
目を閉じたままかなり勇気を出して発言したつもりだったのに、どうやら帰ってきたのは沈黙だった。
もしかしたら何か気に触るようなことをしてしまっただろうか?だとしたら気まずいな。
とりあえず、目を閉じたままだったら相手の表情もわからないままだ、とりあえず目を開けることから始めなければならないだろう。
そうして、目を開けてみるとそこにはいつも通りのギルドの風景が広がっていて――
「って、ええええええええええ!?」
その風花の中に先ほどまでいた星華の存在がいないことに気づいた透は情けないことにこんな腑抜けた叫び声を上げてしまっていた。
え、なんで!?もしかして本当に気に触るような発言を俺はしてしまったのだろうか。
いや、そうとしか考えられない。
早く、星華さんを見つけてどうにかしないといけない!
その考えに至った俺は、大きく息を吸って周りを見渡しながら
「星華さー―」
と叫ぼうとしたのだが。
「って、いたあー………」
それはすぐ後ろの、少し離れたところをみたらそこには何もなかったかのような顔をしてギルドの中に入ろうとしている星華の姿があった。
それを見つけた透は
「待ってくださーい!星華さん!すみませーん!自分が悪かったです!」
実のところ俺が何をしてしまったのかは一切合切理解できないのだが、とりあえずは全力の謝罪をする。
これによって、どうにか透は断たれてしまった(あくまで予想のものとなっているが)お互いの間にかかっている橋をどうにか繋ぎ合わせようとしたのだが、それはなんの意味も持たないただの無駄な努力として終わった。
なぜなら―
「ん?なんかあったの?」
と、当の本人は悪びれもなくそうのたまうのだから。
さっきまで焦ったりしていた俺がバカみたいである。
やっぱり、たまにこういうところがあるから少し振り回されたりしてしまう、が別にいいのである。
こんな俺に協力してくれている数少ない人、さらに同じ世界からきた人なのだから。
「いえ!なんでもないです!」
「そっか!ならいいや!」
あの時の言葉は試してたんですか?とか、なんも言わないで勝手にどこか行かないでくださいよ!とか、そういう言葉は言う気にはならなかった。
だって、今目の前にいる星華さんの表情には疑問の色以外があるようには見えなかったのだから。
少なくとも、透の目に映っている星華は、なんの他意も見つけることはできなかったようである。
そうして、俺と星華さんは混沌の核にいつも通り、(まだこれで2回目なのだが)向かっていくのだった。
――◇◇◇――
本当に彼のことを信じても大丈夫なのだろうか?
あの時の彼ら、彼女らと同じではないのだろうか?
そして、何より私は彼のことをここから信用するような日はいつかくるのだろうか?
できることなら、祈ろう。
私が信じていられるような人間で彼がいることを。




