第二章8 terra
「私達の連合クラスの名前を決めよーう!」
「え、名前とかってあるんですか!?」
「え、あるよ?」
前世のゲームでいうところのパーティは本当に組むだけというイメージがかなり強かったからそれと同じ感じのものだと俺は思っていたのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
後、星華さんからそういう非常識な人間を見る目をされると、この世界の人間、つまり俺たちから見た異世界人というわけだが……そういう人たちからすれば別にいいのだ。
理由は単純であり、まず住んでいる世界が違うので彼らからしたら俺は完全な非常識野郎だからである。
だが、だけどだ。
同郷である、星華さんにその目を向けられるのはかなりしんどいものがある。
本当に俺があまりにこの世界について勉強していないのかをわからされてしまうからである。
にしても、名前か。
そういうのが、あるのであれば結構真面目につけたいものである。
例えばチキュウジンとかそういう名前にしたらシンプルにダサいからである。
まあ星華さんが適当な名前でいいというのであればそれまでの話なのであるが。
「君は何か案があるかな?」
「えーと、さっきまで名前を決めたりとかはしないと思っていたので。流石に、パッとは思いつかないです。」
「まあ、流石にそうだよねー。」
「逆に星華さんは何かあるんですか?」
「そうだねー。旅人達とか?私はこういうのはなるべく真面目にしっかりと考えて決めたいタイプだからね。現実世界から異世界に来た旅人だからこそ旅人達がいいと思ったんだ。」
旅人達、か。
なんだろう。
その名をつけた理由もなんとなく、いやはっきりわかる。
だが、なんだろう。
すごく安直。
その言葉を英語訳にしただけのように感じてしまう。
星華さんはどうやら真面目にしっかりと決めたいタイプらしいのだが、その言葉を聞いてしまうと、そういう考えのもと作られた名前にしては安直ッ!
もう少しもう一捻りあってもいいじゃないか。
「あの、すみません星華さん。」
「どうしたの?透さん。」
「そのなんていうか、少し安直じゃないですか?」
「そうかなぁ?」
本当に、本当に不思議そうな顔で星華さんは首を傾げた。
たまに星華には抜けているところがある。
透からしたら安直なネーミングセンスだと思っている。
だが、星華からしたらかなり考えて考えて考えた末にできた名前である。
なんなら星華は今、そこそこショックを受けているのである。
「もうちょっと、他にも何かないか考えてみませんか?」
「うー、わかったよ。」
でも、実際俺が旅人達という名前を聞いた時に案外イイと思ったのもまた事実である。
正確に言えば、その名前の由来について、だろう。
現実世界から異世界に来た旅人。
このフレーズは少なくとも俺からしたらカッコイイものに思えてしまう。
だから、その旅人達という名前は捨てたくはない。
だけど、それだけだとあまりに単純に感じる。
だから
「あの、星華さん。」
「何〜?……」
少し、いつも(といってもそんなに長く関わっていないが)よりも数段階暗い声のトーンで返してきた。
もしかして、結構ショックだったのかな?
「その星華さんが考えた旅人達という連合の名前の案。俺はその由来を聞くと凄くいいものに感じるんですよ。」
星華の悲しみに暮れた瞳に少し光が戻った。
―気がした―
「なので、全く違うものにするんじゃなくて、それに何かを付け足すのがいいと思うんです。」
「うん!」
星華の悲しみに暮れた瞳に光が戻った。
―間違いなく―
「それで」
「うん!」
星華は透の言葉に被せるようにして相槌を打った。
「自分達の名前には両方星という漢字があるじゃないですか。」
「そうだね。じゃああれかな星の旅人達?」
星華さんにはどうやらその言葉をすぐに英語にしたがる癖があるようだ。
それも、確かにいいんだけどね。
俺は星華さんのその案に対して
「それもいいと思うんですけど、そうじゃなくて、何かの星にまつわる名前をつければいいと思うんですよ。」
「例えば?」
「シリウス、ベテルギウス、ベガ、レグルス、カペラ、カシオペア、アルビレオ、プレアデス」
そして、一呼吸置いた後。
「――テラ、とかですね。」
俺は星に結構興味がある時期があった……気がする。
それがいつ、何がきっかけで、誰に教えてもらったのかも思い出すことができないが、なぜかその時期のおかげで、俺は星の名前をそこそこ知っていた。
ちなみに、火星、土星、木星などの漢字の星を出さなかった理由は、星華さんがおそらく英語――つまり、横文字が好きなんだろうなという、勝手な想像。
そして、流石に知っているだろう、と思ったからである。
「ねぇ、透さん。」
「なんですか?」
「テラって何?スマホとかのデータ容量の単位のこと?」
「あー、それじゃなくて、テラっていうのは……」
「地球のラテン語での言い方ですよ。」
他の星、つまり獅子座のa星はレグルスのように、ちょっとかっこよさげな名前がある。
ならば、地球には地球かアースしかないのかと思って調べてみるとテラという名前もあることを知った。
俺はそのテラという名前にカッコよさを感じた。
故に、今もこのテラという名前を覚えていたのである。
「そうなんだ、透さん星について詳しいんだね!」
簡単したように星華さんは言った。
「だから、俺は。」
旅人達の名前の由来にカッコよさを感じた俺は、少しその意味を掘り下げて気づく。
「現実世界、すなわち地球からこの異世界に旅をした俺たちの連合の名前は
青い惑星からの旅人達
がいいんじゃないかなって思います!」
そんな俺の連合の名前の案に対して星華さんは瞑目して少し考えるような仕草をした後に、瞑っていた瞳を開いてジーっとこちらを見つめた後。
「それでいいんじゃないかな!」
と言ったのである。
「私の考えた名前に、君が考えた言葉があると2人の連合みたいでいいと思うよ!それに、長すぎないしね。」
「それじゃあ」
「うん、私たちの連合は青い惑星からの旅人達に決定!」
そうして、俺たちの連合の名前は決まったのだった。
「名前決まったのはいいと思うんですけど。他にもやらないといけないことがあるってさっき言っていた気がするんですけど。何があるんですか?」
「まあ、私たちが今ここでできることはあまりないね。この後やることといえば、ギルドに行って正式に登録したりとか。あとは透さんも身分証明書持ってるよね?」
どうやら、俺が結構非常識という認識が確立されてきたのだろうか?俺に対してあまりに当たり前のことも聞いてくるようになったようである。
これからはもう少し勉強するのもありかもしれない。
というより、しないと今後ついていけなくなるような気がする。
最近は、少しずつ稼ぎが安定(最近死にかけてきたわけなのだが)しているから少しこの世の本に触れてみるのもありかもしれない。
それに、俺も一回してみたいのである。
「え、〇〇?ナニソレ?」
「それはね…………」
という、その人の知らないことを堂々と説明するムーブ。
このようなことを俺もいつかはしてみたいものである。
今の所される側にしか回ってきたことがないからね。
「はい、持ってます。」
「君の身分証明書も駆け出し級になってると思うんだけど、それを登録したりするんだよ。その連合のメンバーの身分証明書次第で、その連合のランク?が上がるみたいだよ。」
へー。
意外なところで今まで必要性が皆無だと思っていた身分証明書に存在意義が生まれた。
「あとはステータスも登録したりとかかなー。ね。もうここで出かけることなんてほぼないでしょ。だから、明日ギルドに行ってからやろうね。」
「はい!そうしましょう!」
「それじゃ、色々と決めたわけだから今日のところはこれぐらいにしておこうか。」
「そうですね。」
「またね!」
「はい!また明日!」
そう言って俺と支配者は星華さんとローアさんに見送られて家に帰っていくのだった。
「にしても、本当に君に連合を組んでくれるような人がいるとは思わなかったよ。」
とは、俺たちの家に戻ってきた支配者の言葉である。
そんな、少し驚いたような感心したような支配者に、少し胸を張って
「はい!とは言っても本当の本当に偶然のタイミングでしたけどね。」
「だとしても。とりあえず君が怪我をしたりまた死にかけるようなことになるリスク、可能性はかなり下がったと思う。私としてもこれ以上君が限界まで頑張ってボロボロになる姿を見たいわけではないからね。」
「心配かけてごめんなさい。だけど、これからはそういうふうにならないように俺が、いや俺と星華さんで頑張ります!」
そんなことを話したあと、俺は部屋に戻り寝た。
今日、というよりこの3日間くらいは色々ありすぎて疲れていたので寝るまではいつもに比べて異常に早かったのである。
そして、朝になった。
起きた俺は今までのようにすぐ冒険に行くわけでもなく、ゆっくりしていた。
理由は単純で、星華さんとギルドで手続きをしなければならないからである。
それまで特にすることがないから、ぼーっとしようと思っていたのだが。
それもそれで何か違う気がしたので、俺は剣を振ることにした。
そういえば、俺は隻眼になって以来剣を振ったりはしていないので感覚が鈍っているような気がするのである。
そうして、今は少し前に取っていた第二階層の木の枝を的にして剣を振っている。
まあ、両手剣の方は剣自体がデカすぎるのである程度、というか見えてれば切れるのだが。
「こっちは結構きついなあ。」
シルバーメタルソードを見つめながら透は言った。
少しブレがあり、上手く枝を切れていないのである。
試しておいてよかった、と心からそう思った。
それこそ、命懸けの攻防を繰り広げる混沌の核においてそれは致命的すぎる欠陥となってしまう。
一万歩譲って今までのように俺1人で戦ったりするのなら完全に自己責任であるので、まだいいかもしれないが。
これからは戦いでの敗北による被害は俺1人にとどまらず星華さんにも及んでしまうので、そのような欠陥はなくしていきたいのである。
そうして、だいたい1〜2時間くらいだろうか。
剣を振っていた透は戦えるくらいには感覚を合わせることに成功したのだった。
感覚を合わせた後、透はふと、思い出したように目を開いて。
そういえば、いつものように防具を拭いていないな。ということを思い出した。
それに、今回の戦いはかなり激しかったから傷ついていた防具を少し拭いたりするなどして整備しようといつも自分の防具を置いているところに行こうとしたのだが。
「あれ?ない?」
あれ、もしかしてクリーオンに全部破壊されてしまったのだろうか?まあ、それぐらいのダメージを受けていたとは思うから当然といえば当然かもしれない。
いや、だけど俺は星華さん達の家から帰る時に間違いなく自分の防具を持って帰ってきたはずだし、さらにいえば今いる場所においた記憶すらある。
それゆえに、だからこそ疑問――
あ。
「もしかして」
その可能性に至った俺は、ある場所へ向かった。
そして、そこについた俺はそこにある扉に向かって
「いますかー?」
と、ドアをノックしながら俺は扉の向こう側にいるであろうその人に対して、声をかける。
しかし、扉の向こうから帰ってきたのは静寂であった。
となると、この部屋には誰もいない。
または、その中の人がこちらに返事をできない状態にあるという可能性である。
俺的には前者よりも後者の方があり得ると思える。
そして、ある程度待っていても返答がなかったので。
「入っていいですかー?」
またもや、静寂。
先ほどの質問の返答を待つ時間の倍くらい待ったが、返答は何一つなかったため、俺はその扉のドアノブに手をかけた。
なぜ、透がこんなにも念入りに部屋に入っていいのかを確認するのか。
その理由は、その部屋がそれだけ気軽に無断に入っていい場所ではないことを透自身が理解しているからである。
その部屋は――
――支配者がいつも防具を作ったり、整備したりしている部屋である。――
俺がなぜこの可能性に至ったのか。
それは、朝ごはんを食べた後支配者は俺が出て行く時には声をかけたりするが、それ以外の時はすぐに防具を作る部屋に行っている。
それならどうやってこの店を運営してるのかと思うかもしれないが、営業はまかり通っている。
なぜなら、支配者の店のカウンターには、ベルがありそれを押すと、もちろん音が鳴りそれが聞こえれば支配者はすぐそこに出向くのである。
ゆえに、営業はできている。
とにかく、大体の場合支配者はすぐに返事、または反応を返してくるのである。
だが、それもなかった。
だけど、今日は特に買い出しとかに行く予定はなかったはずである。
ということは、そこにいると考えるのがある意味自然である。
それに、大体の場合金属音のような音が鳴っているこの部屋の日常であるがそれがなっていないのも違和感の一つであった。
そして、その部屋のドアを開ける。
すると、そこには作業をする机に突っ伏したまま寝落ちしている支配者の姿があった。
規則的な寝息を立てている支配者の手元には俺が探していたもの、つまり俺がつけていた防具があった。
「――ッ」
あんなに怒っていたり気絶しまくって疲労が溜まっていたであろう支配者がこんなことをしてくれるなんて本当にありがたい人である。
できることなら、今すぐにでも全身全霊でお礼をしたいところである。
だが、もうそろそろ出発の時間が迫ってきていた。
だから俺は寝ている支配者を起こすことのないように、声を出さないまま全力で頭を下げた後、その整備された防具をこの身に装備させてもらい、俺は星華さんの店に行った。
そして、そこについた。
そこには、冒険者のかっこう格好をしていた星華さんがいて。
「こんにちは、透さん。それじゃあ、いこっか!」
微笑みながら、星華さんは俺に言うのだった。




