第二章9 手続き
俺と星華さんはギルドに向かっていた!
そして、着いた!
「着いたねー。」
「そうですね。」
そんな端的な会話をして、まあ会話と呼べるかは定かではないが、俺と星華さんはギルドに入って行った。
ここにきたのはもちろんギルドで連合を組むための手続きを済ませるためであり、それが終わればついに俺は星華さんとパーティを組んでの戦闘、つまり冒険をするのである。
そんなことを考えているうちに星華さんはギルドの受付の方に行っていて。
「すいませーん」
そういうと、カウンターの方からギルドの職員が出てきて。
「なんでしょうか?」
「そこにいる人と、連合を組む手続きをしたくて。それをお願いしたいんですけど。」
「あー、わかりました。ですが今は少しその手続きをできる人がいなくて………。あ!あの人ならできるかも……すいません、少しお待ちしてもらってもよろしいでしょうか?」
そう聞かれた星華さんはちらっとこちらを見た。
「大丈夫です」というふうな感じで視線を星華さんを送り返すと、「わかったよ」というふうに視線を送り返してきた。
その後、ギルド職員さんの方に振り向くと。
「わかりました。どこで待っていたらいいでしょうか?」
「そうですねー、あ。そこにあるものに触れないなら、という条件付きですが、連合の手続きをする部屋で待ってもらうことができますが?それができない、もしくは嫌なのであればそこにあるソファで待ってもらってもいいですよ。」
「ちょっと話させてもらってもいいですか?」
「もちろんいいですよ。」
そう言われた星華さんはこちらにきて。
何やら、コソコソ話をするような距離で話し始めた。
「ね、私的にはもう手続きをする部屋で待っていたいところなんだけど。もちろん私は大丈夫だけど、君は大丈夫?ちゃんとできる?」
その言葉を言われた俺は一瞬、いやそれは少し盛っているかもしれない。
正確にいえば、10秒ほどフリーズしていた。
だって、星華さんが俺に何を聞きたいのかが全くと言っていいほどわからなかったのである。
え?なんのことを聞いているのだろうか?大丈夫ってなんのこと?
まさか、
「星華さん、何のことを聞いているのか少し詳しく説明してもらってもいいですか?」
俺は、その可能性を潰すためにこの質問をした。
可能性の裏付けをするため、つまり確信を得るためではなく、可能性を潰すために聞いたのだ。
もし、俺が今考えついたことが肯定されてしまった場合、俺は疑ってしまう。
何をかって?
星華さんの中の俺の評価を、である。
そして、星華さんはキョトンとした後この質問の答えを言った。
「え?何をって。透さん、わからないの?」
「はい、わからないです。」
「それはもちろん。君が、ギルドの部屋のものに手をつけてギルドの人たちに迷惑をかけないか大丈夫かな?っていうことを聞いたんだよ?」
「――」
絶句した。
言葉どおり、衝撃で全く声が出ない俺は、またもや呆然と立ち尽くしていた。
そんな、そのようなことを、星華さんは心配したようである。
なんだろう、俺が星華さんよりも年下なのは充分に理解している、理解、しているんだ。
だが、いくら年下とはいえども俺は中2だぞ。
流石にその程度の常識は持っていると自負している。
なんというか、とてつもなく子供扱いされたように感じて、星華さんの中での幾星 透の印象はかなり子供という印象のようである。
俺は、ふうと少しため息をついた後。
「流石に、そんなに子供みたいなことを俺はしませんよ。
心配しないでください。」
「あ、そうなんだ!じゃあ、あの部屋で待ってようか。」
そうして、星華さんはギルドの人に話をして、俺たちはあの部屋に向かい、その手続きをできる人が来るのをじっと待っていた。
そうして15分くらい経っただろうか。
この部屋にその人だと思われる人は来た。
「お待たせしてすいませんでした。それでは手続きを始めましょう、私は――」
そこに入ってきたギルドの人はそこで不自然に声を止めた、まるで何かに気づいたように。
また、透も同様に目を見開いて固まっていた。
正確にいえば、ここに入ってきたギルドの人と目を合わせながら、だが。
だが、残念なことに一方は両目でもう一方は片目で、という形になってしまっているが。
また、星華は何がなんだかわからないとでもいうように目をパチパチさせていた。
そして、そんな2人の沈黙は片方の声によって破られることになった。
「久しぶり、元気だった?と言えるような状況ではなさそうですね。」
冷たい目をした女性、ナディス・ディールはそこにいた。
「ええっと、つまりナディスさんと透さんは知り合いってこと?」
とは、星華が透たちに投げかけた疑問の言葉である。
俺は、かなり申し訳なくなっていた。
あれだけ忠告をしてもらっていたのにも関わらず、この有様なのだから。
そりゃあ、ナディスさんのその冷たい、もはや殺気すらも混じっていると言っても過言ではないというのがその視線を受けている俺の感想である。
「まあ、冒険者をやっている間ギルドの人にかなり俺はお世話になっていたんですよ。」
「うん、私も結構お世話になったよー。」
「それで、そのうちのほぼ全ての時にナディスさんと関わっていたんですよ。だから、まあ、知り合いと言っても過言ではないかもしれないですね。」
「そうなんだー、そんなナディスさんとたまたま会うなんて、すごい偶然だね!透さん!」
「あはは、本当ですよね――」
「そう、その通りですね。ええ、本当に。なんたる偶然でしょうか、冒険者幾星 透さん?」
食い気味にナディスさんは俺にそう言っていた。
もはや、運命すら感じるほどである。
そんなナディスさんは蔑むような見下すようなそんな視線を送っていた。
「まあ、今はいいでしょう。ここはギルドの職員としての責務を優先することにします。あなた方もこの後冒険に行かれるのでしょう?」
「え?なんでそれがわかったんですか?」
星華さん、、。
そりゃあ、こんなに完全武装した状態でギルドにきて、連合を作りたいと言っていれば大体想像がつくものなのではないのだろうか。
そんな質問をした星華さんに対して、先ほどの俺に向けてきたあの殺意のこもった吹雪のような視線が嘘のように、優しく微笑み、もはや温もりすら感じるような目でその質問に答えた。
「そのように、完全武装していれば、想像がつくものですよ。冒険者、彼岸 星華さん。」
「そ、そうなんですか、いえそうでしたね。私も変な質問しちゃった。すみません。」
「いえ。大丈夫です。」
そう言いながら照れ笑いをしている星華さんに対してナディスさんは寛容な姿勢を見せた。
まるで俺の時とは大違いである。
なんだろう?同じ女性だからであるからだろうか?
いや、それも違うような気がするのである。
だとしたら、もしかして俺が何かしてしまったのだろうか。
いや、でもそんなに俺は変なことをした気がしないし、ナディスさんが嫌なこともしていな――。
直後、透の脳内に今までのナディスさんとの記憶がフラッシュバックした!
そして、そんな記憶を見終わった俺は、
先ほどの思考をここで打ち止めにして、これ以上は考えないということにしたのであった。
「ところでナディスさん。」
「どうしたのでしょうか。」
「連合を組むために必要なギルドでの手続きってなんなんですか?」
「え、それも知らないの?いや、もはや透さんにはそれを聞くだけ、いいえ。常識を問うこと自体がおそらく間違いだったのでしょう。」
いや、今めっちゃとてつもない扱いされなかった?
なんか、今まで「そんなことも知らないの?」て聞かれるのがつらいー。
とか、言ってたり思ってたりした気がするのだが、それすらも今言われた言葉に比べればかなり優しいものだったのかもしれない、そう思えるような言葉であった。
なぜなら、今言われた言葉とは、俺に対して常識を求めるだけ無駄だからコイツの答えを聞くまでもなく、もうとっとと説明したほうが早いんだろう、と見切りをつけられた可能性が高い。
いや、今の言葉も甘えだろう。
つけられたのだ見切りを。
うわー、いとかなし。
「え、あの、ナディスさ―」
「それでは今から教えますね。」
俺の言葉は、最後まで言い切ることができないままナディスさんの言葉に遮られてしまった。
なぜだ。
もしかして俺の言葉が聞こえなかったのだろうか。
なら、もう一度言えば聞いてくれるかもしれない!
「え、あの、ナディスさ―」
「連合を組むときに必要な手続きは、まず、連合の名前などの基本情報。まあ、最初はそこまで難しくはないのでご安心ください。あとは、メンバーの名前。もう少し言えば身分証明書と、ステータスなどを教えてもらう必要があります。それを書類にまとめて提出したら終わりです。」
食い気味に、俺の言葉を上書きして話を続けるナディスさん。
あれ、また聞こえなかったのかな?いや、でもさっきより間違いなく大きい声で言ったなら絶対に聞こえているはずなのだが。
「え、あの、ナディスさ―」
「でも、私たちはもう連合の名前を決めたりしているから大丈夫だよねー。」
「そうですか、でしたらその名前をこちらに書いてください。」
「はい!わかりました。えーっと、青い惑星からの旅人達っと。」
今度は、先ほどまでのようにナディスさんに言葉を遮られるのではなく、どうやら星華さんに遮られたようである。
なんなんだろう、俺はみんなの認識の外側にいるのだろうか。
まさか、今までは奇跡的に会話が成立していただけであって本当はクリーオンにもう殺されていた、とか?
そう思った俺はまた声を出そうとする。
「あとは、名前だね。」
そう言って、星華さんは星華さんの名前を書類に書いたあと、俺の名前を書こうとしたのかペンを書類に走らせようとしたがそのあとすぐに止まった。
そして、ゆっくりとこちらを向いて
「そう言えば君の名前の漢字ってなんだっけ?」
「ええっと。ていうか、自分で書きますよ!」
とりあえず、存在は証明されたようである。
ていうか、俺の扱いが本当に酷くないだろうか。
いや、まあ今星華さんが書いているからそのまま書くのがある意味自然かもしれないけどさ。
そう言いながら俺は星華さんからペンを取ろうとしたのだがその行動は成功することはなく。
「いや、いいよ。私がやるからさ。」
「いえ、自分はさっきから何もできていないのでさすがに自分の名前ぐらいは書かせて欲しいんです!」
「大丈夫!」
「自分がやります!」
そんなやりとりをジッと黙って見ていたナディスさんは、
(この人たち、なんでこんなことで言い争っているんだろう?早くしてくれないかな?)
という思いを胸に抱いたまま、表情だけは微笑を浮かべていた。
そうして、強引に星華さんからペンを奪い取った俺はどうにかして書類に名前を書き記すことができたのであった。
「書類も書き終わったようですので、ステータスを計りに行ってください。」
そうして星華さんは別のところへ行きステータスを計りに行くのだった。
「では、私はここで待っているのでステータスを計り終えたらこちらに戻ってきてください。」
そう言われたのでまあいつも通りステータスを俺も計りに行こうとしたのだが。
「なんでついてきているんですか?」
そんな俺の後ろには、何やら先ほどまでの微笑が嘘のような怒ったような、そんな感じのナディスさんがいたのであった。
はれー?なんでついてきてるの?
さっき、ここで待ってる的なことを言っていた気がするのだが、どうやらこちらについてくるようである。
「いえ、少し個人的な話をしたいと思ったからです。」
あ、これはまずい。
怒られるパターンだ。
そして、ナディスさんは深呼吸をしたあと。
「なんなんですか?その空虚な目は。」
ナディスさんは俺の左目を見ながらそう言ってきた。
「えーっと、なんていうか冒険中にクリーオンと遭遇しちゃって、そのクリーオンの毒にやられました。」
「あなたに私はかなり忠告していたはずなのですが、どうやらそれもあまり意味はなかったようですね。私は少し残念ですよ。」
「ご、ごめんなさい。」
「はあ、とにかくあまり無茶はしすぎないでくださいよ。どうやら仲間を見つけたようですから、もはやあなたの行動はあなただけのリスクではなく、彼岸 星華さんにも影響が出ます。なので、本当に無茶はしすぎないでくださいね。」
そう、か。
今まであまり強く意識したことがなかった。
星華さんと共に冒険をするということは、これから何かが起こった時は俺だけが全ての結果を受け入れるなんて考えはこの先通用しないんだ。
だから、この先は。
「はい、自分だけではなく星華さんのことを、もっと周りを見た行動を取れるようになります。」
「本当にお願いしますよ。では、私はあの部屋で待っています。ステータスを計り終えたら戻ってきてください。」
「わかりました〜!」
そう言って、俺は進んで、ナディスさんは元の部屋に戻っていくのだった。
そして、戻っていったナディスさんは、誰にも聞こえないような囁き声で
「本当に、どうか。あなた方の悲しみに暮れた顔を、もう、見せないでください。私は――」
と言っていた。
よっしゃ〜、久しぶりにステータスを計りにいけるー!
最近は、というよりかは前回の冒険といったほうが正しいような気がしなくもないのだが、いちいち大怪我をしていたのでまともにステータスを計っていなかったのである。
そして、俺の鑑定されたステータスがこれ!
みよ!
幾星 透
ステータス
レベル7
レベル上昇条件クリーオンの討伐
HP278→268
MP243→248
STR290→300
DEF244→250
AGI281→285
???171=171
武器スキル
《コネクトスラッシュ》
《会心刺突》
《投剣》
能力上昇スキル
《筋力増加》
《ディフェンスレートアップ》
常時発動スキル
《アラガウモノ》
追加効果=消失
NEW《魔力感知》
魔法
《火素作成》
《付与》
《魔力感知》
効果 片方の目を閉じている間、魔力を感知する。
その間、魔力のないものは黒く見える。
魔力のあるものはその性質、魔力量に応じてさまざまな色となって見える。
その時の視界は360度全てが見えるようになる。
直後、幾星 透はその場に立つことすらできず、なんの前触れもなくその場に倒れた。




