第二章6 急なお誘い
「私と連合を組まない?」
目の前の美少女(俺より年上)は唐突にそんなことを言うのだった。
ていうか、そもそも連合ってなんなんだろう。
まーた、俺の知らない言葉が出てきたよ。
それも異世界人からじゃなくて、同じ世界の人から出てきたよ。
こういう時につくづく俺って何にも知らないんだな、と思う。
まあまず、それを知らないとその提案を受け入れることもできない。
まあ、なんでもっていったのは俺の方なんだけどね。
「ごめんなさい、星華さん。まずその連合っていうのが何か教えてもらってもいいですか?」
そう言うと、星華さんはキョトンとしたあと
「え、知らないの?」
と、まるで嘘でしょ?みたいな感じで言ってきたのだった。
「えーと、どこから話そうか?あ!ゲームのパーティーっていうのわかるかな?」
ゲームのパーティーっていうと、、、、
あー、あれか、チーム組むやつね。
えっ、でもそれなら。
「知ってます!」
「なら良かった!で、この世界において連合っていうのはほぼそれと同じものなんだよねー。で、それにならない?って。」
「え、でもそれって、星華さんに何かメリットがあるんですか?」
そう、今の俺は当然星華さんよりも弱いし、それに知識面でも今もそうだがとても力になれるような存在ではない。
そんな俺とチーム組んだところでそれってただの足手纏い、それになるだけだろう。
俺からしたらメリットしかない話だが、星華さんにとってのメリットが思いつかない。
「んー、そうだね。例えば君は剣を使っているんだよね?そういえば教えるの忘れたけど私は魔法使いなんだけどね、ちょっと厄介なスキルができちゃったせいで、前衛系統の戦いができないんだー。それに、そろそろ魔法使いのソロだと厳しいところになってきちゃったから、君と連合になれば、その前衛ができる、とか?」
「え!星華さんって魔法使いだったんですか!?」
いやまあ、さっきの話を聞いた時から察しはついていたんだけどね。
魔法だけだと思ってはいなかったな。
にしても、厄介なスキルか。
なんだろう、異世界転生した人には全員厄介なスキルが発現する縛りでもあるのだろうか。
「そんなに驚くことじゃないでしょー。」
笑いながら星華さんは言った。
「いや、すごいことですよ!」
「そっか〜、それで透さんはどうする?私と連合を組む?」
確かに、最初は迷った。
だけど、星華さんがそう言ってくれるなら、メリットがないわけじゃないと言ってくれるのであれば、断る理由はもうどこにもない。
「はい!お願いします!だけど、できることはあんまりないと思いますよ?」
苦笑いしながら、透は言った。
「いいよ!それに……」
「何、ですか?」
「あー、えーとね。さっき言ってなかったんだけど、私は少し怖かったんだ。」
何がだろう?怖がるようなことがあるだろうか?
「何か怖いことがあるんですか?」
「私達はどこまでいっても、元の世界の人間でしょ?だから、この世界の人とは違うと思うんだよね。例えば、常識とか感性とかさ。」
確かにそれは少し俺も感じたことがある。
たまーにちょっとよくわからない感じ、つまり違和感を感じたことがないわけではない。
だから、星華さんはそれを警戒しているのかもしれない。
だけど、そこまで怖がるようなことだろうか?
感じたことはあるが、それほど気になるようなものではない気がするんだけどね。
「わかりますが、そこまで気になるようなものでしょうか?」
「うーんと、確かに日常生活とかではそこまで気にならないんだよ。だけど、あの混沌の核、つまり生死がかかった戦いをするあそこだったらそれが何か取り返しのつかない事になる気がするんだよね。だから、それが怖いから異世界の人と連合を組むのは気が引けちゃうんだよね。」
確かに、一理あるだろう。
その点、俺は星華さんと同郷だからそういう、常識や感性が違うことはほぼない。
まあ、あるとしたら俺か星華さんどちらかがちょっと方向性が違う可能性くらいか。
だとしたらこれが最も安全な相手ってことか。
そんなことを考えている透は気づいていなかった。
その言葉の続きを言うか言わないか迷っている星華に。
その顔はとても暗かったが、その顔をすぐに変えさっきのような、笑顔を浮かべて、言う。
「それに、もし私たちが異世界から現実世界に帰る方法が見つかったときに一緒にいた方が都合がいいでしょ!」
この世界から帰る、か。
うーんと。
なんていうか、俺に関しては自分からこの世界に来たというか、確かに星華さんからしたら帰れる方がいいのかもしれないな。
まあ、もしそんなときが来たら、俺はどうするのだろう。
まあ、そんな時は来ないだろう。
「――――――――――――」
ん?何か聴こえたような。
まあ、疲れているのだろう。
気のせいかな。
とりあえず、星華さんと、連合を組む事になったのだった。
「星華さん!連合を組む時に手続きとかあるんですか?」
「まあ、あるねー。だけど、その前にローアさん………私の店の人と少し話してからかなあー。」
「それもそうですねー。あ、」
「ん?透さんどうかしたの?」
「え?あ、なんでもないです。」
別に、店の人っていうところから、支配者のことを思い出したわけじゃないんです。
そういえば、支配者と俺、怪我しないで無事に帰ってくるって約束してたんだ。
めっちゃ元気にはいっ!って言って混沌の核に行ってしまったのにも関わらず、この様である。
ていうか、ほんっとになれないなー。
この視界。
片目を失うっていうことは想像しているよりもかなりダメージが大きいようである。
今も違和感がとてつもない。
支配者に会う前に眼を治した………って。
今、俺は喉から出かけた言葉を飲み込んだ。
まあ、今話すようなことじゃないしね。
助けてくれただけで本当に幸せなことだからね。
「あの、すみません。ここって星華さんの店なんですよね?」
「そうだねー。」
「だったら、その店主さん………ローアさんにも挨拶をしておきたいっていうか。」
「んー、わかったよー。ってそうだそうだ!」
突然、星華さんが叫んだ、何かを思い出したように手を叩きながら叫んだ。
本当に突然だから衝撃である。
何かあったのなら聞いた方がいいかもしれない。
「ごめんね!」
そう、思っていました。
そう、自分から声をかけられる、そんなことを思っていました。
まさか、こうなるとは思わないじゃん。
星華さんがごめんと言った瞬間。
気づいたら俺は星華さんに引っ張られていた。
それもすごく乱暴に、今も部屋のものにぶつかるときもあるのである。
星華は、忘れていたのである。
彼が片目になっている理由について、彼が起きたら話そうとローアさんに言われていたことを。
彼が起きたことに驚きすぎてそのことを忘れていた。
それに、彼がなんでも聞くというので、連合について話してしまった。
ローアさんから話は聞いていたが、作るつもりはなかった。
だって私は――
なのに、彼はなぜか嫌な気がしなかった。
不思議である、こんなのは久しぶりの感覚だ。
うーん、片目の透さんを歩かせるのはちょっと酷な気がしないわけではない。
だからといって抱っことかおんぶとかをするのは違う気がする。
あ、そうだ。
手を繋いで引っ張っていけばいいんだ。
星華はたまに抜けてるところがあった。
そんな星華に引っ張られている透の目は片目しかないが死んでいた。
「ローアさん!透さん起きました!」
「そうか、それは良いことじゃな。おはよう、少年。」
「おはようございます。本当にありがとうございます。」
「そんなにかしこまらなくてもいいんじゃよ?少年。礼を言うならば、それこそそちらの星華にいうといい。」
「ありがとうございます!」
「どういたしまして。でも、部屋で散々聞いたから、もう大丈夫だよー。」
急に引っ張られていた時はこれから何をされるのだろうかと思っていたが、ローアさんの方へ向かっていたなんて。
正直想像できなかった。
「にしても、ものすごい登場の仕方だったな。」
「え、そんな。私は普通に来たつもりなんですけど?」
「これが普通に見えるのだとしたら、私は星華の正気を疑うよ。」
そう言われた星華は自分が進んできた道を振り返って見た。
そこには、少し凹んでしまった壁、装飾品の残骸(少量)があった。
それを見ていた星華さんの顔は少しずつ青くなってきて、
「ご、ごめんなさい〜。」
と弱々しく謝っていた。
それを見ていたローアさんはハァとため息をついたあと
「給料は没収、それが今回の罰だよ。」
と言ったのだった。
今回の、というのが少し気になるところではあるが、それ以上になんで星華さんがここまで焦ってローアさんのところに俺を連れてきたのか、それがわからない。
「あの、星華さん。なんで俺をあんなに急いでここに連れてきたんですか?」
「あんなに急いだのはごめん。」
「別に気にしなくても大丈夫です。」
「それと、理由は―」
「少年、君の目の話についてじゃ。」
食い気味にローアは言った。
その目は先ほどのような暖かい雰囲気から、鋭いものへと変わっていた。
「俺の目について、ですか?」
「そうじゃ。まず、君はなぜ自分の体の傷が治っているのにもかかわらず目だけが治っていない事に違和感は感じているじゃろう?」
申し訳ないけど、全く感じていませんでした。
確かに、不思議である。
俺の腹は串刺しにされていた気がするのだが、気づいたらその穴は塞がっていた。
まず間違いなくポーションのおかげだろう。
だが、そのレベルのポーションなら目を治していてもおかしくない気がしてしまう。
だけど、現に俺の目は治っていない。
今まで違和感は感じていなかったが、今感じているから
「はい、正直なところ感じていました。なぜ、腹の傷は治っているのにもかかわらず目が治らない事について。」
俺はいつになく真剣な顔つきで言った。
「なんで私に聞いてくれなかったんだろう?………」
星華さんが何か小さな声で言っていたが気にしない事にした。
すると、満足そうにローアさんは頷いたあと
「そのわけについて、今から説明するとしよう。」
「はい、お願いします!」
マジでそのわけがわからないのでそれを説明してくれるのは嬉しい事である。
支配者には申し訳ないが帰るのはもう少し後になりそうである。
「まず、君は自分の目に毒を食らったのかい?」
「はい、、痛みで記憶が少し曖昧ですが、間違いなくそうだと思います。」
「そうか、それはおそらくあのクリーオンにやられたのじゃろう?」
くりーおん?
誰だろうか?
おそらく、あのサソリのことだろう。
「はい、クリーオンにやられました。」
「実はあのクリーオンの毒にはな、少し厄介な効果があってのう。」
「どんな効果なんですか?」
「それは、毒によって破壊した部位の分ステータスのhpを下げることじゃ。」
ステータスを下げる?
けど、おそらくそれは………
「それって、ダメージを喰らってhpが減るのとはわけが違うってことでいいですか?」
「左様じゃ。クリーオンの毒はhpの最大値を減少させる効果があるのじゃ。しかし、それは毒によって部位を破壊しなければ起きないのじゃ。故に、おそらく他にもかけられたであろうさまざまな部位はまだ破壊されていなかったから、まだ回復したのじゃ。だが、眼球はどうやら破壊されてしまったようじゃのう?だから、眼のぶんのステータスが減り、目が回復しなくなってしまったのじゃ。」
うーん、と。
簡単にいえば、目は破壊されたから治りません。
hpの最大値は今の片目を失っている状態に固定されてしまいました。
だから、hpが最大になったとしてもこの状態が限界です。
これから隻眼生活頑張ってねー。
ということか………。
「それってもう、治らないんですか?」
「いや、そうとも限らないのじゃ。」
「え、てことは治る可能性もあるといことですか?」
「まあ、そうじゃな。じゃがそれも簡単ではない。たしかそれは……」
ローアさんは何かを思い出すように、頭に手を当てていた。
はっきり言って、マジで目の存在は大事だから、なかったら困る。
そうして、ローアさんは
「レベルアップじゃな。」
「レベルアップ?」
レベルアップだけならすぐできるような気がする。
先ほどローアさんは簡単ではないといっていたが、そこまで難しいだろうか?
違和感を感じる。
そんな透の違和感は違和感のまま終わるわけがなかった。
「正確にいえば、何度も何度もレベルアップを重ねることじゃろうな。」
「え?マジですか。」
「マジじゃ」
「ちなみにどれくらいレベルアップすればいいとかは……」
「すまんのう。私にもそれはわからないんじゃ。じゃが、たしか初めて眼を治したのはあの隻眼の少年………いや、今じゃ最強の黄金騎士じゃったかのう?あの少年のはずじゃ。それもたしかその時のレベルはたしか40とか50とかだった気がするのう?」
マジか、40とか50は俺にとってはかなり遠いレベルである。
現実的にどれくらい強いとかどれくらいかかるかは全く検討がつかないのである。
だが、やるしかないだろう。
まだ目が治る可能性があるのなら、諦める必要は一切ないのである。
「そうなんですか………教えてくれてありがとうございます!頑張ってみます!」
「そうか、やれるだけやるといいぞ。」
「はい!」
そうして、俺とローアさんとの目についての話は終わったのだった。
気まずかった。
2人が真面目な話をしている間私は黙っていた。
できれば連合の話しもしたいのだが、なかなかできる雰囲気ではなかったのでしなかった。
とりあえず、透さんの目が治る可能性がゼロではなくて素直に良かった。
そして、どうやら2人の話が終わったっぽいのでそろそろ私も話に入ろうと思う。
「あの、ローアさん。私、彼と連合を組もうと思っているんですけど、どうでしょうか?」
そうやって、私はローアさんに質問を投げかけた。
だが、次に聞こえた声は予想外の声であった。
「あの、星華さん。」
「え?」
私はてっきりローアさんが答えてくれるだろうと思っていたので、ローアさんではなく透さんが声を発したことに驚き素っ頓狂な声を上げてしまった。
そして、私が質問を投げかけていたローアさんはというと……私と同じように透さんが声を上げてことに驚いている様子であった。
そして、ごちゃごちゃしていた頭の中を整理した私は口を開く。
「どうしたの透さん?」
「いや、あのなんていうか。俺自身星華さんとその………連合?を組むこと自体には賛成っていうかできれば今すぐ組んでしまいたいくらいなのですが、俺にもその星華さんでいうところのローアさんのような人がいるので、そこを通してみないとわからないというのが現実で………」
「そうなんだ。」
まあ、ある意味当然でもあった。
私のように急に異世界に飛ばされてしまったら、まず最初は衣食住に悩むだろう。
実際、私もそれにかなり悩まされていたのだから。
それなのに、なぜ透さんは今も普通に生きていられているのか。
拾ってくれる人がいたからだろう。
まあ、自分で就職先を決めた可能性もあるにはあるが、それなら冒険者をしているわけがないからその線はほぼない。
それに知識もそこまでない無一文を雇う場所なんて、相当人手が足りないか、お人よしな場所しかないだろう、
だから、それに気づくことのできなかった自分に少し呆れつつ、私はそんな透さんの言葉を肯定した。
「わかったよー。それなら、君の主人に対しても相談しておいてね。私はできればいい返事を待っているよー。」
「はい!頑張ります!」
ふふ、そんなに頑張らなくてもいいのに。
だけど、そんな無邪気さが私には少し眩しく見えた気がした。
「この度は本当にありがとうございました。お二人方にはかなりお世話になってしまったので、この借りはいつか必ず返します!」
「そうかい。いつか必ず返してもらうとするよ。」
「透さんの主人さんによろしくいっておいてね〜。」
「それじゃあ、俺はそろそろ支配者の家に帰ろうと思います!」
そう言った後、透さんはさっきまでいた部屋に戻って自分の装備していた衣服や防具、武器をまとめた後。
「ありがとうございました!」
と言ってどこかに行ってしまうのであった。
本当に、優しい人たちだった。
俺があの場にいて一番感じたのはこれだった。
特に今まで何かしたわけではないのに、あそこまで優しくしてくれるだなんて、本当にありがたいことである。
できれば、支配者にはいい返事をもらいたいところである。
まあ、話をしていれば普通に了承してくれそうではあるんだけどね。
そんなことを考えながら俺は家に帰ってきた。
今更だが、ここに戻ってくるのはだいたい2日ぶりくらいだろうか?
少し心配である。
支配者が。
悲しんでいたりしないだろうか?大丈夫だろうか?
と思って、家に入るのを渋っていると。
「あ。」
支配者の家のドアが急にガチャリと開いた。
そこから出てくるのはもちろん支配者で。
どうすればいいのか迷っていたらご本人登場である。
透の首筋には冷や汗が伝っていて。
「あは、あはははははははは。」
と笑うことしかできないのであった。
そんな俺を冷めた目で支配者は見ていた。
そして、俺の全身を下からゆっくりと見ていく支配者は顔のあたり、正確にいえば目のあたりで一瞬驚いたように眼を見開いた。
そして、ハアアアアと長くて重たいため息をついた後、支配者はこう続けた。
「君はこの二日間何をしていたんだい?いつもよりかなり長い冒険だったみたいじゃないか?え?」
というのだった。




