表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/47

45.勇者 VS 魔王

 荒地には雷鳴が轟き、暗雲が世界を覆う。


 吹きすさぶ風の中、カイは大剣をかざし『それ』と対峙していた。


 女性の胴体ほどもある刀身には、握りこぶし大の七色に光る宝玉がはめ込まれている。


 それらが雷光を照り返し、七色にカイの顔を暗闇に浮かび上がらせる。


 眼前には海のような巨大な湖が広がり空の色を移し、まるでこの浮島が天空に浮かんでいるかのような錯覚を覚えさせる。巨大な角を蓄え、赤い目を爛々と光らせた小山程もあろうかという黒牛が白い息を吐き、一つ目の鬼が大斧を構えてこちらを見据えている。


 半人半馬の騎士が守るその後には、黒い龍に乗った男がカイを睥睨していた。


 カイと同じ漆黒の闇色の髪に黒い瞳。短髪でクセっ毛のカイとは異なり、真っ直ぐな癖のない髪を肩で切り揃えている。 黒に近い真紅の外套に星のような小さな石が明滅していた。それら一つ一つが、魔王の力の欠片である。


 極悪非道を極める魔王アキラは覚醒後、あらゆる都市を魔物の群れで攻撃した。


 ある街は地上から姿を消し、王城はあとかたものなく吹き飛ばされた。


 こうなると最早クロノ教団もマリナーラたちもいがみあっている場合ではない。


 突如この世に具現化した魔王を倒すために、一同は手を組み、ここまで魔王を追い詰めたのだ。


 最後は勇者カイが魔王を倒すのみ。


 荒地で静かにカイを見下ろすと、魔王は厳かに言った。


『勇者カイよ、汝何故に我と我が同胞に刃を向けるか』


「知れたこと!」


 一歩踏み出すと、カイは高らかに答えた。


「勇者である私が魔王であるお前を倒すに理由がいるか!」


『愚かな』


 あくまで涼やかに、静かに笑うと魔王は小さく指を動かした。


 途端に空を縦横無尽に駆け巡っていた雷が一本の柱となり、カイに襲い掛かる。


 カイは振りかぶった大剣でそれらを受け流すと、逆に炎の柱を剣に宿して魔王目指して駆け寄った。


『汝の信じる未来と我の信じるこの先。どちらが正しいのか、決してくれようぞ!』


「これで最後だ! 魔王!」


『ぎゃあああっ!』


 勇者カイによる一撃をくらい、魔王アキラは地に倒れた。


 毒々しい蒼い血が荒地を染める。


「か……った……」


 わきたつ歓声の中、勇者カイもまたその身を地面に横たえた。


 魔王の姿が徐々に消えていくのと共に、勇者の体も透けていく。


「カイ!」


 異国の民族衣装を身に着けた女性が駆け寄る。


「ミユ……」


 駆け寄ってきた少女に勇者は笑いかけた。


 それが最後に勇者に残された力だった。


 カイの身体が少しずつ薄れていく。


 わっと彼の頭を抱えて泣き出す少女。


「これで世界は救われました」


 シスターのマキが胸の前で手を組んで祈りを捧げる。


「勇者と魔王、二人の尊い死を持って……」


 一人、一人と世界の誰もが祈りを捧げ始める。それはルビーたちマリナーラも例外ではなかった。


「カイ、聞こえる? 世界は今ひとつになったよ。


 お前の求めていた世界が、今生まれたんだ」


 消えゆくカイは最後の力を振り絞って、少女にだけ聞こえる声で囁いた。


「お前……化粧濃すぎ」


「うるさいっ!」


 ミユの苦情は、消えるカイの耳には届かなかった。

お楽しみいただけましたら、嬉しいです。

「面白かった」「続きが読みたい」など感じていただけましたら、

広告下の「ポイント」で「★」~「★★★★★」で応援いただければ幸いです。

励みになります!

よろしくお願いいたします。m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ