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35.勇者と魔王

 静かに船が離れていく。


 海面から立ち上り始めた霧に霞む眠りから覚めようとする船を見やりながら、アキラは呟いた。


「お前、なんでこっちに着いて来たんだ?」


 一緒に客船を見送っているミユに尋ねると、ミユは大きな瞳を満月に輝かせた。


「一緒に見てくれる人がいる月がいいって、言っただろ」


「……そうだったな」


 ミユの頭を撫でると、アキラは月を見上げた。


「……で」


「なんだ?」


「なんでお前まで一緒にいるんだよ……」


 甲板に座り込んで剣を磨いているカイにジト目を向けるアキラ。


 そんなアキラの様子を横目で見ると、カイは答えた。


「確かにお前の選択の邪魔はしないと言ったが、私がついていかないとは一言も言ってない」


「この減らず口勇者が……」


「お前としても、見ず知らずの人間の中にいるのは心細かろうよ」


「なにおう……」


「私がいなければ、お前ルビーやシオンとまともに話すことも出来ないだろう」


「うっ……」


「図星か、この引きこもり魔王め」


「ううう……っ」


 返答に窮したアキラは唸ることしかできなかった。極度の人見知りは、そう簡単には治らないのである。


「勝手にしろ!」


 スタスタとカイの横を通ると、アキラは船室へ下っていった。


 カイの横を通りざま、ミユは小さく言った。


「また、アキラを助けただろう」


「別に」


「あのまま首都に向かっていたら、絶対アキラは助からない。


 お前は前に『このままアキラを殺せば罪人になる』と言った。


 お前は間違いなく王の勇者だ。王の命には逆らえない。


 だからお前が腕が立つとは言っても、王軍には刃を向けられない。


 船が首都についてしまえば、アキラを助ける手段はなくなる」


「お前がそう思うのなら、そう思っているといい」


「そして今も、アキラについてきた。


 お前が言ったように、マリナーラに行ってもアキラの身の安全が約束されるとは限らない。逆にアキラの性格を利用して意のままに操ろうとする輩も出てくるだろう。お前は結局、全力でアキラを助けようとしている。なぜだ。お前は勇者としての矜持を捨ててはいないのだろう?」


「お前こそ、何を考えているのかあたしにはわからない」


「黙れ。お前がアキラの身を守っているうちはいい。ただアキラに何かしようというのなら……」


 ざわざわとミユの髪が風もないのにざわめいた。


「馬鹿なことを」


 ふっと鼻で笑うと、カイはミユを鋭い目で見つめた。


「アキラは私に倒されるのだ、他の誰でもないこの勇者カイに、な。


 それまで誰かに害されたりすることは、許さない」


 ぎらり、と刀身が月明かりを浴びて光る。


 剣にはめ込まれた七色の宝玉がオーロラの光を放った。






 一人の男が、頭を抱えていた。


 そこは壁も天井も家具も、全てが同じ暗い色合いの素材で作られていた。


(ここはどこだ?)


 アキラはその様子を、遥か頭上から眺めていた。


 おかしな風景だ。


 これだけの高さから部屋を見下ろすことは、作りからいってできるわけもない。


(そうか、これは夢なんだな)

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