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34.一縷の望み

「基本的に徒党を組んで戦うときに手を組むぐらいの仲なんだ」


「あまり重要な情報を共有したりすることはないっす。

 ちなみにあなたの情報は、マキを張っていたうちの手下が港町で船乗りの少年から聞きだしました」


「あいつか……」


 若返りの薬の話をしていた少年を思い出し、アキラは舌打ちをした。


 まさか自分を追ってくる者がカイ以外にいるとは思っても見なかったし、誰が魔王の話などを信じるかと思って油断していた。


「あの口の軽さからみるに、首都の偵察員たちにもこの情報は知れ渡っていると思ったほうがいいっす」


「王城に連れて行かれれば、有無を言わさず魔王として殺されるだけっす」


「どういうことだ」


 カイの言葉にルビーとシオンは顔を見合わせた。


「やはり勇者には首都の情報は殆ど与えられていないようだな」


「魔王にも、ですね。予想通りではありますが」


「……どいつもこいつも」


 一同は声の主、アキラを振り返った。


「いきなり家から追い出されたかと思ったら、こっちに来い、あっちへ行け。崇拝されたり


命を狙われたり……。いい加減にしろよ!」


「しかし、これがお前の求めていた『やれること』ではなかったのか」


 激昂するアキラにカイは涼やかな視線で言った。


「何か自分にやれることがあるのなら、やってみたい。確かお前そう言っただろう」


「カイ……」


 腕を組みじっと自分を見つめるカイにアキラは言葉を失った。


「それにお前、今まで一度でも誰かに何かを強要されたか。


 私の特訓にしてもこの船旅にしても、お前は本気で抗えば逃げ出すこともできただろう。


ここまでの道も自分で決めてきた、違うか」


「あ、ああ……」


「新しい情報がお前の目の前にある。


 しかも今度は今までと比べ物にならないくらい『魔王』に近い『やること』を知ることができるかもしれないぞ。私が課してきた『お使い』レベルの話とはわけが違う」


「お使いレベル……」


 岩山の特訓を思い出すアキラだが、珍しく能弁なカイの言葉を待った。


「さあ、どうする。私はお前の選択を邪魔したりはしない。


 お前の今の選択肢は二つ。


 このまま船に乗って首都へ向かうか。それともマリナーラの船に乗り、奴らの砦で話を聞くか。どちらもその後、お前の自由が尊重される保障はないがな」


「ここから逃げるっていう選択肢もあるぞ」


 ぽんぽん、と船の腹につけられた救助船を叩くミユにアキラは乾いた笑いをこぼした。


 ミユの顔は至極真剣だが、舟遊びもしたことがない人間には少し難しい話だ。


「いや、もう逃げるのも飽きたよ。逃げ続ける余生も随分短くなったしな」


 苦笑するとアキラはシオンとルビーを見つめた。


「俺は多分、あんたらが思っていることは何一つできないと思うぞ」


「そうかもしれんな」


 ルビーは真面目な口調で頷いた。


「実は我らもそれほどにお前に期待をしているわけではない。お前にとってそうであるように、我らにとっても魔王の存在は御伽噺の中の幻想にすぎないのだ」


「それでも、その幻想に一縷の望みを託さなければならない状態にあるんす。この国は」


「俺には知らないことが山ほどあるようだな。……いや、違うか。知ろうとしなかったことが山ほどあるんだな」


 静かに言うアキラに、シオンとルビーが意外そうに目を見合わせた。

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