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32.海賊の事情

「まぁ、そう思われてもしゃあないんですけどね」


 ガリガリと頭を掻くと青年は肩をすくめた。


「とりあえず、説明さしていただきたいんで、そっちの兄さんの剣、納めていただけないですかね」


「そちらが先に引くのなら、引こう」


「はいはい」


 二つ返事で剣を納めるシオンにカイは剣を納めた。


「シオン! なぜ簡単に剣を納める」


「喧嘩しにきたわけじゃないでしょ」


「む、そうだったか」


 拳銃をホルスターに納めるとルビーはシオンの隣に並んだ。


「あたしらは反王権団体マリナーラってんです」


 シオンの名乗りにアキラは小さく目を見開いた。


「へぇ、海賊じゃなくて……、それ、テロリスト団の名前じゃないか!」


「よくご存知で……」


「ま、一応港町の宿屋の息子だからな」


 頬を掻くアキラ。


「テロリストってのはひどいですなぁ」


「全くだ。我らは世界の安寧のために日々戦っているというのに」


「いきなり他人に拳銃ぶっ放しておいて言う台詞か!」


 叫ぶアキラにシオンはちらちらとあたりに目を配った。


「他の船員が出てこないって事は、マキの呪禁がまだ効いてるってことですね」


「呪禁?」


「何だ、気が付いていなかったのか」


 疑問符を浮かべるアキラにカイはふん、と鼻を鳴らした。


「あれだけドンパチやっていて、船員たちが飛び出してこないのはおかしいと思わなかった


のか。船全体に『眠りの魔法』がかけられている。もう小半時は誰も起きてはこられないんじゃないのかな」


「お前といいマキといい、一般人の俺にはお前らのほうが化け物じみて見えるけどな……」


 こともなげに言うカイにアキラはげっそりと言った。


 カイはその言葉を綺麗に受け流した。


「そのテロリスト団が何でクロノ教団に攻撃をしかける?」


「いや、攻撃したくてしたんじゃないんす」


「あんなのはただの挨拶だ。黙って近づくとあの女、クラーケンでこちらの船を沈めかねないからな。『あら、ごめんなさい。味方の船だと気が付きませんでした』とかな」


「クロノ教団はあたしらの組織の賛同組織なんすよ」


「あんな奴らと一緒にするな!」


 くるりとシオンを振り返ると、ルビーは拳銃を高々と掲げた。


「私たちは非暴力をモットーとして話し合いによる解決を求めている、いわばニワトリ派!」


「鳩派って言いたいんだと思います」


 こっそりとシオンがアキラに耳打ちをする。


「破壊と暴力による解決を手段とするあいつらとは、もともと目的が同じでも相容れんのだ!」


「民間船に向かってばかすか砲撃していたのが鳩派だとは思えないんだがな……」


「だからって!」


 アキラのぼやきをかき消す大声でシオンはルビーに怒鳴った。


「マキが迎えに来た魔王を横取りなんかしたら、内部分裂は避けられないじゃないですか!」


「あいつも抜け駆けじゃないか。


 それにあんな暴力集団に魔王を渡したら、明日には首都は火に包まれるわ!


 って言うか、その間に龍王が殺されてしまうかもしれん!」


「お取り込み中なんですが」


 好々爺然とした笑みを浮かべてアキラは片手を挙げて割り込んだ。

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