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31.海賊・ルビー

「お前がこの船の船長か?」


「そう見えるか?」


 苦笑いするアキラにルビーは首をかしげた。


 赤いビロード地の幅広帽子にジャケット。白い乗馬ズボンに赤い革のブーツ。


 とどめに片目に眼帯をしているが、時折ずれて直しているので実用的なものではないよう


だ。


 十人に聞いたら九人は「あ、海賊だね」というわかりやすい衣装である。だが、


「……女?」


 まだあどけなさを残した顔は、そうアキラたちと年齢に差はなさそうに見える。少なくとも、マキよりは年下だろう。


「女だから?」


「うわっ!」


 言うなり拳銃が火を噴いた。ミユが思い切り髪を引っ張るのが遅れれば、アキラの頭は吹っ飛んでいただろう。


「な、お前!」


「はっ、よく避けた!」


「……貴様」


「わっ!」


 一足飛びで目の前に立ち塞がり下段からなぎ払われたカイの剣に、ルビーは飛び退った。


 返す刀で刃が胴体を凪ぐ。


「くっ!」


 ルビーは腰に手を回すと、ベルト代わりに巻いていた鞭をしならせた。


 まるで生き物のようにうねった鞭がカイの刃に絡みつく。


「む」


「ふっ。取った!」


 着地して鞭を引き絞り笑うルビーだが、カイはつまらなそうな目でそれを見やって刀をひねった。


「えっ?!」


 半回転ほど剣を回したところで、まとわりついていた鞭がバラバラに切れて飛び散った。


「鎖蔦の茎を紡いだ特製鞭が……」


「はっ!」


 一瞬呆然としたルビーの眼前にカイの大剣がきらめく。


 ルビーの大きな鳶色の瞳がこぼれんばかりに見開かれた。


「カイ!」


「お壌!」


「……!」


 頭上に気配を感じ、カイはその場を離れた。


 同時にカイがいた甲板が十字にさけ、飛び散った。


 あの高さから飛び降りたとも思えない軽い着地をした男は、両手にしなった刀を二本、交差に構えていた。


 ルビーとは対照的にさっぱりとした漁師風の出たちをして、腰のベルトに幅広のナイフを刺している。


「勝手に一人で行かないで下さい!」


「シオンか。心配などいらん。このルビー様の二丁拳銃に叶う者はそうはいない!」


「二丁って……お前一丁しか持ってないじゃないか」


「あれ?」


 アキラに言われ右手の拳銃を見て不思議そうな顔をするルビーに、シオンはイライラと告げた。


「あのマキ相手に無茶をするのはやめてください。


 しかもこんな手練れ相手に何やってるんですか」


 カイの姿を凝視しながら言うシオンにルビーは肩をすくめた。


「マキはどうやらもう逃げた後のようだったから良かったようなものの……」


「なにっ!? あの女、逃げおったのか! おのれ卑怯者め~!」


「気が付いていなかったんですか……」


 シオンは盛大にわざとらしいため息をついた。


「お取り込み中、何なんだけどな」


 地団駄を踏むルビーをジト目で見ながら、アキラはシオンにたずねた。


「あんたら、海賊?」

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