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16.招かれざる者

「まおー」


 魔の抜けた声が空に響き、満点の星空を埋め尽くす暢気な顔が視界いっぱいに広がった。


「……よくここまで来られたな」


「何言ってんの。私は狩猟民族の娘だ。お前のような街の男が来られるところにあたしが来られないわけがない」


 ウロの横に伸びている太い横木に腰掛けると、ミユは星空を仰いだ。


「街の近くでもけっこう見えるものだな、星」


「山に行けば、もっと見られるのかな」


「ここでの月と星はチカチカ、だけど山ではギラギラだ」


「そんなに違うのか」


「別物だ」


 まるで自分のことを自慢するように誇らしげに言うミユ。


「山は凄い」


「そんな凄い山から、なんで街になんて下りてきたんだよ。まったくカイといいあんたとい


い、そんなに魔王ってのは倒したいものなのか」


「魔王というのは、全部の魔物の王なのか。


 どんな魔物をも屈服させる力を持っているって聞いたが」


「伝説ではそうらしいな」


「それなら魔物は、魔王のことが好きなのか」


「なんだって?」


「その人の言うことを聞くということは、そういうことではないのか」


「魔物は魔王が好き、か。そんなこと考えたこともなかったな……」


 畏れる存在、恐れる存在、とそんな話ばかり聞いてきた気もする。


 アキラは不思議そうな顔をしてこちらを見つめてくるミユに、頷いた。


「じゃあ、魔物にとっては魔王はいて欲しい存在なのかな」


「見方を変えればそうなるのかもしれない」


 ミユは横木に座って足を投げ出し、空を仰いだ。


「どっちがいいのかは、その人、いやその魔物次第だろう」


「そういうもんかね。お山と街、お前はどっちがいいんだ?」


「そうだな……」


 ミユは歌うように言った。


「誰かと一緒に見られるなら、そっちがいい」


「山では誰と見てたんだ」


「……山では」


 言いかけたミユの顔がはっと強張った。厳しい目つきで闇を睨み付ける。


「魔王」


「いい加減名前で呼べよ」


 ウロから顔を覗かせるとアキラは髪を撫でる風の匂いを嗅いだ。嗅ぎなれない匂い。しかし独特の鼻の奥をくすぐる刺激があった。


 ウロの縁を握るミユの指が白い。


「あいつが……来る」


「あいつ?」

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