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14.山の巫女・ミユ

「きゃん!」


「……昼間から物騒だな。なんだこの女は」


 怪訝な顔で見下ろすカイに地面に座り込んでいた少女はきっ、ときつい視線を向けた。


「おのれ、私の邪魔をするとは……お前も魔王の仲間だな!」


「あ、お前それは……」


 勇者には禁句、という間もなく、カイのチョップが少女の脳天を直撃した。






「お前、馬鹿みたいに強いんだから加減しろよ」


「している。していなかったら今頃この女の頭は割れている」


 物騒な会話に、ミユはとびおきた。


「な、な、何の話をしているのよ!」


『あ、目を覚ました』


 洞窟の中、焚き火で煮炊きしていた二人の少年がミユを振り返った。


 辺りはすっかり暗くなっており、洞窟の入り口からは冷たい風が吹き込んでいる。


 自分の体に毛布がかけられているの気が付き、慌ててミユは引き上げた。


「あ、あんたたち誰」


「誰って、お前覚えていないのか」


「いきなり頭を殴られりゃ、混乱くらいするだろ」


 呆れたような声を出すカイを押しのけ、アキラは椀に盛った汁をミユに差し出した。


「食えるか?」


 暖かい湯気と美味そうな香りにミユの腹が鳴る。そういえば朝に干し肉を齧ったくらいで、ロクな食事をしていなかった。


「ありがとう」


 素直に礼を言って椀を受け取ると、ひ弱そうだが人の良さそうな目の前の少年にミユは尋ねた。


「ところで私が仕留めたはずの魔王はどうなったんだろう。確かモーニングスターで殴りつけたはずなんだけど」


『は?』


 少年たちはまた声を合わせた。よほど気が合うらしい。


「……自分が襲い掛かった相手の顔も覚えていないのか?」


 不快そうにカイに言われ首を傾げると、ミユは懐から眼鏡を取り出してかけた。


「……わっ! 魔王!」


 椀を放り出して後ずさりすると、ミユは武器を探して辺りを探る。


「お前みたいな物騒な奴の側に武器など置くか」


 傍らに置いたモーニングスターと弓矢を掲げてみせるカイに、ミユはぷっと頬を膨らませた。


「おのれ……。気絶している間に武器を奪うとは、益々もって卑怯な」


「ひっくり返ったお前を風の当たらないところに運んで食事も与えた私を卑怯呼ばわりか……」


「私たち、だろ。実際背負ったの俺じゃん」


 頬を引きつらせるカイをなんとかなだめて、アキラはミユを振り返った。


 丸い眼鏡に焚き火の光を反射させながらミユは言った。


「……魔王、背中に生えていた岩はどうした?」


「だから、普通岩が背中に生えているわけないだろ。アレは背負ってたの」


「岩を背負わせておいてよかったな。あれがなければ矢に射抜かれていただろう。


 ……今度から背負いだけじゃなくて正面にもぶら下げるか」


「やめてくれ、特訓で死ぬ!」


 言い争っている二人にミユは呆然とした声を漏らす。


「化け物じゃない……。人間なのか? 魔王じゃなかったのか」


「いや、魔王だ。脱・引きこもり中の」


「余計な注釈つけるな!」


 至極真面目に言うカイをアキラは怒鳴りつけた。


「そして私は勇者・カイ」


「え? 勇者? 魔王の手下じゃなくて? で、魔王は化け物じゃなくて、勇者が魔王に特訓……?」


 混乱してきたらしく眉をしかめるミユに「そりゃそうだよな……」と呟いてアキラは説明を始めた。

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