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近くのようで遠いクラスメイト  作者: いちごモンブラン


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9/15

過去 1

ある男の記憶…

その男、斎藤裕也は暗い生徒だった。中学校に上がっても友達も出来ず、休み時間など授業以外の時間は本を読んで過ごしていた。

彼が中学二年生になってすぐのことだ。多くの生徒はクラス割が発表され、自分のクラスは何処なのか、誰と一緒になれたか一喜一憂することだろう。だか、彼は全くといっていいほど無関心であった。中学二年生にしてそれほどまでの人間はどれほどいるだろう。彼は諦めていた。友達も、ましてや恋人も。

それを振り払ったのは、単純なものであった。隣の席になった。倉瀬麻耶である。2人が同じクラスになったのはこれが初めてで、勿論、面識はない。なんてことのない同じクラスの女子。それだけだった。

新学期すぐのこと、いつものように休み時間に本を読んでいると倉瀬麻耶に話し掛けられた。

「それって、最近発売された小説だよね。」

そんな風に話し掛けられたのは初めてなので、斎藤裕也は声が出なかった。

「どう、面白い?面白しろかったら後で貸してよ。」

倉瀬麻耶は構わず話しを続ける。

自分に興味を持つ人間がいるなんて。まだ中学生だか、そんな人間はいないとさえ思っていた彼には驚きと興味が湧いた。




「これ面白かったよ。良ければ貸そうか?」

後日、倉瀬麻耶に小説の貸し出しに付いて話し掛ける。

女子に話し掛けるのは勿論初めてだ。ちなみに貸し出しの話をする為、とんでもないスピードによって1日で読破した。

「有難う。楽しみだな〜。」

倉瀬麻耶は微笑みながら、返事をする。

その瞬間、斎藤裕也の脳内に雷が落ちる。簡単に言えば、恋をしたのである。単純だろうか…。それでも中学生が恋をする瞬間なんてそんなものだろう…。いや、そうじゃなくてもかもしれない。

それからの斎藤は一生懸命にアプローチをした。少しでも倉瀬に近づきたい。その先に行きたい。恋の原動力は暗かった斎藤を前向きに変えていった。

そして、夏休みの前日。終業式の日に彼は告白をした。

返事はOK。つい数ヶ月前まで、教室で本を読んでいた少年は見事、リア充への階段を登ったのである。

「これからよろしくね。」

「こちらこそ。」

2人は連絡先を交換した。好きな人と付き合うことができた。努力すれば結果は付いてくると、そう確信をするには充分であった。この夏休みには沢山、倉瀬と遊ぼう。



そう考える彼は知らない。自分を変えてくれた人はきっと聖人である。そう錯覚してしまう人間の性というものを彼は知らない。









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