変わっていく日常
「斎藤くんはどこに住んでいたの?」
ホームルームが終わると斎藤はクラスメイトに囲まれていた。
「もう少し都会の方。でもここら辺はやっぱりいいね。自然が多くて。」
「じゃあ今度、都会に行くことがあったら案内してよ。」
「俺で良ければいいよ。」
斎藤はすでにクラスに馴染んでいる様子だ。昨日、気にしないとは思ったもののやっぱり気になる自分もいる。
倉瀬とどんな関係だったか、唯の友達には見えなかったけど…。
「裕也くんは相変わらず人気だね〜。」
クラスのみんなに囲まれている斎藤を横目に倉瀬はそんなことを呟いている。
…その言葉の裏に何か特別なものを感じてしまうのは自分の心の弱さゆえか…。
このままうじうじ考えていてもしょうがない…。僕は意を決して倉瀬に尋ねてみることにした。
「倉瀬って斎藤とどんな関係なの?」
口にした瞬間、身体が強張る。問いの間の時間がやけに長く感じた。
「んー、なんて言うのかな。まー、有体に言えば元彼かな?」
全身の体温が空気中に抜けていく。軽く目眩もしてきたような気がする。
元彼、元彼、元彼、反芻する言葉を頭で整理しながら、次の質問をする。
「じゃあ、なんで別れたの?」
…今にして思えば、こんな質問はかなり失礼だった。どんなに気になっていても軽々しく聞いていいものではない…。
「別に。昨日も裕也くんが言ってたけど転校だよ。」
僕の質問が気に障ったのか少しむっとした表情で答えた。
「ごめん。無神経だったね。気になっただけなんだ。」
今現在付き合っていないなら問題ない。それだけ分かれば十分だ。
「そういえばさ、今度の文化祭一緒に回らないか?」
話しを強引に変えようとして、とんでもないことを口にしてしまった。
週末、うちの学校には文化祭があるのだが、クラスの出し物がメイド喫茶に決まっていた。古
いというか一周回って新しいというか。ともかく、倉瀬のメイド服が見られるというので楽しみにしていたのだが。
「んー、当番がない時ならいいよ。」
少し考える顔をしながら、倉瀬は答えた。
その間が怖いと感じてしまうが、僕はかねてより考えていた計画を実行に移すことにした。
文化祭ではいたる所で告白イベントが起こる。なんでも成功する確率が上がるんだとか。僕もその逸話にあやかろうという理由だ。
「じゃあ、約束。」
そういうと転校生のことはすっかり忘れて、文化祭での告白に集中することができた。
…大丈夫、きっと大丈夫さぁ…
心に残る不安は完全には消すことはできない。




