過去 4
いらいらが止まらない。
人を値踏みするような態度。いったいどうゆうつもりだ。
トイレを済ませてもなお不機嫌を募らせてた俺は自らの席に戻る。
隣の席では麻耶がクラスの女子と話をしていた。麻耶は特別友達が多いわけではないだろうが、それでも俺と比べたら遥かに多い。その中でも清水と今話しをしている細田は特に仲が良いらしい。
「それにしても麻耶とも夏休み遊びたかったよ〜。」
「ごめん。忙しくて。」
「うちも、明美も残念がっていたよ〜。」
…明美というのは清水の下の名前のはず…にしても妙だな。この2人を差し押いて、遊びに行く程仲がいい友達がいただろうか…。その時、頭の中にある考えが浮かんだが、すぐさま否定した。
(なにを考えているんだ俺は…。)
あの倉瀬麻耶だぞ。俺を変えてくれたあの娘に限って、そんなことはない…。きっと勘違いさぁ…。…俺はこの後、放課後に麻耶に伝えなきゃいけないんだから…。気を引き締めるなくては…。
最後のチャイムがなる。学校の終わりに気の抜けたようなクラスのざわめき。各々、部活やら帰宅やらに向かうが俺はここからが正念場である。
「ちょっといいかな?」
隣の麻耶に朝の話を持ち掛ける。
「朝に言ってたことだよね?いいよ。」
そういうと俺達は、誰もいない校舎裏へと歩みを進めた。
「転校することになった。」
ストレートに伝える。こねくり回しても仕方がない。
「親の都合でさ。ほんとにごめん。」
俺には謝ることしか出来ない。せっかく付き合うことが出来たのに…。
「転校するって…どの辺に?」
「隣の県になりそうなんだ…」
怖くて、麻耶の顔を見れない。いったいどんな顔をしているのだろう…。泣いているのだろうか…。そうに決まっている。俺も同じ気持ちだ。別れたくなんてない。遠距離でもいい。麻耶と恋人のままでいたい…。
「だからさぁ、もし良かったならなんだけど…」
その言葉を口にしようとした瞬間、麻耶が口を開いた。
「そっか〜。じゃあもうお別れだね。」
…意識が固った…。今、なんて。あわてて顔を上げて、麻耶を確認する。そこには、俺との別れを悲しんで、涙を流す姿が…。
「残念だよ。せっかく付き合えたのに…。」
…そんな姿はそこにはいなかった…。いや、正確には悲しんではいる。だが、これは…。
「転校はいつ?」
「10月になる。」
「そう。じゃあ、それまで宜しくね。」
…そこには一切の未練なんてものは感じられず、俺の足元は音を立てて崩れていった。




