過去 3
俺は悩んでいた。どうやって麻耶に伝えようか。
結局、夏休みに遊んだのはあれ一回きりだった。なんというか誘いずらかったのだ。本当はもっと会っておくべきだったのかもしれない。麻耶も予定が詰まっているらしく、わがままを通すべきではないと自分に言い訳をしていたら新学期になってしまった。
このままではいけない。転校するのは10月だ。もう一ヶ月しかない。いや…!まだ一ヶ月もある。この残りの時間を使って、麻耶との思い出を沢山作ってやる。
そう意気込みながら朝ご飯をかきこみ、活きよく家を後にした。
学校に着くとすでに麻耶は教室に居た。
「おはよう、裕也くん」
「おはよう。なぁ麻耶、今日一緒に帰らないか?話があるんだ。」
「いいけど。話って…」
「その時に話すから…。」
俺は覚悟を決めた。今日言ってしまおう。引き延ばさない方がいい。
転校するとなると、今までなんとも思っていなかったクラスも名残惜しいと感じる。夏休み明けで各々まるで懐かし面々に会ったような雰囲気を醸し出している。久し振りに会った人との独特な距離感、そんな空気感も今の俺になら少し分かる。
思い出も何もないクラスだったが、好きな人に会えたそれだけでかけがえのないものだ。俺は心の中でお礼をした。
休み時間、トイレに行こうと席を立つと廊下で複数人の女子が話しているのを見掛けた。内容は分からなかったが、ろくでもないことに違いない。さっさと通り抜けてしまおう。そう思い早足でトイレに向かう。
「あっ、ちょっといい?」
…呼び止められた…。面倒くさいなぁ…。
「なに?」
「あからさまに対応しないでよ。」
しまった。態度に出ていたようだ。まぁ本当のことだし別にいいか…。
呼び止めたのはクラスで麻耶と友達の清水という女子だ。よく麻耶の机に来て話をしているのを見たことがある。
「君って、麻耶の彼氏なんだよね?」
なんだ藪から棒に…。俺のこと麻耶から聞いていないのか?
「そうだけど…」
少し誇らしいげに答える。何もない俺にとってそのことだけが取り柄だから。
「なるほど…、そういうことね。」
清水は自分だけ何かに納得したかのようだった。
あまりいい風に思われていないのだろうか。麻耶が俺のことを良く思ってなかってりして…。
不安になる俺に清水は予想外なことを口にしてた。
「あまり口出すつもりはないけど、入れ込みすぎないほうが身の為だよ。」
その言葉だけ口にすると足早に他の女子との会話に戻っていった。
…いったいなんなんだよ…。…わけわかんねぇ…。




