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086話 ルカ・ローハートという人物

 日没がやって来る。

 夜来の吐息が都市に吹きつける中、【夜光騎士団】団長キャメル・ニウスの助言により都市最西端への進行を続けるルカとポアロは道中様々な会話を交わした。特にルカは積極的に。


 まず分かったことはポアロの秘境(ゼロ)への侵入方法。ルカが強制召喚(レイドコール)によって秘境に引き込まれ、サキノがココの開く妖精門(メリッサニ)を経由して秘境の出入りが可能なように、ポアロも独自の侵入方法を持ち得ているらしい。

 ポアロ曰く重力場の歪み。その場にあるべき重力が機能していないような据わりが悪い感覚を催し、注視すれば時空の歪みを探し出す事が出来るのだという。例えるのであれば秘境(ゼロ)が建造物、外部から見える壁の罅割れが時空の歪みだ。その罅割れ――時空の歪みへと侵入する意志があれば秘境内部への侵入が可能だとポアロは話す。

 イマイチその感覚が理解出来ないと排するも「ルカりんにしか聞こえん水音も、意志関係なく強制入場も相当やで」と返され、澱を嚥下せざるを得なかった。


 そしてポアロとミュウの関係性。不本意ながらに色欲を振り撒いてしまうミュウの人類嫌いもあるため正面切って友と呼べる間柄ではないものの、全部が全部下心ではないポアロにミュウは「好きにしろ」と自由の権利を与えたらしい。とは言え、ミュウの色欲はポアロにも少なからず影響を与えていたのは事実であり、失望混じりの凛冽な目をしたミュウにぞんざいに扱われていたらしいが。


 何よりルカが耳を疑ったのは、ミュウが嗜欲の血眷(アマルティア)だと言う事をポアロが知っていた事だ。逆もまた然りで、ポアロが幻獣と戦う術を持ち合わせている事をミュウも知っており、しかしルカとサキノのように交戦へと発展しなかったのは、やはりポアロが進取に秘境(ゼロ)へ関与しない事が大きいらしい。

 何だか強敵との死闘という理不尽を一方的に押し付けられたかのように納得のいかないルカだったが、ミュウが戦闘に乗り出した当時の言葉――幻獣を迅速に討伐する輩を野放しには出来ない――を思い返せば、対処と放置の判断も当然のように思えた。


 話せば話すほどにポアロには特に目立って怪しい箇所は見当たらない。ポアロの根底が飄逸であり、処世術を心得ているが故に、外見が相乗して怪しさが際立てているものだけのように見受けられた。

 多くの人間を観察してきたルカにとって、ポアロ・マートンという男は警戒に値しない人物だと本能が認可を下ろす。



「僕もルカりんに聞きたいことあるんやけどええかな?」



 西進する程にすれ違う亜人族の数が減少していく街路でポアロが会話を切り出す。ルカの相槌を確認したポアロは、街灯が照らす中、星々を覆い隠す真っ暗な曇天を歩きながら仰ぐ。



「ルカりんはさ、リアちゃんの事どう思ってるんや?」

「ラヴィを? この間も言っただろ、大事な親友だって。それ以下でも以上でも無い」

「関係性についての話やない。リアちゃん――ラヴィリア・ミィルという人物を、や」



 空から回帰した青宝石(ブルートパーズ)のような瞳を見つめ返す。返答を待つ双眸は、天候とは対極的なまでに曇りが無い。真剣そのものの質疑はカフェで聞いたマートンの告白紛いのようなもの――ラヴィへ抱く恋心故なのかルカにはわからなかった。



「どうって言われてもな……」

「色々あるやろ! スーパーロリ巨乳とか天使の微笑み(エンジェルスマイラー)とか! あの子のあどけなさはミウらんなんて比じゃないやん!」

「お前そんな風に思ってたのかよ。一応ミュウは色欲の悪魔に見初められた色欲の王だろ? ミュウに聞かれたら絞め殺されるぞ」

「ちゃうねん。お付き合いして人生を豊かにしてくれるのがリアちゃん。見ているだけで満足出来るのがミウらんや。二人は妹系と姉系の別タイプやねんから好みは別れる筈やで! そもそもなぁ……」



 切に返答を求めていたポアロが軽口を叩く。何故ミュウを引き合いに出したんだ、とルカが一蹴するが、ポアロは止まらなかった。

 まずポアロ・マートンという男には遠慮がない。思ったことをずけずけと口にする根性は見上げたものだが、包み隠さない様は外見同様に損をしていると感じる面がある。そのおおっぴろげな気質が心の対人距離(パーソナルスペース)にするりと侵入してきているのも否めないような気もして、果たしてこの人物に隠し事など出来るのだろうか、と警戒心を解かれてしまう。


 そしてポアロは自分を作らない。人とは本来自分を良く見せようと嘘を繕う生き物だが、ポアロにはそれが見当たらないのだ。外見然り、談話の脱線然り。生きたいように生きる、気が向いたから秘境(せかい)のお手伝いをする。

 掴みどころがないのは、まるで掴みたくても掴めない水のように自由だからなのだろう。

 ルカは今もなお熱弁を繰り広げるポアロを横に、脳内でにこやかに惨殺を執行するミュウの存在を打ち払った。



「……っと僕が語ってしまってどうすんねん。で、ルカりんはリアちゃんの事をどう思ってるんか、って話なんやけど」



 矛先が返ってきた。

 二度目となる質問にいつまでも逃れる事は出来ないと悟ったルカは、正面の石畳の夜道を見据えながら口を開く。



「容姿端麗で無邪気。それでいて虚栄心なく自分を着飾らない禀質。多くの人に受け入れられるのも納得の女の子だ。悩んでいる時には気づけば近くにいて、自然と懊悩を溶かす力も持ってる。これまでも何人もの人が救われてきたんだなって思うし凄い女の子だよ。俺なんかに連れ添ってくれるなんて勿体ない人物とさえ思う」



 共に過ごした約二年の期間で得たラヴィの品格を素直に告げる。

 そんなルカの返答にポアロは瞳を細めた。



「俺なんかに、なぁ。自分が特別視されとる事に気付いてんか?」

「……それに気づかないほど鈍感じゃないつもりなんだが」

「……気付いとんならええわ。まっ、恋の尋問はこれくらいにしといたる。最終地点か知らんけどでっかい門あるで」



 都市最西端への到着によってポアロの恋愛談話は幕を下ろす。

 闇に溶け込む黒の巨塔が幾つかの照明を灯し聳え立つ、その敷地外の足元。決して大きいとは言えないが、綺麗に修繕された店舗が内部から明かりを漏らしていた。

 ニウスさんが言っていたのはこの店舗か、と歩みを寄せると『タルタロス』と書かれた看板が上部に掲げられており、中からは仄かに森林のような香りが漂ってくる。薬草の匂いと言うべきか、廃工業地帯で身を潜めていたマシュロ達の住処に似たような香りに、ルカは目的地であることを悟った。


 両開きの扉に手をかけて室内に入ると、明る過ぎない照明を下ろした店内で鈴の音がなる。木造の建物で区切られた空間では心休まる香りが鼻をくすぐり、小休止出来るスペースのような場所が備えられていた。

 奥にはカウンター、その背後には商品棚にサンプルのように置かれた少数の小瓶達。子供達が運営するであろう薬舗は設計自体が通常よりやや低いものとなっているようだった。



「お客様ですよゼノンさん、クゥラさん」



 鈴の音に反応を示したのか、カウンター奥の部屋からひょっこりと顔を覗かせた女小熊猫(シーレスパンディア)の声に子供達が店内へと踏み込んでくる。



「いらっしゃ――ルカ兄ちゃんじゃねぇか!! 待ってたぞー!!」

「……ルカお兄ちゃんっ! いらっしゃいっ」



 カウンターの横を嬉々としてすり抜け、駆け寄ってくる子供達の姿にルカは淡く微笑む。



「久しぶりだな。禁足地以来か? 元気にしてたか?」



 金色の耳と尾をピコピコと振るう子供達の頭を撫でる。以前のように隠していても滲み出る人族への嫌悪感は見られずゼノンも微笑みを返し、クゥラは心地がよさそうに満面の笑みを浮かべて一時の妙味を噛み締めていた。



「その後に一回……いや。言ってもしょうがないか。それよりルカ兄ちゃん、来て早々なんだが礼をさせてくれ! 禁足地の事もそうだし、姉ちゃんを救ってくれた礼がしたい!」

「……ルカお兄ちゃんが来てくれるのをずっと待ってた」



 夜光修練場でラウニーと死闘を繰り広げた後、気絶したルカは二人が現場にいた事を知らない。真相を知るゼノンの前句にルカは首を傾げたが、来店を随喜して迎え入れる態勢にポアロを一瞥。



「長い事歩いてきたから喉渇いてしもたなぁ」



 わざとらしく迂遠に承諾の旨を示す声を上げ、ルカは二人へと向き直った。



「ん、じゃあ厚意に甘えさせてもらうかな」



 提案を呑んだルカの優しい声に、喜色満面の笑みを湛えた二人は速やかに準備に取り掛かるのだった。







 広くない机上で晩餐会が始まった。元より晩餐の準備を進めていたらしく、クゥラは慣れない手つきながらも女小熊猫(シーレスパンディア)のチコに教えを請いながら追加料理の作成を進めていく。魔力を駆使して調理する様は下界では見られない光景で、ポアロは見慣れぬ器材から生活様式全てに興味を示していた。


 店内で意図せずルカと二人となったゼノンは謝辞を正式に告げ、積もりに積もった話を談ずる。無茶をしてまで禁足地へ赴いた理由やコラリエッタとの繋がり、姉の現状や今後の己達の動きと本当に色々な事を話した。

 特にルカの興味を引いたのは彼等の現状だ。ラウニー撃破の後、ゼノンとクゥラを引き連れたキャメルは一つ取引を提示したのだそうだ。逃げ回る必要の無くなったゼノン達の住居の確保、薬舗の設立の全面協力を買って出る代わりに円月花(パンセレーノン)による新薬の公表を提案したらしい。というのも騎士団が凋落に向かう事を嫌厭し、マシュロと関係の深い彼等を何とか繋ぎ止める事が出来ないかというキャメルの危機管理によるものだった。


 目論見を含めた全てを明かされたゼノン達は数瞬考えたが、新居の当ても何もかもがゼロからの開始になるよりか、姉と近くに居られることを優先したかった。何より、現在チコが『タルタロス』にいるように護衛を毎日つけてくれるのだと言う。それは子供達への暗殺依頼を要請した元凶が未だ健在だからだ。

 キャメルはラウニーが騎士団を想うあまり暗殺依頼を独断的に受諾したことを事件前に聞かされていたのだ。依頼人は秘匿の一貫で聞き出すことは叶わなかったが、目標の子供達がノルベール家の子息である事、そして家出をしている事を事前に聞き及んだキャメルは依頼の内容を暗殺から保護へとすり替え、団員達へと示達した。


 結果ラウニーの策略に嵌り九死に一生を得る事態となったものの、全ての経緯を知っているキャメルは子供達の命が狙われる危険が消滅したものと考えてはいない。故に護衛。子供達を護り抜く、または引き連れて逃走出来るだけの実力者は騎士団に多数いる。

 ラウニーの動向から暗殺に心当たりがあったゼノンは、円月花(パンセレーノン)の実在を公表するだけで多大な利を与えられることを認め、条件を呑んだ。とは言え流石に利と負の調和がなさ過ぎる事に【夜光騎士団】が回復道具を購入する際は値引きする旨を伝えたが、命の恩人である事にキャメルは断固拒否していたそうだ。

 何度か店に購入に来た【夜光騎士団】の団員達へは密かに値引きしていたらしいが、目聡く感づいたキャメルにお叱りを受けたらしい。



「で、今は円月花(パンセレーノン)の栽培の為に色々と調べてるんだが、薬学師達からの信書が凄ぇんだ……共同開発の勧誘だったり、権利の話だったり……開発段階に俺達はもう居ないってのにさ」

「大変なんだな薬師も……お客さんは来てくれてるのか?」

「ボチボチな。盛況って訳ではねぇけど薬の使用感の噂を聞きつけて来た戦士達は買いに来てくれてるよ。言っちまえば、使わずに済むなら越したことの無い商品を売ってる商売だからな、俺等薬師は」



 ゼノンの言葉はもっともだ。下界のように風邪や病気を治癒させる薬もあるのだろうが、魔界では基本的には戦闘による負傷が治療の大半を占めている。薬師の存在が不要になればなるほどに世の中は平和になっていると言ってもいいだろう。

 なければならない商売であることも事実だけどな、という言葉を嚥下したルカの隣に、奥から戻ってきたポアロが腰を下ろす。



「ルカりん慕われてんのやなぁ。厨房の女の子組も称賛しよったで」



 机上に並べられたサンドイッチを摘まみ喉へと押し流すポアロ。遅れて全ての料理を作り終えた女性陣二人がパタパタと寄ってきて全ての者が食卓に着いた。



「……ルカお兄ちゃんは凄い」

「私も本拠でルカさんと副団長との戦いを見ていましたが、まさか勝つとは思いませんでした……えっと、それと工業地帯ではいきなり襲いかかってしまってすみませんでした……」



 申し訳なさそうに謝罪を告げるチコだったが、クレアと共闘していた女小熊猫(シーレスパンディア)である事は二度目の邂逅であるルカには認識の外である。

 大人数によって攻め込まれた猛威を回想として思い返すルカは、その中の一人だったのだろうとチコの謝罪を穏当に合わせておいた。


 食事が進むにつれ、場の雰囲気は次第に明るさを増していった。初対面の者達の存在も気懸りではあったが、ポアロの人当たりの良さが魔界でも生き、次第に諧謔の言葉が飛んだ。

 そんな穏やかな室内へと舞い込んで来たのは、重苦しい足音。歩幅が小さく、軍靴のようにしっかりとした足音。カランカランと、どんよりと沈んだ面持ちを引き連れた鈴が鳴る。

 空色(スカイブルー)の波髪、後頭部にはハーフアップ、黄金の瞳を曇天よりも曇らせた小さな少女が店内へと進入する。



「ゼノンん……クゥラぁ……ルカさん(わたくし)の事嫌いなんでしょうか……」



 フリル付きの黒い日傘を手に持って、軍服を身に纏い現れた少女はマシュロ・エメラだ。任務終わりなのか外套は薄汚れており、軍服のような服には所々に赤い染みが付着している。恐らくは返り血であるため心配には及ばないが、悄然と落ち込んだ姿は見るに堪えない。

 当事者のルカとポアロはキャメルより伺っていた為理由は既知。同派閥のチコ、そして毎日愚痴を零されるゼノンとクゥラは「またか……」と。

 しかし。



「嫌いな訳ないだろ? おかえり、マシュロ」



 会いにこない、イコール、嫌いだと倒錯する闇マシュロに、その相関性が結びつかないルカは振り向きながら否定を呈す。

 そんなルカに世で一番再会を求めていた少女は店内の中ほどまで歩を進め、がばっ! と顔を上げた。



「ピィッッッ!? る、ルカさん!? どうしてここ――――っにぁがっ」



 尾を立ち上らせて駆け寄ろうとした少女が飛んだ。

 この光景には見覚えがある。毎回恒例のようなものだ。わざとやっているのではないかと勘繰ってしまうほどに見事な転げっぷりに、ルカは三度目は喰らわんとばかりに傘の奇襲を止めにかかる。

 しかし傘に意識を飛ばしたルカは、緩慢になる世界の中でマシュロが転倒する光景を予見。二択となる選択肢に、やれやれと辟易しながらルカはマシュロの転倒を阻止する選択肢に動いた。

 ややあってバンッ! と。椅子から離脱したルカは低姿勢でマシュロの両肩を受け止め、傘は隣の椅子に腰を下ろした少年の頭部へ。



「ルカ、さん……ありがとうございます……」

「任務終わりか? お疲れ様。けどもう少し気をつけろよ」

「……ええんやで。儚い犠牲の上に幸福は成り立つもんや」



 まるで恋に落ちたかのように顔を赤らめるマシュロ。

 二度あることは三度あるを阻止して労働を労うルカ。

 自己犠牲の上で少女の幸福を最大限祝福するポアロ。

 腹を抱えて哄笑するゼノンと笑いを堪える女性二人。

 夢から帰ってきたマシュロが豪快な謝罪をしながら夜は更けていった。




± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ± ±




 空腹の鐘が鳴り響いたマシュロを加えて晩餐会は終了した。

 食器類を片し終え、各々が独自の時間へと移る。マシュロはルカ不足を補うように和気藹々と歓談に興じ、ゼノンとクゥラが商品である薬の調合を進め、ポアロがチコから魔界の状勢を聞いたり戦闘術を習っていたりいた。

 そんな自由空間とはいえ時刻も二十二時を回る。日中は店舗の方に身を置く子供達だが、入浴や就寝は安全も兼ねて現在【夜光騎士団】で世話になっているため、いつまでも時間が許すと言う事はない。

 普段よりも長時間『タルタロス』にいる事を忘れている二人へ、チコが帰還の声を上げようとした。



「ゼノンさん、クゥラさん、時間も時間ですしそろそろ――」



 その時。

 マシュロ、ゼノン、クゥラ、チコの耳が一斉に震え、四人の視線が扉の外へと向く。



「どないしたんや揃いも揃って」

「悲鳴です!」



 理解の埒外のポアロの疑義に反応したのはマシュロだった。立てかけてあった傘を掻っ攫うように拾い扉の外へ、チコがレイピアの柄に手を添えながら後を追う。残った者達も続けて店内から飛び出した。

 獣人を筆頭にして全員が外へと出て西方に視線が会する。夜闇の向こう、都市門を潜り駆けてきたのは小太りの男性。まるで命からがら逃げてきたかのように息を切らしていた。



「どうされましたか!?」

「た、っ助けてくれえ!! 都市の外でっ、魔物の大群っ! 隊商(キャラバン)が襲われてっ!」



 チコが事情の説明を求めるも、酸素を求めた途切れ途切れの説明は全貌の把握には至らないが、誰もが大方の事情を汲み取ることに成功した。よく見れば商人の身体も切創や火傷が創られており、顔は恐怖に青ざめている。



「アポロ行くぞ!」



 安全圏内である都市の結界内に踏み入ったのに助けを求める姿勢。

 それは即ち、目の前にいる商人の他にまだ生き残りがいる可能性だ。生き残り人数、護衛を受けた騎士団員、魔物の種類や数。聞きたいことは山ほどあるが、詳細を聞いている余裕はない。

 場所は商人の血痕や騒音で捜索可能な筈だと、十分な説明を受けずとも声を上げたのはルカだった。



「僕!? 魔物と戦闘したこと無いし、騎士団隣にあるんやさけ増援を――」

「一刻を争う事態なんだ、俺達が行った方が早い!」

(わたくし)も参ります! チコさんは二人の護衛を!」

「あっ、ちょ!? ルカさん!? マシュロ!?」



 ポアロの反論をねじ伏せ、ルカは翠眼で都市門外へと飛び出して行く。チコまでもが同行してしまうと子供達の守護者がいなくなってしまうと判断したマシュロは適切な指示を下してルカの追跡を始めた。

 賢明な判断であるが故に既に動き出してしまったルカとマシュロに制止の声は届かず、チコは懸念が残りながらも子供達の護衛に徹しながら商人を保護する。

 そんな緊急事態にポアロは頭を掻きながらやおらと脚を動かし始め、先行した二人の後を追った。



「なるほどな……何となく理解出来てきたわ」



 ポアロの独白が魔界の闇に消えていった。


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