表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『平凡な俺が異世界で最強の二人と国を造る』 ~武力も知略もないけれど、出会いだけには恵まれているようです~  作者: ダイヤマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/33

第12話 メイジンの変な三人組


 何でもカンポルを始めてから、しばらく経った。


 最初は、老婆の首飾り探し。


 それから掃除、農作業、荷物運び、家畜探し、店番、柵の修理。


 本当に何でもやった。


 その結果――。


「おーい、カンポル!」


 朝。


 市場を歩いていたタローが振り返る。


「はい!」


「今日、空いてるか?」


 魚屋の男が店先から手を振っていた。


「何の仕事?」


「裏の倉庫を片付けたいんだよ」


「アフラ!」


「今日は無理だ」


「即答!?」


「午前に二件、午後に一件入っている」


「じゃあ明日は?」


「明日の午後なら空いている」


 タローが魚屋へ向き直る。


「明日の午後なら!」


「じゃあ頼む!」


「ありがとうございます!」


 話が終わる。


 数歩進む。


「タロー!」


「はい!」


 今度は八百屋の女性だった。


「この前はありがとうね!」


「いえいえ!」


「またお願いするよ!」


「いつでも!」


 さらに進む。


「ソニル!」


「なんだ?」


「ちょっとこれ持ってみてくれ!」


 商人が大きな木箱を指差している。


「どこまでだ?」


「あっちの荷車まで」


「分かった」


 ソニルが木箱を持ち上げる。


「ついでにこれも頼めるか?」


「ああ」


「これも」


「ああ」


「これも……」


「おい」


 タローが止める。


「普通に仕事増やすな!」


「少しくらいいいだろ」


「ソニルが何でも持つと思ってるやろ!」


「持てるぞ」


「お前も答えるな!」


 商人が笑う。


「悪い悪い!」


 その横では。


「アフラ!」


 別の商人が呼ぶ。


「この前教えてもらった倉庫の並べ方、よかったぞ!」


「そうか」


「荷物出すのが楽になった!」


「ならよかった」


「今度、帳簿も見てくれないか?」


「帳簿?」


「ああ。どうも計算が合わなくてな」


 アフラが少し考える。


「時間がある時なら構わない」


「助かる!」


 タローがその光景を見る。


「…………」


「なんだ?」


「いや」


 少し前まで。


 三人のことなど誰も知らなかった。


 それが今では、市場を歩くだけで次々と声をかけられる。


「俺ら、有名になってへん?」


「有名というほどではない」


 アフラが答える。


「でも名前は知られてるやろ?」


「少なくとも、この辺りではな」


「すごいやん!」


「仕事を続けていれば当然だ」


「もっと喜ぼうや」


「浮かれるのは早い」


「ほんま現実的やなぁ」


 ソニルが木箱を荷車へ置いて戻ってくる。


「終わった」


「お疲れ」


「腹が減った」


「まだ朝や!」


「働いた」


「木箱三つ運んだだけや!」


「四つだ」


「どっちでもええわ!」


 市場に笑い声が広がった。


 そんな三人の姿は。


 いつの間にか、メイジンの日常の一部になり始めていた。



     ◇



 しかし。


 全員から好かれているわけではない。


「またあいつらか」


 市場の端。


 三人を見ながら、二人の男が話していた。


「最近調子乗ってるよな」


「カンポルだっけ?」


「ああ」


「何でも屋とか言って、金にならねぇ仕事までやってるらしいぞ」


「馬鹿だな」


「特にあのタローって奴」


「何の職業なんだ?」


「聞いたことあるぞ」


「何?」


「《生物》」


「…………」


「…………」


 二人が顔を見合わせる。


「生物?」


「ああ」


「それ職業なのか?」


「知らねぇよ」


「戦士でも商人でもない?」


「生物」


「なんだそれ!」


 二人が笑う。


 その声はタローたちにも聞こえていた。


「…………」


 タローの足が止まる。


「聞こえた?」


「ああ」


 ソニルが答える。


「聞こえたな」


 アフラも言う。


「腹立つなぁ」


「殴るか?」


「やめろ!」


 タローが即座にソニルの腕を掴む。


「なんでお前はすぐ武力で解決しようとすんねん!」


「腹が立つのだろう?」


「立つけど!」


「なら――」


「お前が殴ったら洒落にならん!」


「そうか」


「そうや!」


 アフラは男たちを一度見ただけで、そのまま歩き始めた。


「放っておけ」


「でもなぁ」


「間違ったことを言われているわけではない」


「アフラまで!?」


「お前の職業は《生物》なんだろう?」


「そうやけど!」


「なら事実だ」


「言い方!」


 アフラが少し笑う。


「それに」


「ん?」


「お前の職業が何であろうと、依頼人には関係ない」


 タローがアフラを見る。


「依頼を解決できるか。それだけだ」


「…………」


「少なくとも、今まで依頼人から文句は出ていない」


「まあな」


「なら気にする必要はない」


 ソニルも頷く。


「俺も職業は気にしない」


「お前は戦士やろ」


「ああ」


「しかもレベル一」


「ああ」


「なのに岩割れるし」


「ああ」


「説得力あるな……」


 タローは少し笑った。


「まあええか」


「そういうことだ」


 三人は再び歩き始める。



     ◇



 その日の仕事は、少し変わっていた。


「喧嘩?」


「ああ」


 依頼人は小さな食堂の主人だった。


 店の裏。


 二人の男が睨み合っている。


「こいつが俺の場所に荷物置いたんだ!」


「先に置いてたのはこっちだ!」


「嘘つけ!」


「なんだと!」


 タローが主人を見る。


「これ、俺らの仕事?」


「最近何でも解決してくれるって聞いたからな」


「何でもって広まりすぎてへん?」


 アフラが二人の男を見る。


「衛兵を呼べばいいだろう」


「そんな大事にしたくないんだよ。同じ店で働いてる奴らだから」


「なるほど」


 タローが二人の間へ入る。


「まあまあ」


「なんだお前!」


「カンポルです」


「知るか!」


「ちょっと話聞かせて」


「話すことなんかねぇ!」


「まあまあ」


「こいつが悪いんだ!」


「うんうん」


「昨日からずっと俺の荷物置き場に――」


「なるほど」


「待て! こいつの言うことだけ聞くな!」


「じゃあそっちも聞くから」


「俺はな――」


 二人の話を順番に聞く。


 最初は怒鳴っていた二人だったが。


 タローが遮らずに話を聞いているうちに、少しずつ声が小さくなっていった。


「つまり」


 タローが確認する。


「二人とも、自分の場所やと思って荷物置いてたんやな?」


「……そうだ」


「俺は前から使ってた」


「でも決まりは?」


「決まり?」


「ここからここまで誰の場所って、ちゃんと決めてた?」


「…………」


「…………」


 二人が黙る。


 タローはアフラを見る。


「どうしたらええ?」


「俺に振るのか」


「話聞くん俺。解決するんアフラ」


「役割分担が雑だな」


 アフラは荷物置き場を見る。


「なら線を引けばいい」


「線?」


「場所が曖昧だから揉める」


 地面を指差す。


「二人が使える広さを測って、中央で分ける。それでも足りないなら、使用時間を決めればいい」


「なるほど!」


 タローが二人を見る。


「どう?」


「…………」


「俺はそれでいい」


「俺も……まあ」


「決まり!」


 主人が感心する。


「こんな簡単なことでよかったのか」


「簡単だから気づかんこともあるんちゃいます?」


 タローが笑う。


 話を聞くタロー。


 解決策を考えるアフラ。


 そして。


「俺は?」


 ソニルが聞いた。


「…………」


 タローとアフラが見る。


「今日は出番なし」


「そうか」


「なんか寂しそうやな」


「少し」


「飯でも食べとけ」


「いいのか?」


「俺に聞くな! 店主に聞け!」


 主人が大笑いした。


「一食くらい出してやるよ!」


「ありがとう」


「急に元気なったな!」


 その日。


 カンポルは初めて、力仕事でも探し物でもない。


 人と人との揉め事を解決した。



     ◇



 その噂も、すぐに広がった。


「カンポルが喧嘩を収めたらしいぞ」


「衛兵でもないのに?」


「タローがずっと話聞いてたらしい」


「それだけ?」


「最後はアフラが解決したらしい」


「じゃあタローいらなくない?」


「いや、タローが話聞かなかったら収まらなかったってよ」


「へぇ」


 別の場所では。


「ソニルって奴、魔物でも倒せるのか?」


「知らん」


「戦士なんだろ?」


「レベル一らしいぞ」


「レベル一!?」


「でも、とんでもなく強いって話だ」


「意味分からんな」


 そして。


「結局あの三人、何者なんだ?」


「知らん」


「何でも屋」


「それは知ってる」


「変な奴らだよな」


「ああ」


「でも――」


 男が笑う。


「困った時は、あいつらに頼めば何とかしてくれそうだ」


 それが。


 今のカンポルに対する、メイジンの評価だった。



     ◇



 数日後。


「変な三人組?」


 タローが聞き返した。


「ああ」


 いつもの八百屋の女性が笑っている。


「最近そう呼ばれてるよ」


「誰が?」


「あんたたち」


「俺ら!?」


「そう」


 タローが二人を見る。


「知ってた?」


「知っていた」


 アフラが答える。


「俺も聞いた」


 ソニルも言う。


「なんで教えてくれへんかったん!?」


「別に問題ないだろう」


「あるやろ!」


「何が?」


「もっと格好いい呼び名あるやん!」


「例えば?」


「メイジンの三英雄とか」


「却下だ」


「早い!」


「英雄と呼ばれるようなことは何もしていない」


「じゃあ……カンポル三傑!」


「嫌だ」


「ソニルは?」


「変な三人組でいい」


「なんでやねん!」


 八百屋の女性が笑う。


「いいじゃないか。親しみがあって」


「そういうもん?」


「悪口で言ってる人ばかりじゃないよ」


「ほんま?」


「ああ」


 女性は野菜を並べながら言う。


「最初は、何してるか分からない変な若者たちだった」


「ひどいな」


「でも今は違う」


 女性が笑う。


「変な三人組だけど、困った時には頼りになる」


「…………」


「そんな意味さ」


 タローは少し黙った。


「それやったら……」


 頭を掻く。


「悪くないか」


「単純だな」


 アフラが言う。


「うるさい」


 ソニルが頷く。


「俺も悪くないと思う」


「お前最初から気にしてへんやろ」


「ああ」


「やっぱり」


 三人は笑った。


 いつの間にか。


 タローたちはこの町に居場所を作り始めていた。


 誰も知らない三人組ではない。


 町を歩けば名前を呼ばれる。


 仕事を頼まれる。


 時には馬鹿にされる。


 時には感謝される。


 何でもカンポル


 メイジンの変な三人組。


 その名は、確実に町へ根付き始めていた。


 だが――。


 平穏は。


 突然終わった。



     ◇



 その日の夕方。


 三人は市場で翌日の仕事について話していた。


「明日は?」


 タローが聞く。


「朝から農家の手伝い」


 アフラが答える。


「昼は?」


「空いている」


「久しぶりにゆっくりできるな」


「仕事を探すのではないのか?」


「たまには休もうや」


「俺は飯を食いたい」


「お前は毎日それやな」


 いつもの会話。


 いつもの市場。


 いつもの夕方。


 その時だった。


「た……」


 誰かの声。


「助け……」


 タローが振り返る。


「ん?」


 市場の入口。


 一人の男が立っていた。


 服が破れている。


 泥だらけ。


 そして――。


 血まみれだった。


「おい!」


 近くの衛兵が走る。


 男は数歩進み。


 その場に倒れた。


「大丈夫か!」


 市場が騒然となる。


「何があった!?」


「誰か治癒できる奴を呼べ!」


「僧侶を!」


 タローたちも駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


「タロー、下がれ」


 アフラが男の傷を見る。


 腕。


 背中。


 深い爪痕のような傷。


「魔物か?」


 ソニルが呟いた。


 男の目が開く。


「ま……もの……」


 衛兵が顔を近づける。


「どこだ!?」


「東の……森……」


「種類は?」


「…………」


「何に襲われた!?」


 男の身体が震えた。


「分から……ない……」


「分からない?」


「あんなの……」


 男の顔から血の気が引いていく。


「あんな魔物……」


 市場が静まり返る。


「見たことが……ない……」


 アフラの目が細くなる。


「…………」


 ソニルは東の方角を見る。


 そして。


 タローはまだ知らなかった。


 これまでカンポルが解決してきた。


 探し物。


 掃除。


 農作業。


 荷物運び。


 住民同士の揉め事。


 そんな小さな依頼とは。


 まったく違うものが――。


 メイジンへ近づいていることを。


 何でもカンポル


 その名が町の外にまで広がることになる最初の事件が。


 今。


 始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ