融けた心
初代二人と少女で俺の小屋はきつくなってしまった。
少女は鎖から解放された安心感からぐっすりと眠っている。
昼間のてんやわんやな騒動でいつもより疲れてしまった。
少し早いが明日に回して今日はもう寝てしまおうか。
そこら辺に落ちていた布切れを身体に被せ、心地よい眠りについた。
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誰かに身体を揺さぶれる。
目をゆっくりと開けると、怯えた顔の少女が焦ったように俺を揺らしてきた。
なんだなんだと身体を起こす。
「どうした?」
まだ言葉を発しずらいのか指をさす。
その方向には椅子の上に座った勇者となぜか床に座っている魔王がいた。
二人の格好は当時のままで、着ている物に血やら汚れやらが付着していた。
「おう、ようやく目ぇ覚ましたか?」
「よく寝たわいと、身体を起こしたらワシらの方見て知らん女子が震えあがってるものだから、どうしようか困っていたんじゃ。」
「マガーラさん...?はなんで床に座ってるんですかね?」
「ワシの身体はちとデカいもんでな。
良くしてもらった恩人の家具を壊してはならないと思ってな。
あとワシのことは、好きに呼んでよいぞ。
マガーラでも好きな呼び名でも構わん。」
「俺もネモでもマッさんのように好きに呼んでくれ。」
「マッさん......?」
「あぁ、魔王マガーラことマッさんだ。」
「ワシはこやつのことをネーモと呼んでおる。」
凄まじい戦いを繰り広げたとされる勇者と魔王は仲良くなっていた。
しかもお互いのことをあだ名で呼び合う仲。
当時の両陣営が見たら絶句するだろう。
と、そんなことを考えながら視界の隅で縮みこんでいる少女のことを思い出した。
「じゃぁ俺もマッさんとネーモと呼ぶことにする。
名前で思い出したが俺の自己紹介がまだだったな。
俺はファイ、呪いに侵された人間だ。
このネヴィーの森こと禁地の...管理人?をしている、よろしく。」
「ではワシも改めて、エルニア大陸を半分手中に収めた魔王、マガーラだ。
勇者ネモとその仲間に挑まれ、戦いの中眩い光りに目をつぶり、気づいたらこの有様になっていた。」
「なんだと?
マッさんもあの光を見た後ここに来たのか?」
ネーモが驚いた様子でマッさんの方を見る。
その様子に若干引いてるマッさん。
「と、失敬。
俺はネモ。
魔法と剣を扱える二刀流として勇者に選ばれた元一般市民だ。
仲間と共に魔王を滅ぼす討ち滅ぼすべく魔王城へ行き、死闘を繰り広げた。
最終的に魔王と一騎打ちになった時どこからか現れた光に目眩ましされ気づいたらここってわけだ。」
「で、この怯えて震えあがってる少女は俺が昨日森の外の街に忍んで行ってた時、偶然見かけた子だ。
何重にも鎖を巻き付けられ、何人もの騎士に囲まれこの森へと連行されていた。
森の入り口付近で生まれたばかりの魔王と鉢合わせあとはそっちが知ってるんじゃないか?」
そう言うと、マッさんとネーモはどこか納得するように頷いた。
「確かに昨日泉から一人の魔王が出現した。
現れた瞬間切羽詰まった様子でワシらの元から逃げよってな、ワシを崇める魔王に頼んだのだ。
そしたら奴め、嫌な気配を感じたとか言っていきなり魔法を放ちやがったんじゃ。
恐らくその騎士の気配を感じ取り行動に移したという事じゃろうな。」
「俺が見たとき、その魔王は確かに俺と同じく森から抜け出せていた。
しかし、ここにいる俺と少女以外はこの森から出られなかった。
この違いを解明することが今後の目標ということだな。」
三人で頷きながら話をまとめていると、自ら少女の方から歩み寄ってきた。
「...ぁ、助けてくださりり、ああありががっとぅございま...す......。」
喋った。
透き通る様な声、緊張で震わす喉、寒色の瞳、少女から溢れ出す情報に俺達は思わず同じことを言った。
「「「かわいい...。」」」
「っ/////」
お互いに照れまくってどこか気まずい空気になってしまったので、一旦気を取り直すべく飲み物を探しに行く。
確かこのあたりに薬草があったはずだ。
棚から乾燥した何種類かの薬草と少量の糖、水を持って戻る。
「その、なんだ。
皆起きたてで喉も乾いてるだろう?
お茶でも飲まないか?」
「い、良い提案だ!」
「そ、そうだな!」
「ぃ、いただき...ます。」
水に向かって手を差し出し、詠唱を始める。
「適温になれ。」
沸々と湧き上がる一歩手前の温度にする。
始めて魔法を見るのか少女は興味津々にこちらを覗いてくる。
人数分のコップに液体と薬草と糖を淹れ、かき混ぜる。
「起きたてには効く最高の一杯だ。」
「驚いたよ、ファイは魔法が使えるんだね。
それに一節でしかもあんな適当な詠唱でここまでコントロールできるとは。」
「ワシと同等並みの魔法操作じゃのぉ。」
「す、すごい...。」
しばらくの間一人で生活していた小屋に、今は四人でお茶を飲みあう。
長年凍り付いていた心が融け始めるような温かみを感じ、少し口角が上がった。
「ぬ?おぬしも笑うのではないか。」
「人間、笑わぬと死んでしまうものだ。
適宜笑うと良い、勇者からのありがたい言葉だぞ。」
「わ、私も。」
と、少女も笑うと、突然涙が溢れた。
「え、え?え?な、なんでっ。」
必死に隠そうと涙を拭き取るが、涙はより多く溢れてくる。
「何があったかは知らぬが、罪人だとか重罪を犯したとか聞いたが、そのようなことはあり得ないと思うがな。」
「よかったら、勇者の俺に話してくれないか?」
「ここにいる者らは皆女子の味方じゃ、安心して話すがよい。」
コップに入ってるお茶を一口飲み込むと、少女は泣きながら話してくれた。
と、三者から褒められてしまった。
この地で生きるためこうなれば快適に暮らせる、あぁすれば良いのではないかを追求した結果取得できた魔法だ。




