六話 魔道具をいろいろ作っちゃった
というわけで、父さんのガラクタ置き場からリングを持ってきた。さてさてこれで収納魔導具を作れるぞ。
部屋に戻ってすぐに椅子に座り、本を右側に置き作り始める。脳内に付与の術式と収納の術式を同時に思い浮かべる。そして、付与の術式に魔力を流す。
しっかりと集中してやらないと、品質が悪いものになっちゃうのだ。どうせならできる限りいい状態の魔道具にしたい。
そんなことを考えていると、リングが青白く光りだした。よし、上手く言っているようだ。しばらく続けていると、光が収まった。さて、上手く言ったかな? そう考えながら、さっきのリングを腕につけ、収納ができるか確かめる。
魔道具の発動方法は簡単だ。それに魔力を流し、その効果を頭に思い浮かべるだけだ。僕はリングに魔力を流しながら収納をイメージする。すると、手に持っていた木刀がフッと消える。よし、第一段階は完了だ。
さて、第二段階だ。今度は木刀を取り出すことをイメージしながら魔力を流す。すると、手にさっきの木刀が現れた。よし、成功だ。一人で二つの術式を組むことができれば、成功確率は格段に上昇する。
ん? なんだコレ。直感的にだが僕の『付与』で道具への付与ができる気がする。まさか、できてしまうのか? そんな期待が僕の胸の中で膨らむ。これはやってみるしか無いな。
そう考えた僕は、他にも役に立ちそうな付与できる術式を探す。その中で、装備への付与ができる術式のページを見つける。
どれどれ、『耐久強化』『耐刃強化』『属性攻撃軽減』『切れ味上昇』など、役に立ちそうな効果を発揮する術式がずらりと並べられている。とりあえず、今僕が着ている服に付与してみるか。この服、僕のお気に入りなんだよね。
早速付与に取り掛かる。服を脱ぎ、机の上に乗せる。
「『付与』耐久強化・耐刃強化・属性攻撃軽減・再生能力付与・耐熱・耐寒!」
想定通りに青白く光り、五個の効果を付与することに成功する。本当にできてしまうとはね。試してみるが、ちゃんと効果が現れていた。これらのように、強化系統などは常に発動する。
普通、同じ道具に術式を重ね掛けするには、途方もない時間と集中力が必要となる。だから、ほとんどの人は重ね掛けをすることはない。だけど、僕には直感的に、『付与』を使えば、一瞬で重ね掛けすることができると分かったのだ。これは普通にとんでも無いことだ。
このことは秘密にしておかないといけないな。こんなのバレたら、どうなるかさっぱりわからない。バレないようにこっそりとやるか。
僕はついでに、自分の真剣にも付与をすることにする。剣を机に置き、集中力を高める。
「『付与』耐久強化・切れ味上昇!」
すると、剣が青白く光り、効果を付与することに成功する。うん。やっぱり『付与』の性能は半端ない。属性を付与するだけじゃないとは。というか、属性は重ね掛けできないのになんで、魔道具の効果は重ね掛けできるんだ? 不思議だな。まぁ、今のところは困らないし別にいいか。
そんな感じで僕の初めての魔道具づくりは、大成功で終わったのだった。
◆
あれから数日が経った。最近は今までに増して魔物が増えてきている。そのため、町が襲われる前に、父さんや村の男達、冒険者で討伐隊をつくり、討伐に赴いている。そのためか、町への被害は今のところ出ていない。どうしても僕は魔王の復活が近いのかもしれないと思ってしまう。ちなみに、僕も討伐隊に参加しようとしたが、父さんに止められてしまった。だから、僕にできることは父さん達討伐隊が無事で帰ってこられるように祈るくらいだ。そんなある日、それは起こった。
『魔物襲来!魔物襲来!今町にいる冒険者は直ちにギルドへ集まってください。繰り返します。──』
けたたましいサイレンの音とともにそんな放送が鳴り響く。父さん達の目をくぐり抜けて来たのだろうか。クソ。ただでさえ父さん達は討伐で出払っているときに……。
「ユート!早くギルドに向かって、手伝いをするわよ」
母さんが言う。どうやらアイリスもいるようだ。
こういう襲撃があった時、領主である人達が真っ先に逃げるほうがいい。理由は簡単で、領主さえいれば立て直しはなんとかなるからだ。だけど、うちは少し違う。こういう襲撃が起こったときに真っ先に逃がすのは、町の女性と子供だ。その間、町の男性たちは武器をとり、避難するまでの時間を稼ぐ。これが、フォワードの町のルールである。
町の住人達は、このことを納得の上でここで生活している。このときの僕達もその例に漏れない。アイリスと母さんは回復魔術が得意なので、ギルドに行き、怪我をした人たちの手当てをするのだ。いや、ある意味母さんとアイリスは例外だけどね。三人で準備してから冒険者ギルドにむかった。
ギルドにつくとすでに怪我人が続出していた。母さんとアイリスは早速負傷者の治療にあたる。僕はほとんど母さんとアイリスの援助だ。重症者を二人の下へ運んだり状況を伝えたりする。あまりにも負傷者が多いと僕も回復魔術を使い治療にあたったりする。
この冒険者ギルドは、魔王軍の国がある場所から最も遠い町の外れにある。避難がしやすいようにだ。
早く今の状況を知りたい。あたりを見回すと、ギルドの受付嬢がいた。
「今はどういう状況ですか?」
「! ユート様。状況はよくありません。襲撃してきた魔物はゴブリンの群れでした」
どうやら、ゴブリンたちによってこの襲撃が起こったようだ。
「でも、ゴブリンだけだったらここまでの被害にはならないんじゃ?」
ゴブリンはお世辞にも強いとは言えない。大人が一人いればそれほど苦労する相手でもない。
「どうやら、ゴブリンが組織的に攻撃してくるらしいのです」
「えっ? ゴブリンは組織的に攻撃しないはずじゃ」
「事実しているそうなんです」
おかしい。普通、ゴブリンは群れを作ったりするが、仲間同士ではあまり協力しない。でも今回は、そいつらが協力している。何かしらのイレギュラーが発生していることぐらいしか想像できない。まさか……。いや、多分無いだろう。すぐにその考えを否定する。あり得ない……はずだ。
「情報、ありがとうございます」
「いいえ。今は非常事態ですから」
僕は受付嬢さんにお礼を言ってその場を去る。一体何が原因なんだ?
「大変です!魔物がすぐそこまで来ています!誰か戦える人は!」
思考の海に沈んでいると、出入り口から切羽詰まった声を上げている受付嬢さんが入ってくる。クソ、もう来たのか。周りを見回すが、誰も戦えそうな人はいない。回復が追いついていない。ここを潰されたら終わりだ。もう、僕が行くしか無い。
「僕が行きます」
僕は収納魔道具から真剣を取り出し背中につける。
「ユート。気をつけてね」
「お兄ちゃん。頑張って」
母さんとアイリスが励ましてくれる。
「うん。頑張るよ」
僕はそう返すと、扉を開けて外へと出ていった。




