四話 模擬戦と、スキルについて
次の日、僕は父さんの前に立ち、木剣を正眼に構える。父さんはいつものように木剣を肩に乗せて、こちらの動きに注目している。
昨日は結局夕方になるまでずっと剣の稽古をしていた。そのおかげか、昨日感じていた違和感はなくなっていた。アイリスは、前よりも予備動作が減っていると褒めてくれた。
どの程度父さんと戦えるか……。まぁ、ほとんど勝算は無いけどね。それでも今の自分はどこまで父さん相手に戦えるか気になるし、やらない理由は無いのだ。
「へぇ、ずいぶん顔立ちが変わったな。昨日の特訓の成果か?」
「さぁね。ま、そんな気がするけどね」
「さぁ、かかってこい」
父さんが言う。それと同時に僕は動く。おとといより速度が上がってる気がする。父さんに木剣で斬りかかる。
すると、父さんの目から余裕の色が消え去った。父さんは正眼に構え直し、僕の木剣を防ぐ。僕はすぐさま剣を振りなおす。父さんはそれを木剣で防ぐ。僕は何度も何度も剣を振る。
予想通りだが、すべて防がれてしまう。僕は一回距離を取り、再び様子を伺う。父さんの顔には驚きの表情が現れている。
「驚いたな。おとといよりも、お前の弱点だったはずの大きすぎる予備動作が減ってるとはな。誰かに教えてもらったのか?」
「うん。アイリスに教えてもらったんだ」
特に隠す必要もないため、サラリと答える。
「なるほど。アイリスか。アイツは人を見る目があるからな。それなら納得だ」
それを言い終わると同時に父さんの姿が消える。
今の僕なら次の父さんの行動を読める。僕は剣を構え、父さんの攻撃を防ぐ。このまま、喜びに浸りたいがそうはいかない。すぐに追撃が来る。
その後は、父さんの動きを見て予想される剣の軌道に自分の剣を合わせ、なんとか二撃目も防ぐ。その後、もう一撃も防ぐ。その一撃は鍔迫り合いになる。
「おとといは、二撃目を防げずに地面に倒れていたけど、ここまで耐えるとはな。正直驚いたよ」
僕は押し切られないように必死なのだが、父さんにはまだまだ余裕があるらしい。とんでもない力だな。
そんな事を考えていると、父さんの力がより強くなる。やばい、このままじゃ押し切られる。
そう思った僕は、鍔迫り合いをやめ、大きく後ろに飛ぶ。着地すると同時にもう一度構えなおす。力じゃ僕のほうが圧倒的に劣勢だ。
まぁ、このまま力でぶつかったらの話だけどね。こうなったら父さんに一撃を入れる方法は一つしか無い。それでも上手くいくかはわからないけどね。
そう考え、父さんの攻撃が来るのを待った。すると父さんが消えた。いや、今の僕にはかろうじて見えている。この構えは縦振りだな。そう思い、僕は父さんの攻撃に合わせて体を横にする。紙一重で父さんの攻撃を躱す。
躱したと同時に父さんの腹部めがけて剣を振る。完璧なカウンターだ。さすがの父さんもカウンターを仕掛けてくるとは思っていなかったのか僕の攻撃がかすった。完全に不意をついた一撃のはずだったが大きなダメージを与えるまでには至らなかったようだ。残念だ。
父さんは後ろに飛び、僕から距離をとる。
「まさかカウンターを仕掛けてくるなんてね。驚いたよ」
「それぐらいしか父さんに攻撃を当てるすべは無いからね」
まぁ、それでもかすらせることしかできなかったようだけど。それでも父さんに攻撃を当てることができたのはなかなか大きな成長だ。
「そろそろ、いい頃合いか……」
「どういう意味?」
父さんが何やら意味ありげなことを言う。だけどこれだけじゃ僕にはどういう意味なのかわからない。
「よし、これで今日の訓練は終わりにする。一時間後に俺の部屋にアイリスと一緒に来てくれ」
「うん。わかった」
父さんに自分の部屋にアイリスと一緒に来るように言われた。さっきのつぶやきと何か関係があるんだろうか。それとも何か怒られるのだろうか。ちょっと怖いな……。
■■■■
「よく来てくれたな。座ってくれ」
父さんに椅子に座るようにすすめられる。一時間後、僕とアイリスは父さんの部屋にノックしてから入った。迎えてくれた父さんの雰囲気はいつもの父さんと違い、思わず僕は息をのんでしまう。
「なんで僕達を呼んだんだ?」
僕はそれを知りたかったため、父さんに聞いた。
「今から話す話はとても大切な話だ。自分が信頼できる相手以外にはできるだけ言わないようにしてほしい」
続けて父さんは語りだす。
「まず、うちは数百年前に、勇者と言われたパーティーに所属していた一人の子孫だ」
ちょっと待てよ……。僕達は勇者の子孫だって!? 最初からとんでもない情報じゃないか。
「どうして、今まで私達に黙ってたの?」
アイリスが父さんに聞く。いくら勇者の子孫だからって隠す必要はなかったんじゃないかと思う。それとも伝えられない理由があったのだろうか。
「すまなかったな。お前たちにこの事を言っていいのか迷っていたんだ。だけど、今日ユートに一撃を入れられ覚悟が決まったんだ。さっきも言ったが、そう簡単に喋られても困るからね」
「じゃあさっきのはそういう意味だったんだ」
僕は納得する。確かに、もしも僕達がもっと小さいときに聞いていたらこのことを簡単に他の人に喋ってしまう可能性もあっただろう。だけど、僕達は成長し、そういう事をそう簡単に喋ることは無いだろうな。それに、もしこの事を言ってしまったら、この後の僕達の人生を左右するような話しだからな。そりゃぁ話すのをためらったりするだろう。
「この話にはまだ続きがある。その数百年前、魔王が現れて人々を恐怖に陥れたんだ。そこで立ち上がったのが俺達の先祖、ユウキ・フォワードだ。彼は特殊なスキルを持っていたんだ。そのスキルは『封印』だ」
「どういう力なの?」
アイリスが聞く。
「簡単に言うと弱体化した相手を確実に封印するというものだ。ユウキは仲間たちとともに魔王と戦い、やっとの思いで魔王を封印したんだ。しかし、いくらユウキが魔王を封印する力を持っていたとしても、魔王を永遠に封印することはできない。いつか魔王は封印から目覚め、再び人間たちを襲うことになる。そして、その魔王が復活する代のフォワード家には特殊なスキルが発生するそうだ」
「ちょっと待って。ということはもしかして……」
「そう、お前たちがその代ということだ」
まさか僕の『付与』やアイリスの『癒しの力』はその特殊スキルであり、僕達の代で魔王が復活するとはな。
イリアさんにこの事を聞いていたけど、いざ聞くとやっぱり気分が悪いな。
「でもいつ復活するかはわからないから、覚えていてくれ」
「わかったよ」
「うん」
僕達は頷いた。すぐには魔王が復活しないことを祈るしか無い。それに、もしその時が来ても、絶対に魔王をぶっ倒してやる。僕は覚悟を新たにした。




