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モブだった僕が転生し世界を救う  作者: 異世界好き
二章
31/32

31話 吸魔の大剣を攻略せよ

 上の階に到着して、初めて目にしたのは倒れているアイリスたちだ。一瞬怒りで我を忘れそうになったが、アイリスたちから呼吸音が聞こえると、なんとか踏みとどまって我を忘れることはなかった。

 戦闘中に我を忘れるなど、愚の骨頂だ。


「イスタスでは止められなかったか⋯⋯」


 ふとガルダーの方を見ると、どこか悲しみを孕んでいるようななんとも言えない表情だった。


 改めてやつの装備を確認してみる。赤一色に統一された鎧を着込み、その手には、何やら赤色の大剣が握られていた。


 鑑定してみると、どちらも古代の遺物(アーティファクト)だということが分かった。


 前にも言ったかもしれないが、古代の遺物(アーティファクト)とは、その名の通り古代の遺物だ。現在では作ることのできないとても高度な技術で作られているものだったり、人の手には負えないほど強大な力を持つものなどもある。

 そのため、入手方法はダンジョンなどで見つけ出すか、古代の遺跡などで発見する他ないのである。極稀に、代々受け継がれるものもあったりする。

 古代の遺物(アーティファクト)は希少性が高く、もしも発見したとなれば一括千金も夢ではない。物好きなコレクターに売れるのだ。

 もちろん、危険なものも数多くあると考えられていて、個人の所有が認められているものは、国が検閲したものに限るそうだ。


 鎧には、ただ単純に防御力が以上に高く、自動修復の力が備わっている。剣の方には、遠距離からの魔力を伴う攻撃を吸収する力がある。吸収した魔力を、一気に解き放ち、超火力の斬撃を生み出すこともできるらしい。さすが古代の遺物(アーティファクト)といったところか。


 さっき、聞こえた轟音は解き放った魔力の斬撃の余波だったのだろう。


「し、死ぬかと思った⋯⋯」

「クソ、もっと防御力あげないとな⋯⋯」

「危なかったわ⋯⋯」


 冷静にガルダーの分析をしていると、背後から声が聞こえた。みんなの回復が終わったみたいだ。『後発回復(レイトヒール)』を使っていたようだ。


「無事で良かった。まだ戦えるか?」


 ガルダーは未だ攻撃を仕掛けて来ていないが、後ろを向いた隙に攻撃される、なんてこともないとは言い切れないので、ガルダーを睨みながら後ろに声を掛ける。


「冗談。まだまだ余裕だ」

「右に同じくよ」

「まだまだ行けるよ」


 ⋯⋯聞くだけ無駄だったようだ。


「じゃあ、行くぞ!」

「「「おう!!」」」


 僕はその宣言と同時に、腰から剣を抜き放ち、ガルダーに正面から斬りかかる。


 当然の如くその攻撃は簡単に防がれる。それでも僕は何度も攻撃を仕掛ける。


「その程度か?」

「まだ様子見⋯⋯だ!」


 勢いよく剣を振り下ろす。その瞬間に『瞬間(インスタント)付与(エンチャント)』による、瞬間的な身体能力向上を行う。


「チッ」


 これは想定外だったのか、忌々しそうに舌打ちをしながら、大剣を即座にそらし、力を分散させた。そのまま僕を両断しようと大剣を大きく振る。

 想定内だったので僕は即座に『空間移動(スペースムーブ)』で即座にその場から離脱する。


 僕という標的を見失った大剣はそのままの力で地面にめり込む。ドガアア!! とけたたましい音を立てて、あたり一帯がとんでもない風圧に包まれる。その風圧はこの大剣の破壊力を物語っていた。


「そりゃあ!!」


 大剣を引き抜こうとしている隙を逃さずに、アイリスが可愛らしい雄叫びを上げながらガルダーに斬りかかる。


 ていうかそれ、魔術の武器化じゃないか⋯⋯。こんなところで使えるとは思ってなかったな。


 ガルダーは身を翻し、その光の刃を交わし、その勢いのまま大剣を引き抜いた。そしてアイリスに向かって遠心力を存分に乗せた蹴りを放った。


 アイリスはギリギリで反応してなんとか光の剣でその蹴りを受け止める。しかし勢いを殺せずにアイリスは壁に激突する。


「アイリス!!」


 僕は思わず声を荒げる。


「大丈夫⋯⋯だよ。この程度の傷⋯⋯すぐ直せるから」


 アイリスがそう言うと同時にアイリスの体が温かな緑色の光に包まれている。回復魔術の光だ。


 改めていうが、アイリスのスキルは『癒やしの力』で、その効果は回復系統の魔術の効果を何倍、いや何十倍にするというものだ。その効果は凄まじく、本来魔術では期待できないほどの回復力を持つ。それは()()にすら匹敵するレベルだ。


 アイリスは今のでかなりのダメージを受けたが、あの程度の傷は本当にすぐに直せるのだろう。それでも、アイリスが傷つくのはできるのなら見たくない。


 気がつくと、ニウスがガルダーに対して槍による連撃を行っている。ガルダーはそれを次々に素早い身のこなしで回避していく。


 僕も援護に入るべく背後に転移し、ガルダーの首めがけて剣を振るう。が、まるで「分かっていた」とでも言うように、軽々しく大剣で防がれてしまう。


 その瞬間、僕に集中したせいか、ガルダーは次のニウスの攻撃をその身で受けることとなる。


 ガキィィン!! と甲高い音を響き渡らせる。ニウスの槍はガルダーの鎧によって簡単に防がれてしまったのだ。


「ハッハッハ! この俺様に一撃を入れるなんてな。大したものだ」


 ガルダーは声を出して快活に笑う。戦闘中なのを忘れていそうな雰囲気だ。それとも、僕らのことを全く脅威と見ていないのかもしれない。


「くそ、こいつの鎧硬すぎだろ!? ガハアア!?」


 ニウスが悪態をつく。が、次の瞬間、ガルダーの回し蹴りによって、吹き飛ばされって壁に激突した。その蹴りは確実に鳩尾を捉えていた。


「ニウス!?」

「わ、悪い⋯⋯」


 ニウスがなんとか言葉を紡ぐが、今までにないほど弱々しい声だった。


「ニウス! すぐに治すね」

「頼む⋯⋯」


 なにかこの状況を打破する術はないのか?


「今度はこっちから行くぞ!」


 ガルダーの姿が掻き消える。僕は勘に従って転移してその場から離脱する。


 ドガアァァ!! とけたたましい音を立てて、さっきまで僕がいたところが以前までの状態がわからない程に抉れていた。

 もし、あの瞬間、転移を使わなかったら? ⋯⋯考えただけでもゾッとする。


「避けるか。やるなあ」


 クソ、考えてる時間なんてない。考えていたら、簡単に殺される。これが魔王軍四天王の力なのだろう。


「『付与(エンチャント)』加速!」


 僕は自身に加速を付与する。これでやつとも打ち合えるだろう。再びガルダーの姿が掻き消えた。でも、今の僕には視える。

 僕は、ガルダーの剣筋に合わせるように自身の剣を振り、ガルダーの攻撃を防ぐ。すぐに追撃が来るが、それも防ぐ。

 ときに剣で防ぎ、ときに転移し、なんとかガルダーと渡り合っていた。もちろん、途中途中のでの瞬間的な魔力吸収も忘れない。

 これを怠った瞬間僕の死は確定するのだ。


 ガルダーの大剣と僕の剣が当たる瞬間、僕は『身体能力上昇』を瞬間的に付与し、ガルダーを後方に吹き飛ばす。


 追撃に警戒するため、僕はガルダーから離れた場所に転移した。


「なるほどな。確かに貴様のような実力を持つものなら魔王様が警戒するのも頷ける」

「ハハ、お褒めの言葉として受け取っておくよ」


 ガルダーは今までのように軽い感じの表情から、真剣そのものの表情へと変化する。


「やはりお前は危険人物だ。だからこそ、貴様にはここで死んでもらう!」

「やれるもんならやってみろ!」


 再び僕らは激しい剣戟を繰り広げる。


 エリス、アイリスは、回復に徹してもらうため、戦闘には不参加だ。


 ニウスはさっきの攻撃で多大なダメージを負ってしまったので、しばらく離脱してもらう。


 不思議だ。今も少しでも油断すれば命を刈り取られる状況なのに、今の僕の頭はかなり冴えている。ガルダーの攻撃も、さっきまではギリギリで対応していたが、今は恐ろしいほど簡単に対処できている。

 ガルダーの攻撃もさっきより遅く感じる。


 そうすると、考えられる理由は自分の速度が上がったとしか考えられない。そう、()()してきたのだ。


「お前⋯⋯早くなってないか?」

「そうかもね」


 剣戟を交わしながら軽口を叩く、僕もガルダーもまだまだ余裕がありそうだ。


「そろそろこっちから行くぞ!」


 防御から反転し、一気に攻撃を仕掛け始める。もちろんだがガルダーはそれに反応し、僕の攻撃を次々に己が大剣で一撃一撃を防ぐ。

 ただし、さっきまでと違い、明らかにガルダーは劣勢になってる。


「させるか!」


 ガルダーは大剣で僕の攻撃を弾く、が予想通りだ。僕は弾かれる力を利用して上に飛ぶ。その瞬間、ガルダーの大剣に()()()


 僕は着地の瞬間を狙われないように転移してガルダーから離れる。


「さっき俺様の大剣に触れたようだが何がしたかっ──」


 ガルダーの言葉はバキイィン! と言う音によって遮られる。ガルダーの手にあった大剣が真っ二つに折れた音だ。


「貴様! 一体何をした!」


 ガルダーは手にしていた大剣が折れたことを認めると、激昂して僕に聞いてきた。


 さっき僕が使ったのは『瞬間(インスタント)付与(エンチャント)』による『武器破壊』だ。その名の通り、武器を破壊することができる。

 しかし、破壊することには様々な条件がある。例えば、相手の武器の性能を理解している、そして、その武器に直接触れる、などのハチャメチャな条件だ。

 よほどの状況じゃない限り使うことのないハイリスク・ハイリターンだ。

 


「敵に手の内を晒すと思っているのか?」

「許さん⋯⋯! 魔王様から賜った吸魔の大剣を破壊するなど! 万死に値する!!」


 激昂したガルダーがどこから取り出したかわからない謎のガントレットを手の甲にはめて襲いかかってくる。


 だけど、その攻撃は怒りに支配され、すべてが単調だ。今までほど脅威となる攻撃ではなくなった。


「『雷の轟(ミョルニル)』!!」


 僕は一瞬だけ術式破棄を付与し、即座に雷属性の超級魔術を発動させる。魔術の吸収ができなくなった今、恐れることは何もない。


「無駄だと言っている」


 ガルダーは光速の雷の雨に打たれる。残念ながら鎧に守られているせいでそこまでの大ダメージを与えることはできなかった。


「エリス! もうアイツに魔術は通る! 援護してくれ!」

「任せなさい! 『炎の矢(ファイアーアロー)』!!」


 ガルダーの特攻に近しい攻撃の突進をエリスの魔術が妨害する。


 ふとアイリスの方を見たが、ニウスの治療は完了しているようだ。アイリスは、いつでもこちらを治してくれそうな気迫を持っている。これで何倍も戦いやすくなる。


「貴様らごときの攻撃など、我が鎧の前では蚊も同然だ!」


 そう、そうなのだ。確かに厄介極まりない大剣を破壊できたが、鎧の方は未だに突破口が思い浮かばない。

 ニウスが攻撃したとき、ニウスの武器がヒヒイロカネにもかかわらず、軽々しく防がれたのだ。並大抵の攻撃が通らないのは明らかだ。


「『隕石衝突(メテオインパクト)』!!」


 僕が発生させた隕石がガルダーに次々と衝突する。圧倒的質量による攻撃ならダメージを与えられると考えたからだ。


 が、残念ながらダメージは入らなかった。質量攻撃でも無理そうだ。


「『炎の竜巻(ファイアーストーム)』」


 僕はガルダーの()()に炎の竜巻を発生させる。魔術が消えないように魔力を供給しながら。


 そう、攻撃が効かないならアイツの周囲の酸素を奪えば? と考えたわけである。


 魔術は、魔力と術式を通して世界に干渉し、事象を発生せるものだ。炎は実体がある。つまり、周りの酸素を次々と消費しているのだ。

 殆どの生物は酸素を必要としているため、酸素を断てば気絶させられるのでは? と考えた。


「貴様⋯⋯なにがしたい?」


 ありゃ? だめだ効果なさそうだ。あの鎧の力なのか、それともそもそもアイツは呼吸していないのか。しばらく様子見したがまじで意味なかった。


 ていうかアイツはなんでこっちに攻撃してこなかったんだ? 謎でしょうがない。


 じゃあ次の手だ。


 僕は『炎の竜巻(ファイアーストーム)』を消す。

 見たところ、足元は古代の遺物(アーティファクト)ではなさそうだ。見た感じ、貴金属ではあろうが、金属だ。と言うことは⋯⋯。


「『水の槍(ウォータージャベリン)』」

「遅いわ!!」


 ガルダーは簡単にその攻撃を躱す。そのまま、僕に急接近してきた。もちろん対処はできる。落ち着いて攻撃の軌道を見極めてそれらの拳撃を躱す。

 ガルダーは一度僕から離れた。その隙を逃す僕でもない。


「『水の玉(ウォーターボール)』!!」


 僕はここで初級魔術である『水の玉(ウォーターボール)』を何個も発動させる。


『三人とも、絶対に水に触れないでね!』

『『『了解!』』』


 それと同時に三人に念話で伝える。


 次々に僕は発動させた魔術がガルダーに降り注ぐ。


「その程度の魔術で何がしたい?」

「こうするんだよ。『雷の轟(ミョルニル)』!!」


 僕は、地面に散らばる()に超級魔術を発動させる。


「ガハアァァ!?」


 次の瞬間ガルダー悲鳴を上げてその場に崩れ落ちる。


「貴様、一体何をした?」



次回の更新は3日後です。

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